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そこは閑静な住宅街の外れだった、平民が棲む区画だが富裕層が多く暮らす為、衛兵の警邏が頻繁で自警団も設置されており治安も悪くはない。
街角で人を待つビルことサヴィノ王子は、鈍色の空を見上げて初雪が降ってもおかしくないと呟いた。
分厚い雲がすっかり陽を隠していてかなり肌寒い日だ。
待つこと5分、辻馬車から降りた金髪の女性が無愛想な顔で彼に近づいてきた。
「やぁ、ほんとうに来てくれるとは嬉しいよ。勝負はボロ負けだったのに……」
大袈裟にお道化るサヴィノに対し、眉間に深い皺を作った女が彼の脇腹を強めに突いた。かなり不機嫌と見える。
「イテテ……怒らないでくれよ、今日の事は俺のせいじゃないだろう?」
「ふん、そうだな。父上の命がなければ絶対こなかったし、こんな格好もしてこないさ」
騎士服からワンピースドレスに地味目のコートを羽織ったルチャーナはどこから見ても庶民の女性に見える。
護衛も付けず身分を隠してここに来ているのだ、サヴィノに至っては2重に変装していることになる。
道すがら合流した二人は小声で会話する。
「こんな寒空に王子がいるだなんて誰も想像しないだろうな、知れたら卒倒するか暴漢が喜んで身ぐるみを剥ぎにくるだろうよ。隠してる懐刀は宝石付きの彫金が素晴らしい逸品だろう」
「不穏なことを朝から言うなよルー、この辺りは治安が良いはずだ。いつも来ているからな」
「それで、確かにその人物は教会に通っているのか?」
「あぁ、冬となれば暖を求めて集って来る浮浪者が増えるからな炊き出しも頻繁に行われるし車椅子は目立つからな」
「なるほどな」とルチャーナは納得して、これから起こるだろう事に備え、体をボキボキと鳴らす。
一戦交える前のゴロツキの情婦にも見えなくない。金髪のカツラが余計に場末の女を演出している。
「うん、似合っているよ。もうちょっと上品なほうがキミらしくて好きだ」
「ウルサイ、ビルの好みなど知るか!」
「へへへ」
薄くのせた頬紅のせいかツンデレを発揮した女子に見えて、王子はついだらしない顔をしてしまう。
エスコートさせてくれと強請ったが、彼女の肘鉄が油断した腹に突き刺さり「ぐえっ」と情けない声をだす。
調子には乗らせないとルチャーナはきょうも容赦がなかった。
「つれない……もうちょっと優しさが欲しい」
「ふん、寝言をいうな。ほら目的が見えてきたぞ」
羽振りが良いと噂の町商人が建立したという教会兼孤児院が、大きな針葉樹に護られるようにあった。
そこの庭先にシスターが背を丸めて、枯れ葉を掃き集めて白い息を零している。
「おはようシスター、今日も手伝いにきたよ。窓と壁の修繕がまだだったよね」
「あら、ビルおはよう。ずいぶん早いのね。隙間風が辛いから助かるわ!えーとそちらは?」
シスターが斜め後ろに控えていたルチャーナの姿をみつけて質問してきた、王子の貌を隠したビルは同僚が手伝いに来たと簡単に説明した。
「初めまして、ルーと呼んでください。少しですが焼き菓子を持参しました、手先は器用な方なので役に立ちますよ」
当たり障りない挨拶をしたルチャーナに、シスターは目じりに皺を作って笑い歓迎した。
「ようこそ、ルーさん。道中は寒かったでしょう。掃き掃除が終わったら朝食ですの、良ければ熱いスープを召し上がってね」
「ありがとうございます、では手伝いますね」
早速とルチャーナはコートを脱ぎ捨て箒を拝借するとあっという間に庭を片付けた。
その手際の良さにシスターは舌を巻いた、終いには手つかずだった薪までサクサクと割って山にしてしまった。騎士の鍛錬で足腰が強いルチャーナにはまさに朝飯前。
***
「細身のお嬢さんが太い薪をひょいひょい積んじゃうのだもの吃驚したわ!」
「あぁ……えーと力仕事(鍛錬で)は慣れてるので」
「まぁそうなの~、頼もしいわ。ささ、遠慮なくどうぞ野菜ばかりのスープだけれど」
