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4、母娘仲違い
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私は早朝、母から呼ばれました。
母親とは応接間で話をする事になりました。
外は晴れている。
初春の晴れではあるものの、まだまだアルファン邸の中は寒い。
「カトリーヌ。あなたって人は。アルフレッド様と婚約破棄だなんて。恥ずかしいわ」
母親もカトリーヌと同じオレンジバーミリオンの髪で長い髪をおだんごにしている。
「しかも、従姉妹のルイーズと仲違いしたのね。信じられないわ」
「違うんです、お母様。アルフレッドをルイーズに奪われたんです」
私は必死になって母親へ訴えかけた。
「違うわね。カトリーヌに魅力が無いから婚約破棄されたんじゃないの? それをルイーズに責任転嫁するなんてお門違いよ」
私に魅力が無いですって!?
私は怒りを通り越して呆れに転じた。
「なっ……私が背が高いから……が原因だったんですよ、お母様」
しかし、母親は首を左右に振る。
「違うわね。断る理由なんていくらでもあるわ」
私は歯を食いしばった。
確かに断る理由などナンボでもある。
でも、私とアルフレッドが婚約していたことを、ルイーズは応援してくれた。
嘘よ。
ルイーズが一方的に私からアルフレッドを奪ったのよ。
「どうしたの、カトリーヌ。あなたに魅力が無くなったから婚約破棄されたんじゃないの? 違う?」
私に魅力が無くなった?
背が高い事は初めからわかっていた話ではないか!
「ルイーズと仲違いしたとはとんでもない話。あなたはアトス家の恥じよ。私のお姉さまに恥をかかせるつもりなの?」
伯母に恥をかかせるつもりなど毛頭も無い。
「この話はアトス家には広がっているはずね。きっとアサエロ家にも話はいっているはずよ。そうよ、カトリーヌ。あなたは悪役令嬢になっているのではないかしら?」
「悪役令嬢? そんなの名誉毀損だですわ、お母様」
「でも。昔はあなた、ルイーズによく遊んでもらっていたじゃない。その恩も忘れて」
恩も何もへったくれもないわ。
私はむしろ被害者なのよ。
どうして悪役令嬢の濡衣を着させられなければならないの?
そこへ、父親が応接間に入ってきた。
「何をもめているんだい? エリザベート」
「今回の婚約破棄の件よ」
父親は上座に当たる席に腰掛けるとパイプに火をつけた。
「婚約破棄は残念だったな」
父親はブラウンヘアをマッシュルームカットにしてスカイブルーの瞳を携えている。
やはり背は高いがその分横もある。
その体格の良さに、一瞥しただけで『勝てない』と思った泥棒がたじろいで逃げたという逸話がある。
「それがね、ルイーズに責任をなすりつけているのよ。あなたも何とか言ってよ」
「うむ。アルフレッドはカトリーヌに嫌気が差し、ルイーズに乗り換えたという話だね?」
「そうなの」
「これでは確かにアトス家のメンツが立たないな」
アトス家は子爵。
それがたまたま伯母は伯爵家に嫁ぎ、母が男爵家に嫁いだだけの話。
父親は頭を抱えた。
「お父様。ルイーズは私とアルフレッドが婚約していた事を知っていました。そして『おめでとう』まで言ってくれました。けど、先だって手のひらをひっくり返したかのように人が変わっていました」
「……」
父親が何かを言おうとした時に母親が遮った。
「だからね、カトリーヌに魅力が無くなったからルイーズと一緒になる事を決めたんじゃないかしら? って思って」
「そうだなぁ。だけど、ルイーズもルイーズだ。ルイーズは遠慮というものを知らないな」
その言葉に反応するかのように母親の表情が変わった。
もしかしてお父様は私の味方なのかしら?
