後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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17.クリスマスデート

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結局、至君も俺も忙しくて紅葉デートの後、会えたのは終業式の後のクリスマスだった。
毎日メッセを交換して、たまに電話して声を聴いていても、会えるのはやっぱり格別だ。今日は二人でショッピングモールに行って映画を見ようと計画を立てていた。そのあと、俺の実家に送り届けてくれるそうだ。

俺はノーカラーのジャケットの下に紅葉狩りの時に買ってもらったお揃いの白のジップアップパーカーを着てボックスチェックのシャツと紺のパンツを合わせた。至君は大柄なコートの中に白のジップアップパーカー。細身のデニムにショートブーツ。体格がいいから何を着てもカッコよくてこちらが少し照れてしまう。


今回も門の横の駐車場で待っていてくれた。至君は俺が見えると手を振った。駆け足で近づくと、寒いからと、すぐ助手席を開けて車内に案内してくれる。エンジンをかけたままで待っていてくれたみたいだ、車の中は暖かかった。至君もすぐ運転席に乗り込む。俺の着替えが入ったカバンは後部座席に置かせてもらった。
待っていてくれている間、寒くなかったのかと至君の助手席側の手を触ってみた。少し冷たかった。温めるように手を握っていると、至君が温めた手で俺の首を支える。少しひんやりして見上げると目が合う。自然と唇を寄せ合っていた。冷えた唇を温めるようにゆっくりとキスをした。
心が満たされる気がして襟元をぎゅっと握ると吐息で至君が笑うのが分かった。
「相変わらず、透は可愛いな」
おでこにおでこをこつんとぶつけてまた口の端にキスをくれた。

「透。論文は済ませてきたから1月の中旬までなら毎日だって会えるからな」
俺はコクコクとうなずいた。
「俺も今日から実家に帰るんだ。だから俺も毎日だって会いたい」
つい、本音が漏れた。
「あ、いや…いつでも大丈夫」
言い直した俺を至君がおかしそうに笑い。「言質は取ったからね」と頭を丁寧に撫でられた。
車はショッピングモールに向かった。クリスマスだから車も人も混んでいた。モール内はクリスマス一色で華やかな雰囲気だった。シアターブースまで手を繋いで歩く。人目の多いところでこんな風に歩くのは初めてだったのでうつむいてしまう。至君は気にした感じはないのに俺が自意識過剰なんだろうか。

正直、映画館の席に着いた時ホッとした。暗い場所なら手を繋いでいても恥ずかしさはない。僕らの間に置いてあるポップコーンから良い匂いがする。
「透、ずっとうつむいてたね。人が多いの苦手?」
俺はハッと顔を上げて至君を見る。フルフルと首を振る。
「前は苦手なんて思わなかったけど。思えば久しぶりに来たなって、至君と手を繋いで歩けるのは嬉しいけどまだ自信が無いんだ」
至君はポップコーンを一つ摘まむと俺の口に強引に入れる、俺はその指をちょっとかじってしまった。至君はニヤリとしてその指を舐めて見せた。
「透、俺は今日もかなり浮かれてるから、そう言う可愛いこと言うと自重しないよ?」
そしてもう一回ポップコーンをつまんで口に入れてきた。今度はかじってしまわない様に大きく口を開けると人差し指で舌と唇を撫でられた。
「至君…!」
「透はいまだに呼び捨てできないくらい恥ずかしがり屋だからね」
また、ポップコーンを僕の口に入れてくる。俺も負けじと至君の口にポップコーンを入れ返すと指をかじられた。至君がニヤリとするからやり返してやろうと、かじられた指を舐めてみた。俺が恥ずかしくて耐えられなくなった。
すぐに館内が暗くなって映画が始まった。よかった…俺は今、耳の先まで真っ赤だ。
でもまわりなんて見ていない至君の行動は楽しめって言っているように感じた。
「ありがとう、至君。俺 しっかり楽しむよ」
至君の気遣いに心が救われる。俺も今の時間を大事にしたいと思った。

アクション映画は最高だった。やっぱ飛び道具を使わず素手でバンバン倒していくのがかっこいい。たまに至君の横顔も見た。楽しそうに見ていた、あぁ、デートしているって幸せな気分になった。
至君と興奮して主人公強くねって何度も言いながら歩いた。同じ人が出ている映画を探して見ようって話にもなり、次の約束ができた。

やっと雰囲気にも慣れてきていろいろと目移りさせている。せっかくのショッピングモールだからとお互いのクリスマスプレゼントを探すことになった。
「あっ、透にこれ着せたいな。下心はちょっとしかないから」
と持ってきたのはパジャマだった。僕の反応を楽しんでいる顔をしていた。
「じゃあ、お揃い買う?」
俺だってやられっぱなしではないのだ。動揺を見せない様に言い返すと至君はニヤリとして
「じゃあ、同じ色ので良いよね」
そう言ってさっさと買ってきてしまった。俺が唖然と見つめていると。
「今日はこれ着て俺んちにお泊りね」
至君が良い笑顔で俺を見つめる。そんな急に良いわけない。
「いや、家族に確認しないと。俺んちだって俺が帰ってくると思って待ってるから」
至君が俺の肩をポンポン叩いて。

「航兄が受験生だから今年はクリスマスっぽいことしないって言ってたよ。うちはいつでも遊びにおいでって言ってたから大丈夫」

「いつの間に…航兄と連絡とってたの?」

「いや、お父さんがそう言ってた」

至君をまじまじと見てしまった。いつのまに、父と連絡を取りあってたんだ。やられっぱなしじゃないって思ったのにやっぱり至君に転がされている。

「透は毎日でも大丈夫なんでしょ?」
「うっ…大丈夫だよ」

至君は機嫌良さそうに僕の手を引いた。俺は至君へのクリスマスプレゼントに奮発して一番大きい白くまの抱き枕を選んだ。至君がその抱き枕を抱いて歩いているのはちょっと面白いなと思ったからだ。だけど。
「透、強引でごめんね。許して」
至君が前抱きにした白くまの抱き枕越しに俺に謝るのが可愛くて許すしかなくなった。
「戸惑ってるだけだよ。でもさ、急に行っても大丈夫なん? ごはんとか準備大変なんじゃない?」
「大丈夫、ばあちゃん張り切ってるから。むしろもう準備はじめてると思う」
「それって最初っからその予定だったって聞こえるよ」
至君はぐっと指をからませて手を繋いできた。クリスマスって不思議だ。こんな風に手を繋いで歩いても誰も見てない。みんなそれぞれ幸せそうでやっぱり俺が自意識過剰だったんだなって思う。
「俺は一分一秒でも長く恋人と一緒にいたいだけだよ」
「次からは相談してよ」
怒ったふりだけして、新しい約束をした。知ってか知らずか、至君はにっこりと笑った。
「透が可愛くてどうしよう」
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