完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)

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「お待ちください、ベンラント様。午後は私と政務処理を学ぶ予定でしょう?」
レイシア・オズワルトは渋面になりながらそう諌言する、サボリの常習犯であるベンラント王太子を追いかけて行く。
「ええい!喧しいわ、俺様に指図するな!」
「まあ、なんてこと、遊び呆けるばかりですのね」

ベンラントは意に介さず鼻を鳴らしてその場を立ち去る、その横に侍るのは愛人のポリアーナ・アビントン子爵令嬢である。彼女はほくそ笑むと「そんなにピリピリしては美容に毒よ」と笑った。

「はぁ、挙式まで一か月だというのに何を考えているのか」
王太子に任命されて以降、このような暴挙ばかり続いている。サボる理由も捻り尽くしたレイシアは肩を竦める。




「まあまあ!またサボっていいるのあの子は!レイシア、貴女がしっかり見ていないから」
王妃の御小言は正妃候補のレイシアに向けられる、とんだ理不尽だが彼女はニッコリ笑うとこう切り返した。

「私は言う事はいってあります、別に私は構わないんですよ?誰が王太子になろうがねフフフッ」
「ぐぅ……貴女……妃の座を」
悔しそうに歯噛みする王妃だったが、端から妃などなりたくないレイシアは涼しい顔だ。”どうぞ、他に候補を見つけてください”と言わんばかりに侮蔑の視線を送った。


***


『貴様とは婚約破棄だ!』
何度言ったかわからない虚しい台詞を、腹の中で反芻するベンラント王子は王妃に良く似た顔を歪めていた。

「忌々しいぞレイシア!くそっ!どうしてくれようか」
苦々しくそう呟く王子の横でフワフワした表情で「これ、美味しい」と呑気に言うポリアーナは夢見るようにウットリしていた。

「なぁ、ポリアーナ。キミを側妃に出来たならどんなに良いか」
「うん?そうねぇ、それには法律から見直さないといけないんでしょう?私詳しい事はわかんなぁい」
彼女はそう言うと葡萄をパクリと口に含んでベンラントに口づける。

甘い香気とともにやってくる、蕩けるような刺激が彼の思考を麻痺させた。






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