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新天地篇
穢れし城跡
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風の精霊シルフィードと別れ、仲間の元へ戻ったのは数分後のことだった。
飛行して帰る余裕がボクにはなかったからだ、アリエラは渋ったが途中で転移することを了承してくれた。
急いても仕方ないことなんだけどね。
「ごめんアリエラ、空の旅は落ち着いてからまた今度ね?」
「うむ、心情を慮れば仕方なしぞ。気にするな」
アリエラは大きな身体でボクに擦り寄った、モフモフとはほど遠いが嬉しい。
そうだ鬣を整えてあげなきゃね。
仲間と合流したボクは彼の毛を梳きながら会議した。シルの直接の協力は得られなかったが、アリエラが浄化の手助けをしてくれることを伝えると皆は安堵の顔をした。
「銀の結晶石を授かったよ、これがあればだいぶ作業は楽になるはずだ。代替えなんて最悪な事態にはならないさ」
「見事な銀色ですね、まさか精霊の血を賜るとは……」
マホガニーはもちろん、一同はその神々しい石に釘付けになっている。
「……わたしは少し怖いです、人間の身では近寄りがたい物質です」
ずっと口数が少なくなっていたメイペルが恐れ多いと委縮して退いた。
ちょっと迂闊だった、ゴメン。
「か弱い人間というとを失念してた、悪いね」
「いいえ、同行を望んだのは私の我儘ですから!」
今後を考えれば、彼女とはここらで距離をおくべきタイミングだと思うんだが。
穢れた地から離れるよう促したが彼女は頑なに拒否した。
うん、頑固だなぁ。
「メイペル、キミは唯一仲間と認めた人間だ。命を落とす危険が迫ったら有無言わさず退去させるからね?」
「は、はい。わかりました!微弱ですがお仕事頑張ります!」
取り合えず彼女は逗留地の護り手としていて貰おう。
「やっぱり大気だけ瘴気祓いしても意味はない、身が穢れてしまったゲノーモスの救助が先決になる。キャンプを張ったこの場所と班分けしようと思う。組み分けには異論を認めない」
ボクの言葉に皆は渋面になった、待機組に選ばれたくないんだろう。
ゲノーモスが封印された地下へ潜入すればサラマンデルがやってくる危険がある。
まぁどこへいても危険は孕むのだけどね。
潜入班はボクはもちろん、マホガニー、アクティ、エリマ。
待機班はラミン、グルド、メイペル。そしてアリエラ。
アリエラが一番不満そうだったけど地上と大気に漂う瘴気を祓って貰わないとボクらは潜入できないから。
「ごめんアリエラ、損な役回りだけど」
「……ふぬ、仕方ないから受けてやろう。シルフィード様と約束したからな!」
「ラミン、グルドを頼むよ。起きたらクルミをあげてね」
「了解ですぅ!留守はお任せください!いつ帰っても良いように美味しいご飯作ってますねー!」
こんな時だ、少し間延びした彼女の言葉が和むなぁ。
***
合流した翌朝早く、ボク達潜入班はアリエラの風魔法で瘴気が一時祓われた大地を進む。
王城跡は地の中央だ、時間はあまりない急ごう!
「坊ちゃん、風による清浄時間はどれほどですか?」
「ん?無害な時間は5分が限界らしい、それほどに濃い瘴気なんだろうね」
「たった5分すか!うひゃー怖いっすね」
「おいおい、一応は結界を張って移動してんの!ビビらず頑張れよアクティ!」
「ひゃーい!」
デカイ図体のアクティが身震いして進んでいる、悪いね。転移しても良いけど根腐りの危険があるから。
ドスドスと大地を駆るアクティは冷や汗を飛び散らせている。
マホガニーはボクを抱えて颯爽と走る、自分で走れると抗議したが却下しやがった。
『主を穢れた地に着かせるわけにいきません』だとさ……。
エリマはというとマイペースで走っている、こんな時は常に冷静沈着な彼女は頼もしいな。
母メリアーデと言い、ドリアード族の女型は胆力が強い傾向があるのだろうか?
ボクも頑張らなければ!
