後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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4.オメガクラス

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俺は転校してすぐ、ヒートになったためにクラスに合流したのは、新学期が始まって1週間過ぎた後だった。授業は普通の科目と一緒に料理や礼儀、オメガについての授業がある。何より驚いたのが体育の授業だ。体育の授業は毎月行われる付属大学の先輩や提携校との交流会のためのダンス練習やマナー研修だった。オメガクラスの体育館にはバスケットゴールはないし、呼び方も遊興室だ。まさに花嫁学校と言う感じだ。

それに全県から集めても30人に満たないクラスメイトはほぼ女子だった。男子は俺を含めて3人で。むこう2人は2人で関係を作っていたから、入って行くのにためらってしまう。オメガクラスは良くも悪くも他人に興味が無いと言う雰囲気だった。


気付けばボッチだ。


小耳に挟む話に運命の番と言うのがある。

遺伝子的な相性が100%に近く出会った瞬間にフェロモン値が爆上がりするらしい。さらにアルファとオメガにはお互いしか感じない匂いと言うのがあって。この匂いにお互い惹かれあい番うのが運命の番と呼ばれる特別なつながりだ。切ることのできない特別なつながり。出会う確率は相当低いらしいが。去年も自称運命の番が3組成立したらしい、お互いのことも知りもせずフェロモン値と匂いと言う感覚でしかないものに惹かれるってそれは心を置いてけぼりにしてやしないかなと思う。



昼休み。

教室内は9月の交流会の話で持ち切りだ。9月は祝日が多いために遠い提携校からも交流に来るらしい。俺は次の授業の準備をしていた。

「ねぇ、永田君」

声をかけてきたのは俺を含めて、ここに3人しかいない男性オメガの…

「僕は、嶋田翼だよ」
「こんにちは、永田透です」
シマダツバサくんはもう一人の男性オメガの
「長谷川日向です」
ハセガワヒナタくんと俺の机の前に立っていた。


嶋田君は柔らかそうな猫っ毛にちょっとつり目で全体的にネコ科っぽい印象の男の子だ。対する長谷川君は黒髪ストレートでツーブロックのかっこいい髪型をしてる目が丸くてきれいな二重で大きい、こっちは子犬だ。


「今度の交流会さ。永田君はどうするの?」
いつの間にかまわりの席を借りて二人は俺の近くに座っていた。はて、どうするの?とは。
「俺は良く分からなくて、今も聞き耳立てて聞いてた」
俺がそう言うと長谷川君がふわっと笑った。
「正直だね。今日声を掛けたのはさ。今度の交流会に僕と一緒に出てくれないかなと思って」
「あのね、交流会の参加は番候補がいるオメガは出られないんだ。僕はもう婚約するから出られなくなって。そうなるとヒナタがひとりになるから…」

俺はびっくりした。もう、婚約って。だけど構わず話は続く。
「男が一人で出るにはちょっと勇気がなくて」
長谷川君は声を小さくした。
「あーうん。俺で良ければ一緒出ましょうか、あのいろいろと教えてもらえると助かります」
俺はぺこりと頭を下げた。長谷川君も嶋田君も顔をわかりやすくぱっと明るくした。

「じゃあさ、今日放課後、透の部屋に遊びに行っていい?」
嶋田君が距離をぐいぐいと詰めてきた。ただ、いろいろ教えてもらえるかもしれない。
「良いよ。俺、寮に人を呼ぶの初めてだ」
二人はツバサって呼んで。ヒナタって呼んでと笑顔を向けてきた。
俺はなんだか嬉しくて口元が緩む。ヒナタとツバサが黙るので何かと思ったら。
「透ってしゃべってみるとかわいいね」
「なっ!冗談。ふたりの方が可愛いだろ」
すかさず突っ込むと二人が笑い出すので一緒に笑った。


放課後、二人を連れて寮に帰った。聞くとツバサは自宅から通っていて。ヒナタは同じ寮に入っていた。ヒナタの部屋は階段を挟んだ隣だった。俺の部屋は入口を入って右手にユニットバスその向かいに簡易キッチンと冷蔵庫 奥の部屋にベッド勉強机と言う1Kと言う間取りだった。俺の部屋で一番異彩を放っているのは最新のオーブンレンジだった。これは夏のバイト代にお年玉を足して買ったものだ。勉強机の隣の棚にどんと置いてあった。

二人ともそのレンジに視線が釘付けだった。俺は折りたたみのテーブルを出してベッドの前に置き、収納から座布団を出した。

ツバサはなにやら楽し気に机とか棚とかを眺めていて、ヒナタもきょろきょろと部屋を見ている。

冷蔵庫から麦茶を注いでテーブルに置いた。ついでに昨日焼いたフィナンシェを皿に盛る。

「向こう側と間取りって違うの?」
「僕の部屋も同じだよ、間取りは鏡になってるけど」
ヒナタは答えながら俺の焼いたフィナンシェをしげしげとみている。ツバサもそわそわと座布団に座った。
「これ透が焼いたの?」
俺がうなずくと二人が手に取って食べ始めた。
「うっまっ!」
二人が声をそろえて褒めてくれて、ホッとした。つい口元が緩む。

