完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)

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記憶にない場所

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ある朝、エレンディア・コレティーノ伯爵令嬢は目を覚ますと知らない天蓋の下にいた。少し寝ぼけた頭でそれを眺めていた。いったいどういうことだろうと前日の事を思い出そうと思考を巡らすが酷い頭痛が彼女を襲う。
あまりの痛みに吐き気がもよおす、どうにか起き上がったタイミングで侍女らしい人物が乱暴に寝室へ入って来た。

「あら、お目覚めでしたか。早速身支度なさいませ」
「私に指図しないで!ここはどこで貴女は誰よ!」
「はあ?寝ぼけているんですか面倒な……」
怪訝に思い動けないでいる彼女エレンディアに、侍女は横柄な態度で早くと急かしてくる。とてもではないが仕える者の言動とは思えなかった。
不審者にしか見えない相手の指図を拒絶して部屋から逃げようとしたが、家族と名乗る者達が寝室に現れて阻まれてしまう。初老の夫婦、若い男が二人、そして身形から執事とその部下という面子である。

どうやら騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。エレンディアは自覚はなかったが、かなりの大声を張り上げていたらしい。

「目覚めてそうそうに騒がしい事、伯爵家では碌に教育もさせていなかったのかしらね」
初老の女主人らしきが傲然な物言いをして居室へ戻るようにと彼女を追いやる、抵抗してみたがエレンディアは思うように力が入らなかった。

青年の一人が面倒そうに「母上の手を患わせるな」と不機嫌そうに言い放つ。
もう一人の青年はさして興味もなさそうにソッポを向き、旦那様と呼ばれている紳士はほぼ空気だ。

「あらまぁお転婆……半月も寝たきりだったのに呆れた事ね」
「は、半月寝ていたですって……?私が?」
益々と訳が分からなくなった彼女は床に崩れて蹲ってしまう、体力もかなり消耗していた。寝たきりだという言葉は嘘偽りではないのだと理解するしかない。

「カルメ、嫁の世話をちゃんとしなさい。これでも未来の女主人よ、それに給金の支払いも嫁の懐次第なことも忘れない様に」
「……はい、ベラリア様」
エレンディアは床に蹲っていながら二人の会話を聞き逃さない、”嫁””未来の女主人””給金”という言葉の羅列の意味を読み取り己の立場を瞬時に理解した。

見覚えのないこの屋敷において、知らぬ間に嫁がされてきたことを驚愕せずにおれないが、今はそんなことで狼狽えている場合ではないと唇を噛むのだ。

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