「いただきます」
野菜くずを煮込んだだけという質素な汁だったが、とても優しい味にルチャーナは感動した。
小さく輪切りにした腸詰が良いダシになっている。
「とても美味しい、お腹も心までも満たされるよ」
「そうだろ、シスターはどんな材料も美味しく化けさせちゃうんだぜ」
それから、達磨ストーブを囲んで今日の作業について話し合った、炊き出しは昼過ぎに1回、それから月一度の慈善バザーの下準備のことなど。教会併設の孤児院の子供たちが作るポストカードが収益の要で貢献度が高いと言う。年長組女子は刺繍とパッチワーク製作、男子は木製品などを作る仕事もしていることなど色々話した。
「それらを売った資金で炊き出しができるんだ、とても重要なのさ」
「そうか、寄付ばかりに頼るのではないのだな、子供たちは逞しいな」
「そうだろう?とても利発な子が多いんだ、この院の自慢さ」
まるで自身のことのように自慢して語る王子に、ルチャーナは自然と微笑みを零した。
午前の仕事は施設への食事を運ぶことからはじまり、近隣の農家へ規格外野菜の買い取りへ出向き。精肉店からはガラなど売れ残りが大量に届くのでその運搬、その次は炊き出し用の下拵えに追われる。
「息をつく暇もないな、でも良い労働だ。充実した休日は久しぶりだよ」
「そうか、ルーは施設慰問の経験があるんだろ?少し違うのか?」
ルチャーナは少し考え込み、普段の活動は医療施設が多いので介護補助をしていると言った。
資金と人手が足りないのは孤児院ばかりではない。
「さぁ、間もなく炊き出しだ。外へ大鍋を運ぶぞ、竈の用意はできてるかな?」
時計を見ると12時を少し回っていた、13時には食事を求める人々で列が出来るとビルは言う。
黑く煤けて使い古した煉瓦積み竈は教会の左端の庭に設置してあった。
シスターが火起こしを済ませて待機していた。
「忙しくなるわよ、来る人は各々皿を持参してくるから配る量に気を付けて」
「はい、がんばりますね」
肉屋から提供されたベーコンの切れ端を炒めると香ばしい香りが立ち上る。
街角で人を待つビルことサヴィノ王子は、鈍色の空を見上げて初雪が降ってもおかしくないと呟いた。
分厚い雲がすっかり陽を隠していてかなり肌寒い日だ。
待つこと5分、辻馬車から降りた金髪の女性が無愛想な顔で彼に近づいてきた。
「やぁ、ほんとうに来てくれるとは嬉しいよ。勝負はボロ負けだったのに……」
大袈裟にお道化るサヴィノに対し、眉間に深い皺を作った女が彼の脇腹を強めに突いた。かなり不機嫌と見える。
「イテテ……怒らないでくれよ、今日の事は俺のせいじゃないだろう?」
「ふん、そうだな。父上の命がなければ絶対こなかったし、こんな格好もしてこないさ」
騎士服からワンピースドレスに地味目のコートを羽織ったルチャーナはどこから見ても庶民の女性に見える。
護衛も付けず身分を隠してここに来ているのだ、サヴィノに至っては2重に変装していることになる。
道すがら合流した二人は小声で会話する。
「こんな寒空に王子がいるだなんて誰も想像しないだろうな、知れたら卒倒するか暴漢が喜んで身ぐるみを剥ぎにくるだろうよ。隠してる懐刀は宝石付きの彫金が素晴らしい逸品だろう」
「不穏なことを朝から言うなよルー、この辺りは治安が良いはずだ。いつも来ているからな」
「それで、確かにその人物は教会に通っているのか?」
「あぁ、冬となれば暖を求めて集って来る浮浪者が増えるからな炊き出しも頻繁に行われるし車椅子は目立つからな」
「なるほどな」とルチャーナは納得して、これから起こるだろう事に備え、体をボキボキと鳴らす。
一戦交える前のゴロツキの情婦にも見えなくない。金髪のカツラが余計に場末の女を演出している。
「うん、似合っているよ。もうちょっと上品なほうがキミらしくて好きだ」
「ウルサイ、ビルの好みなど知るか!」
「へへへ」
