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傷心旅行へ
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その後、直ぐに暇してしまったディアナは、彼が喜びに悶絶しているとは気付かずにいた。しかし、心を痛めたままの彼女を余所に、ブラッドは気分が高揚していて「あぁディアナが感情のまま私を」と頬を染めて感動していた。どこまでもすれ違う彼らだ。
途中で退場してきた事に改めて気づいたディアナは「昨夜の事を詫びなければ」とカードを認めていた。しかし、それだけではない。”互いに冷静になって今一度婚約について考え直しましょう”と綴ったのだ。それは暗に婚約自体がなかったことにしようと言う提案である。
実質的な婚約破棄宣言を言い渡したも同然なのだ。
「本当に婚約を白紙に戻して良いのか?私は上手くやっているものとばかり」
「ええ、お父様。彼とブリタニー・ロベルを見るのは辛いです。どの道、愛のない結婚をするのならばまるきり面識のない方のほうが良いですわ」
パースデン卿は至極残念そうに「そうか」と呟く、娘に甘い彼は「早速話を纏めなければ」と言い、レスリー家へ報せを送るのだ。
「あぁ、そうだわ。暫く遠出をする事を伝え忘れたわ、うーん。家令に伝言を頼めば良いかしら?」
簡単な荷造りをするディアナは何処へ行こうかと思案する。
「北の街にでも行こうかしら、あそこは閑散としていて、ゆっくりするなら丁度良いわ」
時期は社交シーズンに入ろうとする4月~7月である、貴族間の柵から逃れたいディアナは丁度良いタイミングだと思うのだ。
***
「は?今なんと!?」
呑気にも茶会の準備をしていたブラッドは危うく茶器を落としそうになった。通例準備はほとんどメイドらに任せていたが、今回の茶会は是非とも成功させようと張り切っていたのだ。
そこに寝耳に水な話をレスリー卿に呼び出され聞かされた、婚約白紙の話である。
「な、ど、どうしてその様な話になるのですか!私達は上手くやっていた!二日前の夜会では互いに愛を確かめあったばかりです!」
ワナワナと震えるブラッドは訳が分からず、近くに合った花瓶に八つ当たりをした。バリンと割れる音をレスリー卿は不快そうに聞き「まったく」と溜息を漏らす。
「どうしてと聞きたいのはこちらだ、何故に行く先々であの女を侍らせてきた?奴は増長して”花嫁は私”などとほざいておると聞く、お前はいったい何をしてきた?」
憎悪に満ちた顔で卿に睨まれたブラッドは息を飲む、言い訳が次々と頭に湧いてきたがどれもこれも子供の言い訳にしか聞こえない。
「申し訳ありません、我儘な従妹に翻弄され過ぎました。すべて私の責任です」
唇を強く噛み血を滴らせた息子の顔を見て、卿はなんとも言えない顔をする。
「うむ、その様子では彼女ディアナ嬢を好いているのだな?あぁ、お前に一任過ぎたようだ……あの性悪女をお前にならば御せると思ってしまった。ロベルにも釘を刺したがアイツも娘に弱い」
力なく溜息を吐き頭を振るレスリー卿は、この良縁が無くなってしまうのはあまりに痛いと言う。
「父上、チャンスを戴きたい。もう一度だけ!」
ブラッドは自分の不甲斐なさに怒りながらも、目は爛々とさせていた。彼は諦めていない。
途中で退場してきた事に改めて気づいたディアナは「昨夜の事を詫びなければ」とカードを認めていた。しかし、それだけではない。”互いに冷静になって今一度婚約について考え直しましょう”と綴ったのだ。それは暗に婚約自体がなかったことにしようと言う提案である。
実質的な婚約破棄宣言を言い渡したも同然なのだ。
「本当に婚約を白紙に戻して良いのか?私は上手くやっているものとばかり」
「ええ、お父様。彼とブリタニー・ロベルを見るのは辛いです。どの道、愛のない結婚をするのならばまるきり面識のない方のほうが良いですわ」
パースデン卿は至極残念そうに「そうか」と呟く、娘に甘い彼は「早速話を纏めなければ」と言い、レスリー家へ報せを送るのだ。
「あぁ、そうだわ。暫く遠出をする事を伝え忘れたわ、うーん。家令に伝言を頼めば良いかしら?」
簡単な荷造りをするディアナは何処へ行こうかと思案する。
「北の街にでも行こうかしら、あそこは閑散としていて、ゆっくりするなら丁度良いわ」
時期は社交シーズンに入ろうとする4月~7月である、貴族間の柵から逃れたいディアナは丁度良いタイミングだと思うのだ。
***
「は?今なんと!?」
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そこに寝耳に水な話をレスリー卿に呼び出され聞かされた、婚約白紙の話である。
「な、ど、どうしてその様な話になるのですか!私達は上手くやっていた!二日前の夜会では互いに愛を確かめあったばかりです!」
ワナワナと震えるブラッドは訳が分からず、近くに合った花瓶に八つ当たりをした。バリンと割れる音をレスリー卿は不快そうに聞き「まったく」と溜息を漏らす。
「どうしてと聞きたいのはこちらだ、何故に行く先々であの女を侍らせてきた?奴は増長して”花嫁は私”などとほざいておると聞く、お前はいったい何をしてきた?」
憎悪に満ちた顔で卿に睨まれたブラッドは息を飲む、言い訳が次々と頭に湧いてきたがどれもこれも子供の言い訳にしか聞こえない。
「申し訳ありません、我儘な従妹に翻弄され過ぎました。すべて私の責任です」
唇を強く噛み血を滴らせた息子の顔を見て、卿はなんとも言えない顔をする。
「うむ、その様子では彼女ディアナ嬢を好いているのだな?あぁ、お前に一任過ぎたようだ……あの性悪女をお前にならば御せると思ってしまった。ロベルにも釘を刺したがアイツも娘に弱い」
力なく溜息を吐き頭を振るレスリー卿は、この良縁が無くなってしまうのはあまりに痛いと言う。
「父上、チャンスを戴きたい。もう一度だけ!」
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