完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)

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いつものように「お前なんか婚約破棄だ!」と言ってくるベンラント・ボリスベル王太子にレイシア・オズワルト公爵令嬢は苦々しい顔をして「ご自分の我儘で通ることではありません」とソッポを向く。
挨拶のように婚約破棄だと言ってくる王太子に嫌気がさしている、出来るものならばさっさと同意したいと思っているのだ。

そもそもな話、この婚約は王族が言い出した事だ。そのことを指摘しても「お前が妃に固執しているからだ」と言って話にならない。

「いいか、お前が正妃になりたいからといい加減なことを言うな!すべてわかっているんだぞ!」
「へぇ……何をでしょう?」
押し問答が面倒になったレイシアは聞き流すことにした、刺繍を刺す手を休めることなく『早くどっかへ行って』と思っていた。

「お前は俺様に惚れているんだろう!だがな残念なことに俺様の好みではないのだ!俺の好みはポリアーナのような儚げな美少女なのだ!」
「そうですか、では年が入って”美少女”ではなくなったらどうするんです?」
「そ、それは……ええい!先の事など知らん!彼女は慎ましいからな、ずっと美少女であるに違いないのだ!」
「はあ」

頭が悪い王子の発言に呆れる彼女は『勝手に言ってろ』と刺繍をやめてサロンを後にすることにした。

「貴様!何処に行く!まだ話は終わってないのだ!」
「……いいですか殿下、私達の結婚は好き嫌いで成り立つものではないんですよ。家柄、血統そして政治絡みであるのです。いい加減学んでください」

そう言い放つレイシアに対して「そんなものは出鱈目だ、お前の言い訳なんだ」とシツコイ。無い頭に正論をぶつけても返ってくるのはいつもお花畑な返事だった。

「話になりません、失礼」

尚もギャーギャーと喚く王子にウンザリするレイシアは聞こえない振りをして去るしかない。
「ほんと法律を変えてくれないかしら、側室を作る事を許してくれたら少しはマシになると思うのだけど」

そしてふいに立ち止まり「そうだわ、それが良いわ」とレイシアはニンマリと微笑む、世継ぎ問題を抱えているのならばそのようにすれば良いと考えた。側妃に迎えたポリアーナに不妊手術を行えば良いのだと。しかし、そうなると顔だけ王子と同衾するのは自分なのだとわかった彼女は蒼くなる。

「あんな空っぽの虚けの子供を設けるなんて恐ろしい!絶対に嫌だわ!」
近頃、同衾の作法を教えて貰ったばかりの彼女は「うえぇええ!」とえずくのだった。

「さ、最悪だわ!どうしましょう?気持ち悪い!」








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