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サビネの諸事情を聞かされ把握した店長ことアロイス・ティルデインは遅番の日は必ず帰宅を共にすることを申し出た。嬉しいことだが彼女は雇い主にそんな面倒ごとを頼むのは気が引けると断る。
だが、アロイスは引かず「だったら勝手に付き添って護衛するまでだよ」と笑ったのだ。
「もう、狡いですねその言い方……」
「はは、優秀な従業員は大切だからね。遠慮されても困るし、それに……個人的に気になるから」
「え……?」
彼女のことが気になると言った彼の顔は微かにだったが熱を帯びていて頬と耳が赤くなっている。凝視しなければわからない微かな変化ではあったが、サビネは気が付いて己まで赤くなる。
「よ、よろしくお願いします……」
「あ、ああ!任せておいてよ、こう見えて体力はあるし腕力も自信あるんだ。荷運びで鍛えてるからさ」
石鹸がみっちり入った木箱はとても重くて鍛錬に向いていると言って笑った。釣られてサビネも笑う、心から愉快だと笑ったのは一人暮らしを始めてから初という事に後に気が付く。
こうして二人の距離は急激に縮まった、繁忙期を除いて遅番でない日さえ彼女らは共に帰宅するようになる。そして、それが当たり前の習慣になった頃、「結婚前提で付き合いたい」とアロイスが告白した。
知り合って一年に満たないが彼は出会った当初から見初めていたようだ。
「ごめん、いきなり迷惑だったかな……小柄なキミが大荷物だろうと物ともせず健気に運んで働く姿が可愛くて、愛しくていつも目で追っていたんだ」
「……まあ、あの…………私もお慕いしています」
彼女の返事を聞いて両想いであったことをアロイスは驚嘆して大いに喜んだのは言うまでもないことだ。
「どうだろうか、よければ一緒に暮らさないか?色々と心配なこともあるし側にいれば私も安心できる。もちろん婚姻するまでは節度を守って不快なことはしない!約束する!」
「え、と……あぁどうしましょう、嬉し過ぎて混乱してしまいます」
恋心の告白と求婚までされたサビネは、至福の中にいてふわふわした不思議な気分になっていた。
「いまなら空を飛べそうです!屋上へ行ってもいいですか?」
「それは止めて!」
存外、お転婆なサビネにアロイスは苦笑するのだった。
だが、アロイスは引かず「だったら勝手に付き添って護衛するまでだよ」と笑ったのだ。
「もう、狡いですねその言い方……」
「はは、優秀な従業員は大切だからね。遠慮されても困るし、それに……個人的に気になるから」
「え……?」
彼女のことが気になると言った彼の顔は微かにだったが熱を帯びていて頬と耳が赤くなっている。凝視しなければわからない微かな変化ではあったが、サビネは気が付いて己まで赤くなる。
「よ、よろしくお願いします……」
「あ、ああ!任せておいてよ、こう見えて体力はあるし腕力も自信あるんだ。荷運びで鍛えてるからさ」
石鹸がみっちり入った木箱はとても重くて鍛錬に向いていると言って笑った。釣られてサビネも笑う、心から愉快だと笑ったのは一人暮らしを始めてから初という事に後に気が付く。
こうして二人の距離は急激に縮まった、繁忙期を除いて遅番でない日さえ彼女らは共に帰宅するようになる。そして、それが当たり前の習慣になった頃、「結婚前提で付き合いたい」とアロイスが告白した。
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「ごめん、いきなり迷惑だったかな……小柄なキミが大荷物だろうと物ともせず健気に運んで働く姿が可愛くて、愛しくていつも目で追っていたんだ」
「……まあ、あの…………私もお慕いしています」
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「え、と……あぁどうしましょう、嬉し過ぎて混乱してしまいます」
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