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悲しい運命に逆らってみせると強く誓ったルシアナは両親の説得に頷くことはなかった。しかし、先方との見合いの席は反故できないという父の都合で断る前提で会うことを了承する。
「いいですか御父様、無理矢理婚姻させるつもりなら修道院へ入り縁切りしますからね!」
「わかっているよ、これほど拒否するのだ。何かあるのだろう」
青褪めた顔で必死に訴える愛娘に思うところがあった両親は婚約は止めようと決断した。
「私の叔母もね悪夢を見た翌日に似たような事を言って縁談を断ったことがあるのだよ。そうしたら見合い相手の家が破産寸前だったと後に知ったのだ。きっと血筋なのだろうな得体のしれない力を持っているのだよ」
「……」
少し違うとルシアナは訂正したかったが、死に戻りしたなど話しても誤解されるだろうと口を噤んだ。そして、いよいよ今日が見合いの日である。
昼を少し過ぎた時間に相手の家族がやってきた、ナマズ髭を蓄えたダナトー伯爵とその妻、そして見合い相手の青年が後ろに付いてきた。
再会した若きニコラスは穏やかな笑みを浮かべる優しそうな面差しだ、とても凶行に走るとは思えない。前回生きたルシアナはこの微笑みに騙されたのだ。恨みを思い出して睨みそうになった彼女は拳をきつく握り爪を食い込ませて堪える。平静を装い笑みを返した。
美青年の顔の下は殺人者だ、騙されるものかと気を張るのだった。
両家は昼食を囲み当たり障りのない会話をして過ごした、ダナトー側は断られるなどと想像していないだろう。前回と同様に「庭園で散歩でも」とニコラスが手を差し伸べて来た。
ルシアナはその手を見てゾッとした、自分を殺した薄汚い手。腹に己の子がいたにも拘わらず毒を盛った憎い手だ。
彼女は一呼吸おいてから「ごめんなさい、足首を痛めてますの」と言ってやんわり断った。
両親には事前にそう振る舞うと告知していたので問題はない。
「そうですか、とても良い日和だったのに残念だ」
ニコラスはそう言って差し伸べた手を引いて席に戻った。ルシアナは憎き相手に触れることを回避出来て安堵の表情を浮かべ「ホゥ」と小さく息を吐く。
まるで全てを想定していたかのような見合いの流れを目にしたルシアナの両親は、”やはり何か良からぬ事がある”と改めて感じ取った。
***
緊張の見合いを終えたその晩、ルシアナは再び不思議な夢を見た。
やはり白い空間に浮かぶように体を横たえている、起き上がりたかったが身体がいうことを利かない。
”がんばったね、安心したよ。でもまだ油断ならない、婚約を断ってもあの男は諦めないから”
死に際に聞いたあの声が耳元に届き彼女はドキリとした。
「それはどういう意味?運命は変えられないの?あなたは私の…」
すると言いかけた言葉を遮るように頭の中へ映像が流れて来た、それはまるで走馬灯のようなものだった。
”あなたが死んだ後の悲しい出来事だよ、心が苦しくなるけど耐えてね”
「あぁ……そんな!なてことかしら、私が殺されただけではなく両親までも!」
憎き夫の手によって毒を盛られたらしい父と母が、己と同様に昏倒して眠るように死んでいく映像に涙が零れた。ニコラスは爵位と財産を手に入れるために家族全員に手をかけたのだ。
そして、葬儀の場面に変化すると憎きニコラスと彼の愛人らしき女が墓前の前で高笑いしているのが映った。
『あぁやっとくたばってくれた!これで俺はアシュトン侯爵当主になったぞ!アハハハハッ!』
『そうね莫大な遺産も手に入れたわ、私達の人生は安泰ね!』
そこで映像はぷつりと途切れて頭の中は静かになった。
”私が見せられるのはここまで、後はあなたの行動次第だよ。悲しい運命に抗ってね”
「あ!待ってまだ聞きたいことが」
ここでルシアナは夢から覚めてベッドの上で泣きはらしていた。
