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フュステン公爵
しおりを挟む突然城に呼ばれたメリサは委縮してどうしたものかと恐れた。
一生呼ばれる事がないと思っていた豪奢な城だ、そうなって当たり前かも知れない。城のとある一室で、右往左往する彼女は控えているメイドより身分が低い。
『どうしてこうなったのか……あぁ神様、女神様。どうかお慈悲を』
訳がわからずここにいる状況が信じられない、そうこうしているうちにドアをノックする音がした。飛び上がる程驚いたメリサは「アワワ……」と震える。
代りに返事をしたメイドが来客を招く。
髭を蓄えた立派な紳士が入ってきた、歳は50代と見える。彼はフュステンと名乗った、他にも重要なことを喋ったのだが動揺しているメリサには聞こえないようだ。
「どうだろうか、是非に我が家へ」
「は、は……あ、あのはい。よろしくお願いします?」
「おお、そうか!では王子殿下に来てもらって良いな」
「ひゃい?」
またも訳がわからないまま話は進み、ベルナルド・C・コールデンス殿下が部屋へ訪れた。彼はゆったりと微笑みメリサに挨拶する。どういう訳か膝を付いて彼女の手を取り口づけをした。
「え?え?お、王子殿下!?あのぉ……一体これは?」
「……」
「王子様?」
「……」
「……ベルナルド様」
「うん、なんだい?」
名前を呼ばないと返事しないという事を有言実行したベルナルドは上機嫌で返答した。これにはお手上げだと彼女は盛大に溜息を吐く。
「どういう経緯で私は呼ばれたのでしょう?いきなり城から迎えがやってきて……私は不安です」
「うん、そうだね。申し訳なかったよ、先ずは茶にしようか」
優雅に茶なんて飲んでいる場合かと突っ込みたくなったが、そこはぐっと耐えた。完全アウェイなメリサはそうする他ないのだ。『いざとなったら逃げよう』と思ってなるべくドアの方の椅子を選ぶ。
じりじりと椅子を引いていることに気が付いた王子は「とって食わないよ」と言って苦笑する。
「私の事はお気になさらず、理由をお聞かせください」
「はぁ、解ったよ、いきなりで悪かった」
二度も同じ言い訳をした王子はクルクルと茶の入った器をスプーンでかき混ぜる。そして、こういった。
「フュステンから事情は聴いたはずだが、改めて言おう。キミは公爵家の養女になるんだよ」
「は?はぁーーー!?どうしてですか!」
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