「でーもー。アルフレッド様がカトリーヌに見切りをつければ必然的に……」
「いや。確かに理由は諸々あるかもしれない。だけど、婚約をいとも簡単に破棄してしまうアルフレッド様にも問題はある」
母親は目の色を変えた。
目から炎が出てきそうな勢いだ。
「違うわ。アルフレッド様がカトリーヌに嫌気が差したのだから、婚約破棄になって当然なのよ。これでもしカトリーヌと結婚したら、取り返しのつかない事になっていたかもしれないのよ」
母親の口調は明らかに憤懣(ふんまん)に満ちていた。
「お母様。何度も言いますがルイーズが私から……」
と言ったら母親が遮った。
「ルイーズはあなたが小さい時に沢山面倒を見てくれた。そのルイーズがどうしてあなたから婚約者を奪うの」
それとこれとは別だわ!
仮に私への好意で面倒を見てくれたとしても、年も経れば幼少の思い出など過去の引き出しに仕舞われるに決まっている。
「今のルイーズは違います。ルイーズは言いました。『男爵令嬢は大人しく平民と結婚しなさい』と」
母親は首を横に振る。
「ルイーズがそんな事言うわけないわ。ルイーズを陥れようとしているのね?」
「まぁまぁ」
と父親が宥めてきた。
「ルイーズがそのような発言をしたのも問題だな」
父親は頭を抱えている。
「ルイーズを……悪く言いたくないんですが」
私はフォローを入れた。
「そうやってルイーズへの悪口雑言並べても私は信じないからね。もうあんたたちと話していても埒が明かないわ。もういい。出てく!」
と言って母親は応接間を出て行った。
「お父様は信じてくれるんですね?」
「勿論さ、カトリーヌ。母親はアトス家の確執と見て恥じらいを感じているのでしょう」
やはり、お父様は味方でした。
「母親と軋轢が生じてしまっても、私はカトリーヌの味方だ」
と言って父は手を握ってくれました。
ルイーズも母も敵に回ってしまった今、味方をしてくれるのは父だけ。
恐らく、アサエロ家に嫁いだ伯母も私の味方などしてくれないでしょう。
私には父方の親戚だけが味方だと悟りました。
母親とは応接間で話をする事になりました。
外は晴れている。
初春の晴れではあるものの、まだまだアルファン邸の中は寒い。
「カトリーヌ。あなたって人は。アルフレッド様と婚約破棄だなんて。恥ずかしいわ」
母親もカトリーヌと同じオレンジバーミリオンの髪で長い髪をおだんごにしている。
「しかも、従姉妹のルイーズと仲違いしたのね。信じられないわ」
「違うんです、お母様。アルフレッドをルイーズに奪われたんです」
私は必死になって母親へ訴えかけた。
「違うわね。カトリーヌに魅力が無いから婚約破棄されたんじゃないの? それをルイーズに責任転嫁するなんてお門違いよ」
私に魅力が無いですって!?
私は怒りを通り越して呆れに転じた。
「なっ……私が背が高いから……が原因だったんですよ、お母様」
しかし、母親は首を左右に振る。
「違うわね。断る理由なんていくらでもあるわ」
私は歯を食いしばった。
確かに断る理由などナンボでもある。
でも、私とアルフレッドが婚約していたことを、ルイーズは応援してくれた。
嘘よ。
ルイーズが一方的に私からアルフレッドを奪ったのよ。
「どうしたの、カトリーヌ。あなたに魅力が無くなったから婚約破棄されたんじゃないの? 違う?」
私に魅力が無くなった?
背が高い事は初めからわかっていた話ではないか!
「ルイーズと仲違いしたとはとんでもない話。あなたはアトス家の恥じよ。私のお姉さまに恥をかかせるつもりなの?」
伯母に恥をかかせるつもりなど毛頭も無い。
「この話はアトス家には広がっているはずね。きっとアサエロ家にも話はいっているはずよ。そうよ、カトリーヌ。あなたは悪役令嬢になっているのではないかしら?」
「悪役令嬢? そんなの名誉毀損だですわ、お母様」
「でも。昔はあなた、ルイーズによく遊んでもらっていたじゃない。その恩も忘れて」
恩も何もへったくれもないわ。
私はむしろ被害者なのよ。
どうして悪役令嬢の濡衣を着させられなければならないの?