「ニコラス、絶対に許さないから!私は過酷な運命に負けやしないわ!」
「いいですか御父様、無理矢理婚姻させるつもりなら修道院へ入り縁切りしますからね!」
「わかっているよ、これほど拒否するのだ。何かあるのだろう」
青褪めた顔で必死に訴える愛娘に思うところがあった両親は婚約は止めようと決断した。
「私の叔母もね悪夢を見た翌日に似たような事を言って縁談を断ったことがあるのだよ。そうしたら見合い相手の家が破産寸前だったと後に知ったのだ。きっと血筋なのだろうな得体のしれない力を持っているのだよ」
「……」
少し違うとルシアナは訂正したかったが、死に戻りしたなど話しても誤解されるだろうと口を噤んだ。そして、いよいよ今日が見合いの日である。
昼を少し過ぎた時間に相手の家族がやってきた、ナマズ髭を蓄えたダナトー伯爵とその妻、そして見合い相手の青年が後ろに付いてきた。
再会した若きニコラスは穏やかな笑みを浮かべる優しそうな面差しだ、とても凶行に走るとは思えない。前回生きたルシアナはこの微笑みに騙されたのだ。恨みを思い出して睨みそうになった彼女は拳をきつく握り爪を食い込ませて堪える。平静を装い笑みを返した。
美青年の顔の下は殺人者だ、騙されるものかと気を張るのだった。
両家は昼食を囲み当たり障りのない会話をして過ごした、ダナトー側は断られるなどと想像していないだろう。前回と同様に「庭園で散歩でも」とニコラスが手を差し伸べて来た。
ルシアナはその手を見てゾッとした、自分を殺した薄汚い手。腹に己の子がいたにも拘わらず毒を盛った憎い手だ。
彼女は一呼吸おいてから「ごめんなさい、足首を痛めてますの」と言ってやんわり断った。
両親には事前にそう振る舞うと告知していたので問題はない。
「そうですか、とても良い日和だったのに残念だ」
ニコラスはそう言って差し伸べた手を引いて席に戻った。ルシアナは憎き相手に触れることを回避出来て安堵の表情を浮かべ「ホゥ」と小さく息を吐く。
まるで全てを想定していたかのような見合いの流れを目にしたルシアナの両親は、”やはり何か良からぬ事がある”と改めて感じ取った。
***
緊張の見合いを終えたその晩、ルシアナは再び不思議な夢を見た。
やはり白い空間に浮かぶように体を横たえている、起き上がりたかったが身体がいうことを利かない。
”がんばったね、安心したよ。でもまだ油断ならない、婚約を断ってもあの男は諦めないから”
死に際に聞いたあの声が耳元に届き彼女はドキリとした。
「それはどういう意味?運命は変えられないの?あなたは私の…」
すると言いかけた言葉を遮るように頭の中へ映像が流れて来た、それはまるで走馬灯のようなものだった。
”あなたが死んだ後の悲しい出来事だよ、心が苦しくなるけど耐えてね”
「あぁ……そんな!なてことかしら、私が殺されただけではなく両親までも!」
憎き夫の手によって毒を盛られたらしい父と母が、己と同様に昏倒して眠るように死んでいく映像に涙が零れた。ニコラスは爵位と財産を手に入れるために家族全員に手をかけたのだ。
そして、葬儀の場面に変化すると憎きニコラスと彼の愛人らしき女が墓前の前で高笑いしているのが映った。
『あぁやっとくたばってくれた!これで俺はアシュトン侯爵当主になったぞ!アハハハハッ!』
『そうね莫大な遺産も手に入れたわ、私達の人生は安泰ね!』
そこで映像はぷつりと途切れて頭の中は静かになった。
”私が見せられるのはここまで、後はあなたの行動次第だよ。悲しい運命に抗ってね”
「あ!待ってまだ聞きたいことが」
ここでルシアナは夢から覚めてベッドの上で泣きはらしていた。
「ニコラス、絶対に許さないから!私は過酷な運命に負けやしないわ!」
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