完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。

音爽(ネソウ)

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かつて砂漠だった

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神聖巫女が砂漠に訪れて以来、そこは豊かに変貌を遂げていた。
木々は葉を茂らせ、天高く伸びて麦の穂は風に靡く、とても砂漠であったとは思えない。

「巫女様、国の名が決まりました。アデリナ聖国です、満場一致でございます」
「ええええ……私の名前を付けただけじゃない」
呆れる彼女に教皇はニコニコと悪びれる様子はなかった。「仕方ないわね」と肩を竦めるアデリナは皆が住まう住居を建設中だ。

土塊はいくらでもある、それを利用して壁を作りサクサクと居住区を造っていた。
「見事なものですね、ですが造り過ぎでは?」
「そうお?では次は噴水でも造りましょうか、あっ!それより商業区を造るのが先ね!」

次々とアイディアが出てくるのか彼女は忙しい。
線引きをするとそこに街路を伸ばしていく、ガラガラボコボコとそれは建造されて商業区はあっと言う間に出来た。
ただ砂埃が凄い、ゲホゲホと咳き込む教皇は「お手柔らかに」と苦言する。



「しばらくは物々交換かしらね、通貨は何れということで」
「はい、皆喜んでおります、特にサトウキビの栽培は要となりましょう」
サトウキビは酒も造れる、まだ未定だが流通すれば良い物資となるだろう。販路はまだまだ先の話かもしれない。




いつものように忙しく働き、休憩をとっていると視線を感じた。信徒の子供たちがチラチラと彼女の様子を伺っていた。
「まあ、可愛らしい。いらしゃい、パインが冷えているわよ」
子供たちはパアッと顔を綻ばせると「巫女様」と言って駆け寄ってきた。

「巫女様、父が作った黒糖です。是非食べて下さい」
「巫女様ァ、私はねえっと……母が紡いだスカーフを」

次々と貢物を出して来る彼らに苦笑しつつ「有難く」といって受け取った。それから冷やしたパイナップルを皆で食べた。甘くてちょっと酸っぱいそれは幸せな味がした。

「ふふ、久しぶりに食べたわ。美味しい」
久しく食物を摂っていなかった彼女はその味を堪能して目を瞑る。


***


「販路を開拓しました!なんと帝国です」
「帝国?」
司教のひとりが高揚した顔で砂糖と酒の持ち込みが成功したと言ってきた。そこはレインバルト帝国といい、ここから北西に行ったところだ。やや遠いがそこは教皇の転移のお陰だ。

「ただ、私達の国は国として認められておりませんので、砂漠の民として取引します」
「そうなのね、ご苦労様。ところで廃蜜のほうはどうしているの?」
「それでしたら幾つか案がございまして」

大量にでる廃蜜糖はえぐみが残る、だが調味料や安価にできる酒に化けるらしい。余すところなく使い切るのだ。
「ふふ、益々と忙しくなりそうね!私も頑張るわ」


それから数日後のこと、帝国から使者がやってきた。
厳つい甲冑を来た騎士が数名現れた、だがそこは神聖巫女である。簡単には通れない策が施されている。
見えない防護壁で固めていた、剣で小突いても跳ね返される、騎士達はどうしたことだと頭を捻る。結界というものらしい。


「いらっしゃいませ、騎士様。私が国を統べる者です」
「国とな?其方が作ったのか、ここはただの砂漠だったはず……」

一番厳つい兜を被った男が奥から出て来た、ガシャリと音を立てて馬から降り立ったその者は、威嚇しているのか恐ろしいオーラを放つ。

彼女はゴクリと唾を飲む。



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