完結 愛される自信を失ったのは私の罪

音爽(ネソウ)

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焦れる恋心

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”一足遅かったな”パースデン卿にそう言われたブラッドは目の前が真っ暗になったような感覚に陥る。その手にはつい先日届いたばかりのディアナからの別れの意味を告げるカードが握り潰されていた。だが、どうしても捨てることが出来ずここまで持ってきてしまった。

ブラッドは言う。
「私達は愛し合っているのです、これは紛れもない真実です」
「……うむ、まぁ落ち着きなさい」
パースデンは真っ直ぐな眼差しでそう訴えてくる青年の顔をマジマジと見た。そこには強い意思を持って自分を見つめている若者がいた。そして、大息を吐くと「娘はここにいない」と呟いた。

するとギョッとするブラッドは蒼い顔をして、どういうことかと狼狽えて卿の顔を見た。

「何度も言うが落ち着き給え、娘は……ディアナは傷心の旅に出ておる。キミとブリタニー・ロベルの関係を勘繰った結果だ、わかるだろう?」
「は、はい。私が悪いのです、もっと強くあの女を拒絶していれば、ディアナを傷つけることもなかった」
優柔不断と言われても仕方がないと彼は深く反省している。

蒼い顔をして猛省するブラッドの事を見つつ、卿はコツコツと椅子の肘掛けを指先で叩いた。
「反省していると見えるが、同じことを繰り返さないかね?私はそれが心配だよ、ブリタニーの事だけではなく他の女のことでも騒ぎを大きくしないかとね」
「それはあり得ません!私の心はディアナに奪われております。昼も夜も彼女で一杯なのですから」
いかに夢中なのかを訴えた青年に手で制して「良く分かった」と卿は返事する。



***

「え?手がかりなしでパースデン嬢を探すのですか?」
家令は酷く驚いてペンを持っていた手を止めた、今は諸々の収穫期に入り人手不足という問題に苦労にしていた。

「あぁそうだ、それが私に課せられた罰と言う事さ。もちろん、キミ達の手は借りてはいけない。私一人で探すのさ」
そう言うブラッドの目は諦めておらず、さっそく荷造りを済ませ今にも飛び出さんとしている。

「あの、それはいつまでの期間なのでしょう?」
「うん、卿に提示されたのは一か月さ。私にも仕事はあるし、それくらいが限界だろう」
「たった一か月でございますか……わかりました。では支度金を」
そう言った家令だったが、彼は断る。自身の持つ資金だけで良いと言った。

「これは私の我儘だ、なに何とかやって見せる。これは試練なのだから甘えは禁物さ」
「坊ちゃま、強くなられましたね」




「さて出発だ、彼女が好みそうな街を目指そう。うーん、そうだな、とりあえず海にでも行こうか。彼女は海が好きなはずだ、キミは何時間も水平線を見てしまうと言っていたね」
早速と見当違いな場所を選んでしまった彼は簡素は馬車に乗り、従者も付けずに出立した。果たして無事に彼女と合流できるのであろうか。








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