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王城に併設された騎士団の鍛錬場は頑丈な石壁に囲まれていたが隙間を縫って覗きにくる輩は減りそうもない。
観衆のほとんどは年頃の婦女子が多かった、各団長らは「騎士志願者こそが来い」と思っているが叶わない。
「きゃー白騎士様!きょうも麗しいわ」
「当たり前よー、あの方に手を取られたら夢見心地でしょうね」
鳴りやまない女子たちの黄色い声を背に受けて騎士達は模造刀を振り回す。どこか浮ついた感じを見せると上官から叱咤が飛んだ。こんな日常が3年近く続いている。
「おいルー、またお前が美女群を虜にしてんのか。一人占めは許さん少しはわけろ!」
一人の平騎士が白髪の騎士に目掛けて不意打ちをしてきた、しかしなんなく交わした騎士は襲って来た相手の背を肘打ちして倒した。
「打ち方が毎回同じだな、少しは頭を捻ろ」
「ぐぬぅ……かなわねぇな悪かったよ、夕飯驕るからチャラにしてくれ」
「……要らない、寄宿舎の飯が好きだからな違うヤツを誘えよビル」
「ちぇっ……給金日くらいは街へ出ようぜ?息がつまるだろう」
同僚の騎士達が酒場や娼館へ誘うが白騎士ことルディ・テスタードは良い返事をしたことがない。
ビルと呼ばれた騎士はさも詰まらなそうに悄気て藁人形へ向けて撃ちこみを再開する。
ルディはやや小柄だったが剣筋がとても良く、先月行われた模擬戦で好成績を収め近く昇格すると噂があった。
出自は不明だが上官の誰かの隠し子ではないかと囁かれている。
正体は魔王と呼ばれるアダルジーザ総団長の娘なのだが、母方の姓を名乗っていたこともあり誰も気が付かない。
もとから豊満とは言いかねる体躯に、程よく筋肉が付いたルチャーナは何処から見ても青年だった。
どう習得したのか声色まで男そのものだ、「声?そんなもの努力次第でどうとでも」と彼女は言う。
『最初から男児として生を受けていれば』と父親は幾度も愚痴った。
昇格試験を無事クリアしたルディことルチャーナは上等騎士になった。
中等を飛ばした昇進に周囲は驚いた、いよいよ婦女子たちが目の色を変えだしたと騎士達が慄いた。
当人はどうでもいいことだと鼻で笑い飛ばす。
ルディが昇級して暫くしてのことだった。
貴族街近辺に不審者情報が流された、成人の金髪女性ばかりを突け狙う不届き者がいるらしい。
騎士寮内の食堂でもこの噂が良くされていた、都市部の憲兵団から近く応援要請がくるという。
「頃合いも夏だからな、頭が湧いたアフォが出てもおかしくない」
「だが、騎士団は城と王族を護る者だ。なぜ通達がきた?」
「余程の手合いか、またはそれなり身分が高いヤツが犯人なのだろう」
「なるほど、憲兵は平民も多く所属しているからな……身分を笠にされたらたまらん」
「しかし、金髪美女を狙うヤツかよ偏った嗜好の変態かね。」
ザワザワといつになく騒がしい食堂にルディが耳障りだと言って眉間に皺を作った。
「なぁルディはどう思う?やっぱ金髪はそそられるものがあるよな」
少し鼻の下を伸ばして下品な顔をするビルにルディは嫌悪した。
「は、興味ないね。見目にこだわるなど。人は心だろう」
「つれねー」
ルディは温くなった水を一気に飲み干すと食堂から早々に去った。
観衆のほとんどは年頃の婦女子が多かった、各団長らは「騎士志願者こそが来い」と思っているが叶わない。
「きゃー白騎士様!きょうも麗しいわ」
「当たり前よー、あの方に手を取られたら夢見心地でしょうね」
鳴りやまない女子たちの黄色い声を背に受けて騎士達は模造刀を振り回す。どこか浮ついた感じを見せると上官から叱咤が飛んだ。こんな日常が3年近く続いている。
「おいルー、またお前が美女群を虜にしてんのか。一人占めは許さん少しはわけろ!」
一人の平騎士が白髪の騎士に目掛けて不意打ちをしてきた、しかしなんなく交わした騎士は襲って来た相手の背を肘打ちして倒した。
「打ち方が毎回同じだな、少しは頭を捻ろ」
「ぐぬぅ……かなわねぇな悪かったよ、夕飯驕るからチャラにしてくれ」
「……要らない、寄宿舎の飯が好きだからな違うヤツを誘えよビル」
「ちぇっ……給金日くらいは街へ出ようぜ?息がつまるだろう」
同僚の騎士達が酒場や娼館へ誘うが白騎士ことルディ・テスタードは良い返事をしたことがない。
ビルと呼ばれた騎士はさも詰まらなそうに悄気て藁人形へ向けて撃ちこみを再開する。
ルディはやや小柄だったが剣筋がとても良く、先月行われた模擬戦で好成績を収め近く昇格すると噂があった。
出自は不明だが上官の誰かの隠し子ではないかと囁かれている。
正体は魔王と呼ばれるアダルジーザ総団長の娘なのだが、母方の姓を名乗っていたこともあり誰も気が付かない。
もとから豊満とは言いかねる体躯に、程よく筋肉が付いたルチャーナは何処から見ても青年だった。
どう習得したのか声色まで男そのものだ、「声?そんなもの努力次第でどうとでも」と彼女は言う。
『最初から男児として生を受けていれば』と父親は幾度も愚痴った。
昇格試験を無事クリアしたルディことルチャーナは上等騎士になった。
中等を飛ばした昇進に周囲は驚いた、いよいよ婦女子たちが目の色を変えだしたと騎士達が慄いた。
当人はどうでもいいことだと鼻で笑い飛ばす。
ルディが昇級して暫くしてのことだった。
貴族街近辺に不審者情報が流された、成人の金髪女性ばかりを突け狙う不届き者がいるらしい。
騎士寮内の食堂でもこの噂が良くされていた、都市部の憲兵団から近く応援要請がくるという。
「頃合いも夏だからな、頭が湧いたアフォが出てもおかしくない」
「だが、騎士団は城と王族を護る者だ。なぜ通達がきた?」
「余程の手合いか、またはそれなり身分が高いヤツが犯人なのだろう」
「なるほど、憲兵は平民も多く所属しているからな……身分を笠にされたらたまらん」
「しかし、金髪美女を狙うヤツかよ偏った嗜好の変態かね。」
ザワザワといつになく騒がしい食堂にルディが耳障りだと言って眉間に皺を作った。
「なぁルディはどう思う?やっぱ金髪はそそられるものがあるよな」
少し鼻の下を伸ばして下品な顔をするビルにルディは嫌悪した。
「は、興味ないね。見目にこだわるなど。人は心だろう」
「つれねー」
ルディは温くなった水を一気に飲み干すと食堂から早々に去った。
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