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レインバルト帝国
しおりを挟む「其方、いま国を造ったと言ったか?ここはただの砂漠だったはず、いつの間にこのような立派な建築物を建てたのだ……信じられないぞ」
「うーん、そのように言われましても……」
困り果てたアデリナは口籠る、いくら全土に名を轟かす神聖教会といっても無理があった。
焦れたらしいその者は佩いた剣の柄に手をやった、どうあっても彼はアデリナに敵意を剥き出しにしてくる。彼女は怖くはなかったが、その態度に「ムッ」とした。
どう説明したら良いか考えていると、いつの間にか来たのか教皇が現れて恭しく挨拶した。教皇の顔を知っていたらしいその御仁はサッと身を翻し「教皇様、お久しぶりでございます」と述べる。
変わり身の早さに呆れるアデリナである。
ここの建造物のすべてがアデリナの御業だと聞かされたその男は驚愕した。
「なんと……貴女が神聖巫女だったのか、これは大変失礼をしました。私はレインバルト帝国の皇太子エルレイジ・レインバルトと申します」
先ほどの厳つい態度とは真逆で、急に軟化してきた彼を彼女は胡散臭げに見た。それに気づいたらしい皇太子は狼狽える、相手は神に等しい神聖巫女だ。どうにか許して欲しいと訴えた。
彼は兜を脱ぎ捨てると改めて挨拶をした。
青みがかった銀糸が揺れている、精悍な顔の青年が青褪めてそこにいた。
その様子を見ていた教皇は笑いだして「そう虐めてくださいますな、どうか私からもお願いします」と頭を垂れる。
教皇に弱いアデリナは仕方ないと言って、最初の無礼を許す。
だが、彼女はこの青年が少し苦手だと思う、なるべく離れて城へ向かうことにした。その態度に気が付いたらしい皇太子は苦笑して離れる。
「私は先に戻ります、教皇様がお相手して差し上げて」
「はい、わかりました巫女様。はっはっはっ」
「……」
***
その晩、晩餐会が行われた席で皇太子は愚痴る。
「まさかここに総本山が移っていたとは……知らぬ事とはいえ無礼を働いてしまった」
悄気返る若き青年に教皇はただ笑って懺悔を聞く。
「さて、臍を曲げてしまった我がアデリナ神にゴマスリに向かいましょうか」
「はあ……許してくださるだろうか?」
「はっはっは!許してはいるでしょうが、好ましいとは思ってないでしょうな」
「ぐ……辛い」
信徒の一人として新たにアデリナと対峙したエルレイジ皇太子は頭を垂れていた。見ているのか、いないのか、彼女は斜め向こうを見つめて生返事だ。とりあえずは印象は最悪のようだ、彼女はじりじりと距離をとっている。
それを追うように皇太子は近づくのだが、「キッ」と睨みつけてあからさまに逃げる。
「申し訳ございません、貴方様と親しくなりたいのです」
「ふん!」
けんもほろろな態度に「うぐっ」と胸を押さえる皇太子だ、どうあっても近寄るなというアデリナに無理に攻めるのは止めようと数歩下がる。
「貴方、もっと下がりなさい!もっと、もーっとです!なんなら消えて」
「……はい、すみません」
その様子を見ていた教皇たちは「猫と飼い慣らしたい者のようだ」と言って笑うのだ。
「まぁまぁ、皇太子殿。そう急く出ない、こちらにきて一献やろうじゃないか」
「は、はあ……教皇様」
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