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王子
しおりを挟む「ベルナルド様……貴方は……」
数歩下がったメリサは驚き震え出した、こうなることを予見していたベルナルドは肩を竦め「ごめん」と一言いった。
「身分を隠して申し訳ない、私はベルナルド・C・コールデンス、この国の第4王子さ」
「あ、……王子殿下、そんな」
するとどこからともなくやって来た護衛らが、わらわらとやってきて王子を護るように立ち塞がった。それを制して余計なことをするなと仕草で命令する。
それを見たラグロハ伯爵は「ひぃぃ!」と声を上げて腰を抜かす。メリサ達も同じくその場に平伏す。
「そう畏まらないで欲しいな、これまで同様にベルナルドとして接して?」
「そ、そんなわけには、いきませんよ……だって平民と王子では身分が違い過ぎます。ごめんなさい」
「……なるほど、そうだよね」
彼はとても悲しい目をして青褪めたメリサの顔を見つめる。
ベルナルドは解っていたのだ、こういう反応をされて遠巻きにされることを。それでもほんの僅かな時間だけ分け隔てなく気軽に話して見たかったのだ。
***
「私はどうしたら良い?彼女に知られてしまったよ、ねぇミミィ?」
「ニャーオ」
膝の上で寝転がる毛玉を抱いて黄昏るベルナルドはただの恋する男だ。なんど溜息を吐いたところで問題が解決するわけではない。
「私はこの身分が嫌いでならないよ、なんだよ王子って……偉いのか?四番目のどうでも良い身分じゃないか」
膝上の猫をそっと置くとゴロリとベッドの横になる、すかさず喉をゴロゴロと鳴らして顔の真横に来るミミィは空気を読まない。
「どうすれば身分を棄てられるかなぁ、家出する?ダメだ……隊に席を置いている以上、私は逃げられない」
いっそのこと騎士をやめようかと思ったが、他の職に就くなど考えられなかった。
「あぁ、ミミィ。教えてよぉ、頭が痛いよ」
「ニャーオ」
「それならば相手の身分を上げれば宜しいのでは?」
「え?ミミィ?」
「ミミィは喋りませんわ、王子殿下。御機嫌よう、ドアが開いていたので失礼」
そこにいたのはアベルタ・ヴィンチ伯爵令嬢だった、彼女は王子妃の勉強の為に登城していたのだ。第二王子の許嫁である彼女は薄っすらと笑みを浮かべてそこにいた。
「ああ、アベルタ嬢、こんにちは……身分を上げるだって?」
「そうですわ、身分が釣り合わないというなら、いくらで方法はありましてよ?」
彼女は悪戯な微笑みを浮かべて「そうねぇ、公爵なんて如何?」と言った。
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