そこへ、父親が応接間に入ってきた。
「何をもめているんだい? エリザベート」
「今回の婚約破棄の件よ」
父親は上座に当たる席に腰掛けるとパイプに火をつけた。
「婚約破棄は残念だったな」
父親はブラウンヘアをマッシュルームカットにしてスカイブルーの瞳を携えている。
やはり背は高いがその分横もある。
その体格の良さに、一瞥しただけで『勝てない』と思った泥棒がたじろいで逃げたという逸話がある。
「それがね、ルイーズに責任をなすりつけているのよ。あなたも何とか言ってよ」
「うむ。アルフレッドはカトリーヌに嫌気が差し、ルイーズに乗り換えたという話だね?」
「そうなの」
「これでは確かにアトス家のメンツが立たないな」
アトス家は子爵。
それがたまたま伯母は伯爵家に嫁ぎ、母が男爵家に嫁いだだけの話。
父親は頭を抱えた。
「お父様。ルイーズは私とアルフレッドが婚約していた事を知っていました。そして『おめでとう』まで言ってくれました。けど、先だって手のひらをひっくり返したかのように人が変わっていました」
「……」
父親が何かを言おうとした時に母親が遮った。
「だからね、カトリーヌに魅力が無くなったからルイーズと一緒になる事を決めたんじゃないかしら? って思って」
「そうだなぁ。だけど、ルイーズもルイーズだ。ルイーズは遠慮というものを知らないな」
その言葉に反応するかのように母親の表情が変わった。
もしかしてお父様は私の味方なのかしら?
「でーもー。アルフレッド様がカトリーヌに見切りをつければ必然的に……」
「いや。確かに理由は諸々あるかもしれない。だけど、婚約をいとも簡単に破棄してしまうアルフレッド様にも問題はある」
母親は目の色を変えた。
目から炎が出てきそうな勢いだ。
「違うわ。アルフレッド様がカトリーヌに嫌気が差したのだから、婚約破棄になって当然なのよ。これでもしカトリーヌと結婚したら、取り返しのつかない事になっていたかもしれないのよ」
母親の口調は明らかに憤懣(ふんまん)に満ちていた。
「お母様。何度も言いますがルイーズが私から……」
と言ったら母親が遮った。
「ルイーズはあなたが小さい時に沢山面倒を見てくれた。そのルイーズがどうしてあなたから婚約者を奪うの」
それとこれとは別だわ!
仮に私への好意で面倒を見てくれたとしても、年も経れば幼少の思い出など過去の引き出しに仕舞われるに決まっている。
「今のルイーズは違います。ルイーズは言いました。『男爵令嬢は大人しく平民と結婚しなさい』と」
母親は首を横に振る。
「ルイーズがそんな事言うわけないわ。ルイーズを陥れようとしているのね?」
「まぁまぁ」
と父親が宥めてきた。
「ルイーズがそのような発言をしたのも問題だな」
父親は頭を抱えている。
「ルイーズを……悪く言いたくないんですが」
私はフォローを入れた。
「そうやってルイーズへの悪口雑言並べても私は信じないからね。もうあんたたちと話していても埒が明かないわ。もういい。出てく!」
と言って母親は応接間を出て行った。
「お父様は信じてくれるんですね?」
「勿論さ、カトリーヌ。母親はアトス家の確執と見て恥じらいを感じているのでしょう」
やはり、お父様は味方でした。
「母親と軋轢が生じてしまっても、私はカトリーヌの味方だ」
と言って父は手を握ってくれました。
ルイーズも母も敵に回ってしまった今、味方をしてくれるのは父だけ。
恐らく、アサエロ家に嫁いだ伯母も私の味方などしてくれないでしょう。
私には父方の親戚だけが味方だと悟りました。
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