「最初さ、ベータからオメガになった男の子が転校してくるって聞いた時。絶対怖いやつが来るって思ったんだよ」
ヒナタが麦茶を一口飲んで俺を見る。曰く、女子には何年かに一度そう言う子が現れるらしい。ただ、ベータからオメガになった子はすごく悲観するか、すごく攻撃的からしい。そう言う子は男性オメガに対してひどい態度をとってきたので今回も様子を見たそうだ。

「僕とツバサは小学校の入学前検診でオメガだって分かって、この学校の小学部に入ってからの付き合いなんだ。お互いずっと二人で完結してきたから声の掛け方が分からなくてごめんね。すぐ声を掛けなくて…」

「いや、俺も同じだったから前の学校も友達1人だったし」

二人はごめんと頭を下げる、いい子たちだ…友達になれそうな予感にうれしくなる。

「交流会っていったいどんなの?」

「月1回開催されるんだ。オメガ棟から渡り廊下でつながってる交流棟ってあるだろ。あそこで大学からだったり、提携校のアルファクラスだったりからアルファが集まって立食パーティーみたいなことをするんだよ」

「パーティー…」

「うわっすごい嫌そうな顔してる」
ツバサが俺を見て笑う。

「高校を卒業したらお見合いを推奨されるんだけど、それまでは練習と言うか。プレと言うか。お見合いの代わりに交流会に参加してアルファと出会うように言われてるんだよ」

俺はオメガになったらすぐお見合いさせられるんだと思っていた。じゃあ、卒業まではお見合いはないんだな。ちょっと、ホッとした。

ヒナタは教えるのが楽しいのか。大袈裟な身振り手振りで話をする。

「僕らはそこで声を掛けられるのを待つんだ」
「えっ」
「オメガから声をかけるのはマナー違反なんだ」

俺は少し驚いた顔をしていたんだろう、ヒナタが慌てて。
「あぁ、これには意味があってね。アルファの方が数が多いんだ。だからオメガから声をかけて同じ人に集まってしまうと、どうしてもアルファが余ってしまうから、まんべんなくお話ができるようにって言う配慮なんだ」

なんか、すごい世界だな。でも、説明を受けた時にも聞いた。

人口の98.5%がベータで。1%がアルファ。オメガは0.5%だと聞いた。

単純計算でアルファとオメガの人数は2:1なのだ。確かに不均衡ではある。ただその数字を見る限りやっぱり相性の良い人に出会うと言うのは難しいんだろな。


「透君難しい顔しているね」

ヒナタが苦笑いを浮かべてこちらを見ていた。
以前、このマナーをその元ベータの女子に説明したところ。話をするのもルールがあるなんて差別だと騒いだそうだ。言葉だけ聞けばそうだろう、だけどこういうルールは経験から作られている。ルールがないともっと大変なことになるのだろう。

「いや俺、交流会で誰にも声かけられないかもな」

「そしたら二人で美味しいものを食べておしゃべりしていようよ」

ヒナタは嬉しそうにパーティーに出されるご飯が美味しいことを教えてくれた。

「なんかでもね。頻繁にある交流会には意味があるんだって。一番の意味は出会うことだけど、成長期のアルファにとってオメガのフェロモンを意識することが、彼らのアルファ性の能力開花につながることがあるって言われてるかららしいよ。それはオメガ性も開花させるって」

フェロモンで能力の開花ってうさん臭い。そう思うのは俺自身ちゃんとアルファを見たのは康太さん以外いないからかもしれない。交流会の目的は同じ空間にいることだって話か。

ヒナタが俺に笑いかける。
「だから番を見つけようなんて気負わなくてもいいんだって」

「いいな、僕も二人としゃべるだけで良いなら参加したいな」
ツバサが残念そうにぼやく。

「え、ツバサの婚約者って男?女?」

「6つ上の男の人だよ。幼馴染なんだ」

初めて会ったのは7歳の時でつい最近までは戦友のような仲だったらしい。

ツバサはお坊ちゃんで上流階級には上流階級同士の交流会と言うのがあり、そこでオメガとアルファの子は出会いの場を提供される。ツバサと幼馴染の彼はそう言う交流を煩わしく思っているという事で意気投合して番のふりをしていた。

そして、16歳になり正式な番契約を結べる歳になったツバサに幼馴染の彼が本当の番にならないかと告白されたそうだ。ツバサも彼のことが好きになっていたのでその告白を受けたそうだ。
長い間二人で積み上げた時間があったという事か。

「なんかうらやましいな、おめでとう」

ツバサは俺の方をまじまじと見てありがとうと笑った。
「透はなんか素直だな」

「俺さ、ヒートになったからもう俺がオメガだって言うのは受け入れたんだと思う。だけどまだアルファとかオメガとか番うって言うのがピンとこないんだ。二人が当たり前だと思っていることが分かってない。すごく頼りにしてるからこれからもご指導…ご鞭撻…」

俺はしっかりと頭をさげた。
二人が同時に吹き出して笑っている。

「なんか。透君おもしろい」

「透、僕らにまかせとけ」

そのあとは俺の話になった。夏休みにバイトをしたことを言うと二人ともすごくうらやましがっていた。
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