1 / 12
記憶にない場所
しおりを挟む
ある朝、エレンディア・コレティーノ伯爵令嬢は目を覚ますと知らない天蓋の下にいた。少し寝ぼけた頭でそれを眺めていた。いったいどういうことだろうと前日の事を思い出そうと思考を巡らすが酷い頭痛が彼女を襲う。
あまりの痛みに吐き気がもよおす、どうにか起き上がったタイミングで侍女らしい人物が乱暴に寝室へ入って来た。
「あら、お目覚めでしたか。早速身支度なさいませ」
「私に指図しないで!ここはどこで貴女は誰よ!」
「はあ?寝ぼけているんですか面倒な……」
怪訝に思い動けないでいる彼女エレンディアに、侍女は横柄な態度で早くと急かしてくる。とてもではないが仕える者の言動とは思えなかった。
不審者にしか見えない相手の指図を拒絶して部屋から逃げようとしたが、家族と名乗る者達が寝室に現れて阻まれてしまう。初老の夫婦、若い男が二人、そして身形から執事とその部下という面子である。
どうやら騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。エレンディアは自覚はなかったが、かなりの大声を張り上げていたらしい。
「目覚めてそうそうに騒がしい事、伯爵家では碌に教育もさせていなかったのかしらね」
初老の女主人らしきが傲然な物言いをして居室へ戻るようにと彼女を追いやる、抵抗してみたがエレンディアは思うように力が入らなかった。
青年の一人が面倒そうに「母上の手を患わせるな」と不機嫌そうに言い放つ。
もう一人の青年はさして興味もなさそうにソッポを向き、旦那様と呼ばれている紳士はほぼ空気だ。
「あらまぁお転婆……半月も寝たきりだったのに呆れた事ね」
「は、半月寝ていたですって……?私が?」
益々と訳が分からなくなった彼女は床に崩れて蹲ってしまう、体力もかなり消耗していた。寝たきりだという言葉は嘘偽りではないのだと理解するしかない。
「カルメ、嫁の世話をちゃんとしなさい。これでも未来の女主人よ、それに給金の支払いも嫁の懐次第なことも忘れない様に」
「……はい、ベラリア様」
エレンディアは床に蹲っていながら二人の会話を聞き逃さない、”嫁””未来の女主人””給金”という言葉の羅列の意味を読み取り己の立場を瞬時に理解した。
見覚えのないこの屋敷において、知らぬ間に嫁がされてきたことを驚愕せずにおれないが、今はそんなことで狼狽えている場合ではないと唇を噛むのだ。
あまりの痛みに吐き気がもよおす、どうにか起き上がったタイミングで侍女らしい人物が乱暴に寝室へ入って来た。
「あら、お目覚めでしたか。早速身支度なさいませ」
「私に指図しないで!ここはどこで貴女は誰よ!」
「はあ?寝ぼけているんですか面倒な……」
怪訝に思い動けないでいる彼女エレンディアに、侍女は横柄な態度で早くと急かしてくる。とてもではないが仕える者の言動とは思えなかった。
不審者にしか見えない相手の指図を拒絶して部屋から逃げようとしたが、家族と名乗る者達が寝室に現れて阻まれてしまう。初老の夫婦、若い男が二人、そして身形から執事とその部下という面子である。
どうやら騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。エレンディアは自覚はなかったが、かなりの大声を張り上げていたらしい。
「目覚めてそうそうに騒がしい事、伯爵家では碌に教育もさせていなかったのかしらね」
初老の女主人らしきが傲然な物言いをして居室へ戻るようにと彼女を追いやる、抵抗してみたがエレンディアは思うように力が入らなかった。
青年の一人が面倒そうに「母上の手を患わせるな」と不機嫌そうに言い放つ。
もう一人の青年はさして興味もなさそうにソッポを向き、旦那様と呼ばれている紳士はほぼ空気だ。
「あらまぁお転婆……半月も寝たきりだったのに呆れた事ね」
「は、半月寝ていたですって……?私が?」
益々と訳が分からなくなった彼女は床に崩れて蹲ってしまう、体力もかなり消耗していた。寝たきりだという言葉は嘘偽りではないのだと理解するしかない。
「カルメ、嫁の世話をちゃんとしなさい。これでも未来の女主人よ、それに給金の支払いも嫁の懐次第なことも忘れない様に」
「……はい、ベラリア様」
エレンディアは床に蹲っていながら二人の会話を聞き逃さない、”嫁””未来の女主人””給金”という言葉の羅列の意味を読み取り己の立場を瞬時に理解した。
見覚えのないこの屋敷において、知らぬ間に嫁がされてきたことを驚愕せずにおれないが、今はそんなことで狼狽えている場合ではないと唇を噛むのだ。
47
あなたにおすすめの小説
【完結】巻き戻したのだから何がなんでも幸せになる! 姉弟、母のために頑張ります!
金峯蓮華
恋愛
愛する人と引き離され、政略結婚で好きでもない人と結婚した。
夫になった男に人としての尊厳を踏みじにられても愛する子供達の為に頑張った。
なのに私は夫に殺された。
神様、こんど生まれ変わったら愛するあの人と結婚させて下さい。
子供達もあの人との子供として生まれてきてほしい。
あの人と結婚できず、幸せになれないのならもう生まれ変わらなくていいわ。
またこんな人生なら生きる意味がないものね。
時間が巻き戻ったブランシュのやり直しの物語。
ブランシュが幸せになるように導くのは娘と息子。
この物語は息子の視点とブランシュの視点が交差します。
おかしなところがあるかもしれませんが、独自の世界の物語なのでおおらかに見守っていただけるとうれしいです。
ご都合主義の緩いお話です。
よろしくお願いします。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない
aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。
「偽聖女マリア!
貴様との婚約を破棄する!!」
目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される
あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…
なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。
婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…
病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜
白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。
たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。
そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…?
傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。
妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。
光子
恋愛
お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。
お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。
本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。
ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。
「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」
義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。
「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」
家同士が決めた、愛のない結婚。
貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。
だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。
「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」
お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの?
そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる!
リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌!
私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。
「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」
でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。
「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」
この日から、私の立場は全く違うものになった。
私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる