完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?

音爽(ネソウ)

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担がれた男

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一刀両断されたオーガキングが地を揺るがすような大音を立てて倒れた。
町への入口の一つである門の前に現れた魔物を相手にして次々屠った剣士は汚れた剣を一振りして化物たちの血を拭う。
端から見ればとても凛々しい姿ではあるが、傍らで見ていた相棒の魔法使いは「ダサッ」と辛辣な言葉を言った。毎度大袈裟に格好つけるものだから寒々しいと思っていたのだ。

大門の陰から見守っていたらしい民衆や兵達が歓声を上げて剣士を称える。
気を良くした剣士アルベルは手を振って応える、だが魔法使いで恋人のポーラは退治して当たり前のことと思っているので大きなリアクションを見せない。
「依頼されて倒したのだからね、お金の為に」
「そういうなよ、これも良い余興なんだよ。楽しそうにしてるだろ?」
「ふん、デレデレしちゃって」

彼はギャラリーがいる場面ではいつもこうだ、特に若い女性が屯する所ばかりへ愛想を振り撒いてヘラヘラしていた。そんな彼を見て「潮時かな」と小さく呟くポーラである。


「いやいやお見事でしたな勇者殿!噂に違わぬ猛々しさと強さ感服しましたぞ」
「勇者?俺が?」
「もちろんですとも、その素晴らしい剣技と強さは正しく勇者です」
いくつかの町村を統べる領主が屋敷へ招いて彼を持て成したいと現れて、食堂で乾杯の音頭をとる。ちなみに相棒の魔法使いは招かれていなかった。

良くも悪くも目立つ剣士のアルベルは何かと優遇されがちなのだ。
「まあね!俺一人で十分なのだが、恋人が同行したがるものでさ!困ったものだよ」
「それはそれは、足手纏いというヤツですかな?」
領主はゴマをするようにアルベルの矜持を刺激してくる、彼女はサポートに徹しているが実力は本物で魔法攻撃を本気でしかければ剣士など目ではない。

だがアルベルの残念な頭は彼女の魔法の力をいつの間にか忘却していたのである。
「あぁ、近頃はそういう事が目立ってきたな。そろそろ相棒交代の時期かもしれん」
したたか酔ったらしい彼は豪語して、恋人をこき下ろす。
実際は剣筋が大振り過ぎる彼の事を魔法を駆使して助けていたのだが、まったく気が付いていないのだ。

「なるほどご苦労されてますなぁ。どうでしょう、うちの娘は治癒に特化した魔法使いなのですが」
「へぇ治癒が使えるのか?それはいいな頼もしいじゃないか」
彼は新しい相棒として向かるのも悪くないと考えた。
後日、紹介された領主の娘は年若く愛らしい顔をしていた、気に入った彼は腹を決めて6年連れだった恋人にして相棒を捨てることにした。

「よろしくね勇者様!きっとお役に立ちますわ」
「ああ宜しくたのむ」

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