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しおりを挟む「誰が何といおうと貴方など受け入れられないわ!離れて頂戴!汚らわしい!」
カトリーヌは諦めなかった、足が縺れようが衣服が行く手を阻もうが必死になって走る。一方で、普段から不摂生な生活をしていたであろうジャックとエレイン・ダイナースはヒィヒィと声を荒げ追いかける。
「ど、どうなっているのよ!彼女はいったい……ゼェゼェ」
「あの女は……ゼェ……家具の買い付けでヒィヒィ……方々を歩き回ってゼェゼェ!大きな家具くらい持ち上げちまうんだウッ!ゲホゲホ!」
特にジャックは日頃の生活習慣が乱れまくった日々を過ごしておりすぐにヘニャリと倒れてしまう。それを見たエレインは舌打ちして「役立たず!」と罵った。
「誰か!誰かいないの!?ここを開けて頂戴!お願いよ!」
彼女は必死の形相で頼むが応える者はいなかった、屋敷の従者らは何処かへ人払いされているかのようだ。
「ふ、ふふふっ!無駄よ、皆は休暇を与えて誰もいやしないゼェゼェ……でもこれでは埒が明かないフゥフゥ」
ヘタリこんでいるジャックを足で蹴り上げ「動きなさい」とやっていた。
「良い事、短期戦に持ち込むのよ。あの隅に追い立てて行く手を阻むしかないわ」
「あ、ああ分かった。ゲホゲホ……もうちょっと待ってくれないか。目が霞んでしまってゲホッ!」
「なによだらしないのね、あと5分だけ待ってあげる、しゃんとしなさい!」
急に追いかけてこなくなった二人を不審に思いつつ、どうにか脱出出来ないかと模索するカトリーヌである。抜け出すとしたらホールにある大きな窓だ。だが、大きな窓枠が邪魔で簡単にはいかないだろう。
「どうにか蹴破るには、あ!あの椅子を窓に打ち付けるしか……」
彼女が目を付けたのは重厚そうな一脚の椅子だった。他には家具らしきはない、二人に気づかれないようジリジリとそちらに動く。
「さぁ5分経ったわよ、動きなさい愚図!」
「わ、わかったよ、そう急かさないでくれ、どうせあちらも逃げられないんだからゲフゲフ」
そう言いながらジャックは眩暈を覚える、先ほどから視覚が可笑しい。焦点が定まらずふらついていた。どうにか立ち上がるがやはり強烈な眩暈が彼を襲う。
「うぅ……吐き気が、眩暈が酷いせいかもしれない」
「なんですって!?どこまで役立たずなのよ!いーから追いつめるのよ!」
二手からカトリーヌを追い詰めていく二人は今正に椅子を打ち付けようとしている彼女の姿を確認した。轟音と共に窓に罅が入る。
「待て!そこまでだカトリーヌ!ゲホゲホッ!こっちへ来るんだ!」
「いや!やめてよ!触らないで!」
椅子を振り上げて抵抗する彼女とそれを止めさせようとするジャックとでもみ合いになった。
「ほら!もうちょっと!椅子を奪いなさい!」
「わかっているさ、ほら、もう観念しろよ!」
「きゃあ!いやぁ!」
組んず解れず揉み合って漸くカトリーヌの自由を奪った、馬乗りになり、そこでニタリと厭らしく笑うジャックだ。
「ひひ、可愛がってや……ゲフゲフッ!ゴホォ!」
「きゃあ!?な、何!いやあ!汚い!」
血反吐を盛大に撒き散らすジャックは噴水のように吐いた。
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