城跡に近くなるほどに空気がピリピリと肌を刺激してくる、漏れ出る高濃度の瘴気のせいだろう。
空気に漂う赤紫の靄がどんどん暗褐色へ変化していた。
限界の5分が切れたのだろう。
「うぅ、目に染みるな。結界を強化しよう」
「大丈夫ですか?坊ちゃん」
マホガニーの抱く腕に力が強まった、過保護が悪化してる。
落ち着け!ボクは成長してる、先代から継いだドリアードの術は体得してるぞ。
実演してないから知らないだろうけどね。
「ボクよりアクティを心配してやれ、アクティ!回復薬を頭から浴びろ!」
「ひゃひゃーいっす!」
道中見た元国土の様子は悲惨を通り過ぎていた。土はもちろんだが草木一本なく、沼は枯れて河川は異臭放つ毒水になっていた。これでは生物など存在するわけもない。
所々小さな塊が見えた、家屋の成れの果てと思う。赤黒い石垣が半壊して転がっていた。
遠目にかつての生家を眺めたが残骸さえ見当たらなかった。
少し感傷的になってしまう。
「民はどこへ逃れたのでしょうね」
エリマがポツリと呟く、だがどうでも良いとボクは聞き流す。
焦土より質が悪いこの地は、以前の豊かさを取り戻すことはドリアードの力をもってしても骨が折れることだろう。
時々、墓標らしいのが点在してたが哀れみの感情はでなかった。
「なぁ、ボクは薄情だと思うかい?」
「坊ちゃんが薄情だ非情だと罵られる謂れはございません、回顧しているだけで慈悲深いですよ」
マホガニーは無表情でそう答えた。
走りまくって小1時間、ボクたちは城跡に漸く着いた。
飛行して帰る余裕がボクにはなかったからだ、アリエラは渋ったが途中で転移することを了承してくれた。
急いても仕方ないことなんだけどね。
「ごめんアリエラ、空の旅は落ち着いてからまた今度ね?」
「うむ、心情を慮れば仕方なしぞ。気にするな」
アリエラは大きな身体でボクに擦り寄った、モフモフとはほど遠いが嬉しい。
そうだ鬣を整えてあげなきゃね。
仲間と合流したボクは彼の毛を梳きながら会議した。シルの直接の協力は得られなかったが、アリエラが浄化の手助けをしてくれることを伝えると皆は安堵の顔をした。
「銀の結晶石を授かったよ、これがあればだいぶ作業は楽になるはずだ。代替えなんて最悪な事態にはならないさ」
「見事な銀色ですね、まさか精霊の血を賜るとは……」
マホガニーはもちろん、一同はその神々しい石に釘付けになっている。
「……わたしは少し怖いです、人間の身では近寄りがたい物質です」
ずっと口数が少なくなっていたメイペルが恐れ多いと委縮して退いた。
ちょっと迂闊だった、ゴメン。
「か弱い人間というとを失念してた、悪いね」
「いいえ、同行を望んだのは私の我儘ですから!」
今後を考えれば、彼女とはここらで距離をおくべきタイミングだと思うんだが。
穢れた地から離れるよう促したが彼女は頑なに拒否した。
うん、頑固だなぁ。
「メイペル、キミは唯一仲間と認めた人間だ。命を落とす危険が迫ったら有無言わさず退去させるからね?」
「は、はい。わかりました!微弱ですがお仕事頑張ります!」
取り合えず彼女は逗留地の護り手としていて貰おう。
「やっぱり大気だけ瘴気祓いしても意味はない、身が穢れてしまったゲノーモスの救助が先決になる。キャンプを張ったこの場所と班分けしようと思う。組み分けには異論を認めない」
ボクの言葉に皆は渋面になった、待機組に選ばれたくないんだろう。
ゲノーモスが封印された地下へ潜入すればサラマンデルがやってくる危険がある。
まぁどこへいても危険は孕むのだけどね。
潜入班はボクはもちろん、マホガニー、アクティ、エリマ。
待機班はラミン、グルド、メイペル。そしてアリエラ。
アリエラが一番不満そうだったけど地上と大気に漂う瘴気を祓って貰わないとボクらは潜入できないから。
「ごめんアリエラ、損な役回りだけど」
「……ふぬ、仕方ないから受けてやろう。シルフィード様と約束したからな!」
「ラミン、グルドを頼むよ。起きたらクルミをあげてね」
「了解ですぅ!留守はお任せください!いつ帰っても良いように美味しいご飯作ってますねー!」
こんな時だ、少し間延びした彼女の言葉が和むなぁ。
***
合流した翌朝早く、ボク達潜入班はアリエラの風魔法で瘴気が一時祓われた大地を進む。
王城跡は地の中央だ、時間はあまりない急ごう!
「坊ちゃん、風による清浄時間はどれほどですか?」
「ん?無害な時間は5分が限界らしい、それほどに濃い瘴気なんだろうね」
「たった5分すか!うひゃー怖いっすね」
「おいおい、一応は結界を張って移動してんの!ビビらず頑張れよアクティ!」
「ひゃーい!」
デカイ図体のアクティが身震いして進んでいる、悪いね。転移しても良いけど根腐りの危険があるから。
ドスドスと大地を駆るアクティは冷や汗を飛び散らせている。
マホガニーはボクを抱えて颯爽と走る、自分で走れると抗議したが却下しやがった。
『主を穢れた地に着かせるわけにいきません』だとさ……。
エリマはというとマイペースで走っている、こんな時は常に冷静沈着な彼女は頼もしいな。
母メリアーデと言い、ドリアード族の女型は胆力が強い傾向があるのだろうか?
ボクも頑張らなければ!
城跡に近くなるほどに空気がピリピリと肌を刺激してくる、漏れ出る高濃度の瘴気のせいだろう。
空気に漂う赤紫の靄がどんどん暗褐色へ変化していた。
限界の5分が切れたのだろう。
「うぅ、目に染みるな。結界を強化しよう」
「大丈夫ですか?坊ちゃん」
マホガニーの抱く腕に力が強まった、過保護が悪化してる。
落ち着け!ボクは成長してる、先代から継いだドリアードの術は体得してるぞ。
実演してないから知らないだろうけどね。
「ボクよりアクティを心配してやれ、アクティ!回復薬を頭から浴びろ!」
「ひゃひゃーいっす!」
道中見た元国土の様子は悲惨を通り過ぎていた。土はもちろんだが草木一本なく、沼は枯れて河川は異臭放つ毒水になっていた。これでは生物など存在するわけもない。
所々小さな塊が見えた、家屋の成れの果てと思う。赤黒い石垣が半壊して転がっていた。
遠目にかつての生家を眺めたが残骸さえ見当たらなかった。
少し感傷的になってしまう。
「民はどこへ逃れたのでしょうね」
エリマがポツリと呟く、だがどうでも良いとボクは聞き流す。
焦土より質が悪いこの地は、以前の豊かさを取り戻すことはドリアードの力をもってしても骨が折れることだろう。
時々、墓標らしいのが点在してたが哀れみの感情はでなかった。
「なぁ、ボクは薄情だと思うかい?」
「坊ちゃんが薄情だ非情だと罵られる謂れはございません、回顧しているだけで慈悲深いですよ」
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走りまくって小1時間、ボクたちは城跡に漸く着いた。
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