完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)

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4,5日後、呪いを受けて眠り続けていたベンラントは漸く目えを覚ました。
全てを詳らかに説明を受けた彼は信じ難いと最初は拒み続ける、だが何か思い当たる節があったのか最後にはガクリと肩を落として「母上、貴女は愚かだ……」と一言いうと大人しく王太子を辞したのである。

「薄々と何かが可笑しいと感じていた、母は俺を溺愛していて弟を蔑ろにしてきた。それは俺が嫡男だから甘やかしていたのだと思っていた……本当は違ったのだな」
ボソボソとそんな事をいう彼はポリアーナの事をいの一番に心配していて「彼女は俺の買った別荘にいる、すぐに会いに行かねば」と叫んだ。

「兄上、落ち着いて、彼女ならば保護されているよ。貴方の帰りが遅いと城の近辺を従者とウロウロ探っていたところを確保したんだ」
「あぁ……そうか、良かった……腹の子は無事なのかい!?」
「うん、心配しないで母子ともども元気だよ」

そう言われたベンラントはホッしたのか崩れるように眠った、まだ呪いの効果の名残りがあるのか時々こうしていきなり眠ってしまう。




「彼の愛は本物らしい、心から彼女を愛しているよ。譫言で何度もポリアーナと呟いている」
エイルナー殿下は微笑みながら紅茶を嚥下した、まだ正式ではないが王太子として勉強している最中だ。

「それにしてもこの貴族名鑑は面倒だ、似たような名があって困るよ」
「ふふ、頑張って下さいな未来の王よ」
レイシア・オズワルトは傍らで刺繍を刺しながら、その勉学の様子を伺っていた。いまは締約国の重鎮らの名前と絵姿をにらめっこしている。

「私はダメだなぁ、いかに諸外国から目を背けてきたのがわかる。特産品さえうろ覚えだよ」
「大丈夫ですわ、比較して申し訳ないけれどベンラント様は覚える気が無かったのです、少しづつゆっくりと覚えたら良いのよ」
クスクスと笑いながらそんな軽口を言う彼女のことをチラ見して、エイルナーは王子妃となった事を後悔していないのかと気が気ではない。

「あのレイシア……うやむやの内に私と結婚したのだけれど、その後悔とかないの?」
「え?あぁ、そういえばそうですね」
刺繍を刺す手を止めて考え込むレイシアである、思えばバタバタとした結婚式だったと今更ながら思い浮かべた。急に真剣になった彼女の表情を見てエイルナーはソワソワとして落ち着かない。

「ん?どうかしまして?」
「いや、そのなんというか……キミは私を愛していないから心配でね」
「あらまぁ……」

やや蒼い顔で力なく笑うエイルナーの顔を見た彼女は「ぷっ」と噴き出してしまう。
「嫌だわエイルナー様、そうね今は愛はないかもしれない、でも少しづつ歩み寄るつもりですよ。この名鑑を覚えるようにね、すべて覚えた頃には愛は生まれてるはずです」
「レイシア!それじゃあ!」

忽ち満面の笑顔になったエイルナーは「誰よりも愛しているよ!」と叫ぶのだった。



***


それから数カ月後のことだった。
やっと落ち着いたというタイミングでベンラントは王太子を辞したと告白する。

「まぁ酷い!あんまりですわぁ、大切な事を教えてくださらないなんてぇ」
ベンラントが王太子でなくなったと告白した直後のポリアーナ・アビントンの反応である、ワナワナと震えて怒り心頭という有様である。

「そ、そうだよね……がっかりさせたよね。ごめんよポリアーナ、キミを国母にしてあげられなくて」
悄気るベンラントはそう言うと「だけど信じて欲しい、誰よりも愛している」といった。するとポリアーナは憤慨してこう述べた。

「私が寵愛を受けたいのは貴方の身分ではありません!見縊らないで!ただのベンラント様本人ですのよぉ!」
「え……?王太子の俺じゃなくていいの?」
「もう!どうしようもない人ねぇ!」

コツンと軽く頭を叩いて彼女はベンラントに抱き着いた。
「愛しいベン、私を愛してるのでしょう。違う?」
「ああ、もちろんだとも!」







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みんなの感想(1件)

猫侍
2025.02.10 猫侍

王妃へのざまぁが見たかったです
呪いが返れば良かったのに

解除

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