薄くのせた頬紅のせいかツンデレを発揮した女子に見えて、王子はついだらしない顔をしてしまう。
エスコートさせてくれと強請ったが、彼女の肘鉄が油断した腹に突き刺さり「ぐえっ」と情けない声をだす。
調子には乗らせないとルチャーナはきょうも容赦がなかった。
「つれない……もうちょっと優しさが欲しい」
「ふん、寝言をいうな。ほら目的が見えてきたぞ」
羽振りが良いと噂の町商人が建立したという教会兼孤児院が、大きな針葉樹に護られるようにあった。
そこの庭先にシスターが背を丸めて、枯れ葉を掃き集めて白い息を零している。
「おはようシスター、今日も手伝いにきたよ。窓と壁の修繕がまだだったよね」
「あら、ビルおはよう。ずいぶん早いのね。隙間風が辛いから助かるわ!えーとそちらは?」
シスターが斜め後ろに控えていたルチャーナの姿をみつけて質問してきた、王子の貌を隠したビルは同僚が手伝いに来たと簡単に説明した。
「初めまして、ルーと呼んでください。少しですが焼き菓子を持参しました、手先は器用な方なので役に立ちますよ」
当たり障りない挨拶をしたルチャーナに、シスターは目じりに皺を作って笑い歓迎した。
「ようこそ、ルーさん。道中は寒かったでしょう。掃き掃除が終わったら朝食ですの、良ければ熱いスープを召し上がってね」
「ありがとうございます、では手伝いますね」
早速とルチャーナはコートを脱ぎ捨て箒を拝借するとあっという間に庭を片付けた。
その手際の良さにシスターは舌を巻いた、終いには手つかずだった薪までサクサクと割って山にしてしまった。騎士の鍛錬で足腰が強いルチャーナにはまさに朝飯前。
***
「細身のお嬢さんが太い薪をひょいひょい積んじゃうのだもの吃驚したわ!」
「あぁ……えーと力仕事(鍛錬で)は慣れてるので」
「まぁそうなの~、頼もしいわ。ささ、遠慮なくどうぞ野菜ばかりのスープだけれど」
「いただきます」
野菜くずを煮込んだだけという質素な汁だったが、とても優しい味にルチャーナは感動した。
小さく輪切りにした腸詰が良いダシになっている。
「とても美味しい、お腹も心までも満たされるよ」
「そうだろ、シスターはどんな材料も美味しく化けさせちゃうんだぜ」
それから、達磨ストーブを囲んで今日の作業について話し合った、炊き出しは昼過ぎに1回、それから月一度の慈善バザーの下準備のことなど。教会併設の孤児院の子供たちが作るポストカードが収益の要で貢献度が高いと言う。年長組女子は刺繍とパッチワーク製作、男子は木製品などを作る仕事もしていることなど色々話した。
「それらを売った資金で炊き出しができるんだ、とても重要なのさ」
「そうか、寄付ばかりに頼るのではないのだな、子供たちは逞しいな」
「そうだろう?とても利発な子が多いんだ、この院の自慢さ」
まるで自身のことのように自慢して語る王子に、ルチャーナは自然と微笑みを零した。
午前の仕事は施設への食事を運ぶことからはじまり、近隣の農家へ規格外野菜の買い取りへ出向き。精肉店からはガラなど売れ残りが大量に届くのでその運搬、その次は炊き出し用の下拵えに追われる。
「息をつく暇もないな、でも良い労働だ。充実した休日は久しぶりだよ」
「そうか、ルーは施設慰問の経験があるんだろ?少し違うのか?」
ルチャーナは少し考え込み、普段の活動は医療施設が多いので介護補助をしていると言った。
資金と人手が足りないのは孤児院ばかりではない。
「さぁ、間もなく炊き出しだ。外へ大鍋を運ぶぞ、竈の用意はできてるかな?」
時計を見ると12時を少し回っていた、13時には食事を求める人々で列が出来るとビルは言う。
黑く煤けて使い古した煉瓦積み竈は教会の左端の庭に設置してあった。
シスターが火起こしを済ませて待機していた。
「忙しくなるわよ、来る人は各々皿を持参してくるから配る量に気を付けて」
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