完結 愛される自信を失ったのは私の罪

音爽(ネソウ)

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美しい婚約者

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「やぁ久しぶりだね、では行こうか」
「はい、ブラッド様」
恭しくディアナ・パースデン伯爵令嬢の手を取るブラッド・レスリー侯爵令息は優しく甘い笑みを浮かべていた。今日この日は二人にとって三度目の顔合わせである。伯爵家の馬車から降りる彼女は眩し気に彼を見る。




顔も知らないまま、いきなり婚約したのにも関わらず二人は仲睦まじい様子だ。最初は「レスリー様」と呼んでいたがブラッドがファーストネームで呼んでくれと早速強請ったのだ。ディアナは恥ずかしいと顔を赤らめた、だが、どうしてもと言われて渋々と応じたのである。

「あぁ、キミはとても美しい。例えるのなら大輪の薔薇のようだ。私は果報者だよ」
「ま、まぁ……ブラッド様、言い過ぎですわ」
驚くディアナは「大袈裟な」と下を向いてしまう、彼女は瓜実の顔をしていて何処か冷たい印象を受ける。透き通る白い肌と凛とした横顔が余計にそうさせるのだろう。

「嘘じゃないさ、本当に綺麗だよ。私は一瞬で虜になったのさ」
「そんな……貴方こそ貴公子ぜんとしていて、す、素敵です。そのキラキラした銀髪の麗しいこと!」
「ははっ、何か擽ったいな。でも、ありがとう」
彼はそう言うとディアナの髪を一房掬い上げるとそっと口付ける。

「きゃっ!」
途端に顔を赤らめるディアナである。
「キミの髪の毛こそ素晴らしいよ、私と同じ銀髪じゃないか。いや、これでは自画自賛しているようだね、ハハハッ」
「まぁブラッド様ったら、うふふ」


この世の春を謳歌しているとブラッドにレスリー侯爵から声が掛かった。父親の呼び出しとあれば最愛の婚約者から離れなければならない。
「ごめんよ、領地運営の話だと思う。直ぐに戻るよ」
「ええ、待っておりますわ」
サロンから彼を見送るディアナは今生の別れを惜しむように潤んだ瞳をしていた。

「バカね、ほんの一時離れるだけなのに」
自嘲する彼女はさてどうやって暇を潰すか考えた、ほんの10分程度だから本を読むのも違うと頭を悩ませる。すると、そこに予期せぬ来客があった。

「ふうん、アンタがブラッドの婚約者ねぇ。細面と言えば聞こえが良いけど要するに狐顔よね?きっつい!その尖った顔で睨まないで欲しいわ!」
「あの、何方?」
いきなり現れたのは甘い香りがする砂糖菓子のような少女だった。大きく零れそうな蒼い瞳とベビーピンクの癖毛をしている、その甘い顔とは裏腹に口から零れるのは辛辣な嫌味である。

「私はブリタニー・ロベル。彼の従妹よ、短い付き合いになるけど、まぁ宜しくねフフフッ」
「……そうですか、ディアナ・パースデンと申します」

短い付き合いとはどういう事だろうと訝しい顔をするディアナであった。









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