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しおりを挟むそれは新月の夜でとても昏い晩だった。
なんとエレイン・ダイナース伯爵に夜会の招待を受けたのだ、カトリーヌ・ロインドは最初渋っており断わりの返事を認めた。だが、是が非でもと言う申し出が何度も届き、目上の伯爵からの誘いを無下にも出来ず渋々の体で参加を決めた。
だが、それがいけなかった、エレインが張った罠だったのだ。
とうぜん夜会など開催されもせずポツリとひとりだけ会場におきざりにされてしまった、狼狽したカトリーヌは護衛と共に逃げ惑うが護衛も侍女もエレインが放った私兵によって囚われてしまう。
「ふふ、おバカなカトリーヌ、貴女なんて歓迎するわけがないでしょう。アーハハハッ」
「伯爵……貴女はいったい何を考えていらっしゃるの!こんな事をして」
「こんな事?ふふふ、どんな事だというのかしら?まさか私が貴女を拐とでも?そうだとして誰が信じると言うのかしらぁ」
「な、なんてことを!」
カトリーヌはジリッっと退けるもそれはすぐに阻まれる、ハッと振り返ればそこには元夫ジャックが手ぐすね引いて待っていた。
「やぁ、久しいねカトリーヌ。会いたかったよ、どうだい体の方も御無沙汰だろう。ひとつ相手してはくれないか?」
彼女の腕を乱暴にひね上げると下卑た笑顔を見せる。
「痛っ……卑怯な!おぞましいことを言わないで!貴方のことなんてこれっぽちも思っていないわ!」
「あぁ、なんて薄情なんだろう、ほんの半年前までは夫婦だったじゃないか」
「いや!離して頂戴!」
バシンと手を払い逃げ出すカトリーヌだったが、そこは来たことが初めての敵陣である。ホールの作りは似通っていても細かいところまではわからない。足が縺れヒールが脱げる、もどかしく思った彼女はもう片方も脱いで脱兎の如く逃げ惑う。
だが、それも限界だった。ホールの出入り口は封鎖されており、いくら叩いても動きはしない。
「無駄な足掻きさカトリーヌ、さあこちらにおいでよ。ここまで来たら楽しむしかないよフフフッ」
「そうよ、貴方方は夫婦だったのでしょう。二人の情交をたっぷり見物させてよ」
「くっ!」
鬼のような相貌をしたエレインとジャックは、厭らしい笑みを浮かべて彼女の元へ忍び寄る。
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