5 / 9
新婚旅行
しおりを挟む「あぁライモンド様、夢のようです」
「美しいよベルナティ!私は果報者だよ」
彼等は身内だけの細やかな結婚式を行っていた、とはいえガルボリーノ伯爵家は顔が広い。縁戚だけでとんでもない客が押し寄せた。
祝福を受けた彼らは笑みを零し「ありがとう」と何度も礼を述べた。
「とても良い御式でした、ブーケトスは従妹の方が取られたようですね」
「ふふ、そうね。ありがとう」
今彼女は披露宴に出るために衣装を変えている所だ、やや崩れた御髪を侍女が丁寧に結い上げている。そこへ乱入するライモンドがやってきた。
「ベルナティ、まだかい?」
「あら、気が早いですわね、たった5分しか経っていませんわ」
「だって片時も離れたくないんだ!」
侵入者は早速と花嫁に口づける、「化粧が落ちてしまいます」と侍女に叱られるライモンドだ。
「まったくもう!お気持ちはわかりますが、いい加減に落ち着いてくださいませ」
「いや、済まない!ついな」
口紅がついてしまったライモンドは赤い唇でニカッと笑う。それを見たベルナティはツボにはまったのか大笑いした。
「ふふふ……嫌だわ、ライモンド様ったらフフフフフッ」
「そんなに笑わないでくれよぉ」
***
「新婚旅行は南の海の街でどうだろうか?」
「ええ、とても素敵ですね!楽しみです」
偶然にもブリジッタたちが向かう旅行先と被った、いったいどのようなトラブルが待ち構えているのか。そんな事になっているとは知らない彼らは旅支度に余念がない。とはいえ、落ちぶれた子爵家とは違って従者らがほとんど整えてくれた。
「では行って参ります、父上、母上!」
満面の笑みでベルナティを伴うライモンドは大きな声で宣う。
「ああ、行ってこい!ハネムーンベビーを期待しているぞ!」
「まあ、貴方!恥ずかしい事を……ごめんなさいねベルナティ」
「い、いいえ、大丈夫です、お義母様。行って参ります」
二頭立ての立派な馬車がガルボリーノ伯爵邸から出て行く、手を振るベルナティは微笑んで何度もお辞儀をした。
「ベル、早くこっちへ来ておくれ」
「まぁ、そう急かさないで…キャア!?」
ガシリと捕まえられたベルナティは熱い抱擁に混乱する、顔を真っ赤にする彼女にキスの雨が降る。
「もう!何をするのですか…あっ」
深いキスをされた彼女は何も考えられなくなった、至福の中に落ちて目を閉じた。遠くのほうで彼女の事を呼ぶ声がしたがそれはライモンドのものだ。
「ああ、ベル、愛しい人。やっと二人きりになれたね」
「ライ、ライモンド、愛しているわ」
痺れるような甘い口付けは永遠と続く、それは二つの街を超えても続いた。馬車が停止して馭者が戸を開けると唇を真っ赤にしたベルナティを見てギョッとした。
「あ、あの奥様、何か良くないもの召し上がりましたか?」
「い、いいえ別に……」
「なんでもないぞ!ちょっとばかりくっ付き虫が現れただけだ!」
「は、はあ?」
同じく唇が腫れあがっていたライモンドは「いやあ、困ったものだ!」と豪快に笑った。
930
あなたにおすすめの小説
妹の方が良かった?ええどうぞ、熨斗付けて差し上げます。お幸せに!!
古森真朝
恋愛
結婚式が終わって早々、新郎ゲオルクから『お前なんぞいるだけで迷惑だ』と言い放たれたアイリ。
相手に言い放たれるまでもなく、こんなところに一秒たりとも居たくない。男に二言はありませんね? さあ、責任取ってもらいましょうか。
姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。
coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。
お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません?
私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。
婚約者の私には何も買ってはくれないのに妹に好きな物を買い与えるのは酷すぎます。婚約破棄になって清々しているので付き纏わないで
珠宮さくら
恋愛
ゼフィリーヌは、婚約者とその妹に辟易していた。どこに出掛けるにも妹が着いて来ては兄に物を強請るのだ。なのにわがままを言って、婚約者に好きな物を買わせていると思われてしまっていて……。
※全5話。
俺って当事者だよな? 知らぬ間に全てを失いました
碧井 汐桜香
恋愛
格上であるサーベンディリアンヌ公爵家とその令嬢ファメリアについて、蔑んで語るファメリアの婚約者ナッツル・キリグランド伯爵令息。
いつものように友人たちに嘆いていると、第二王子であるメルフラッツォがその会話に混ざってきた。
私は『選んだ』
ルーシャオ
恋愛
フィオレ侯爵家次女セラフィーヌは、いつも姉マルグレーテに『選ばさせられていた』。好きなお菓子も、ペットの犬も、ドレスもアクセサリも先に選ぶよう仕向けられ、そして当然のように姉に取られる。姉はそれを「先にいいものを選んで私に持ってきてくれている」と理解し、フィオレ侯爵も咎めることはない。
『選ばされて』姉に譲るセラフィーヌは、結婚相手までも同じように取られてしまう。姉はバルフォリア公爵家へ嫁ぐのに、セラフィーヌは貴族ですらない資産家のクレイトン卿の元へ嫁がされることに。
セラフィーヌはすっかり諦め、クレイトン卿が継承するという子爵領へ先に向かうよう家を追い出されるが、辿り着いた子爵領はすっかり自由で豊かな土地で——?
姉の歪んだ愛情に縛らていた妹は生傷絶えない日々を送っていましたが、それを断ち切ってくれる人に巡り会えて見える景色が様変わりしました
珠宮さくら
恋愛
シータ・ヴァルマは、ドジな令嬢として有名だった。そして、そんな妹を心配しているかのようにずっと傍らに寄り添う姉がいた。
でも、それが見た目通りではないことを知っているのといないとでは、見方がだいぶ変わってしまう光景だったことを知る者が、あまりにも少なかった。
特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。
ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】婚約者の誕生日パーティーで婚約破棄されました~2ヶ月早く産まれただけでババアと言う人なんて私だって御断りです~
山葵
恋愛
プライム伯爵令嬢のカレンには婚約者がいた。
ラングラン侯爵家の嫡男ガイラルト様だ。
ガイラルト様は、私との婚約に不服だった。
私の方が1学年上なのと、顔が好みではないらしい。
私だって、そんな不満を顔に出してくる婚約者なんて嫌だ。
相手が侯爵家でなければ、お父様に頼んで縁談を断って貰っていた。
そんな彼が誕生日パーティーで婚約破棄すると言ってきた。
勿論、大歓迎だ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる