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決別した魔法使い
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「そういうわけだ、俺達はこの町でお別れしよう。高みを目指す為にも新しい力が必要なんだ。すまないな」
「へえ、全然すまなそうに見えないけど?まぁ良いわ、バイバイ」
ゴネるかと思っていた彼女がアッサリ身を引いたので、アルベルは少し気に入らない顔する。自惚れていた彼は泣いて縋る無様なポーラを新しい彼女と小馬鹿にするつもりだったのだ。
「けっ!そういう可愛気がないのも別れる原因なんだよ!泣きついてきても相手しねぇからな!」
「するわけないでしょ?精々死なない様にね、最近の貴方は体力が落ちてるから」
「へ?ま、負け惜しみを」
去り際のポーラの言葉にギクリとしたが、そんなはずはないと頭を振って否定した。共に二十台中盤になり眠っただけでは疲れが取れにくくなっていたことに気づいていたが「たまたま」だとアルベルは思い込む。
町に長居する用もないので、ポーラはさっさと旅支度をして王都のギルドへ戻ることにした。
一人旅は久しぶりのことで少々不安もあったが、アフォに成り下がった元恋人に足を引っ張られるよりは万倍マシと思うのだ。
***
一方、町に留まり新たな相棒を得たアルベルは鼻の下を伸ばして調子づいていた。
「まだ17歳なんだって?やっぱり若い子はいいな!しかも可愛い」
「あらまぁお上手ね!うふふ、仲良くこの領地を護って生きましょう」
「ああ、もちろんだとも!」
黒髪が美しくどこかエキゾチックな魅力を持つ領主の娘に彼は骨抜きにされつつあった。
この辺りで幅を利かせていたオーガキングを倒したとあって、アルベルも領民たちもすっかり気を抜いて呑気に暮らしはじめた。小者のモンスターはちょろちょろ出てはいたが、弱いものばかりだったので油断する。
「コボルトがちらちら出ているそうだな」
「ええ、でもたかが弱い魔物でしょ。出だしの冒険者でも楽勝な相手だわ」
すっかり平和ボケの彼らは昼間から酒を煽り、女といちゃつくことが増えていた。
領主に勇者と称えられたアルベルの偉業を目の当たりにしていた領民は、咎めるわけもいかず見て見ぬふりをした。
意見して睨まれるほうが面倒だからである。
魔法使いのポーラが去ってしばらくしての事。
アルベルは身体に異変を感じ始めていた、これまで小枝の如く振りまわしていた鋼の剣がずっしりと腰に重い気がした。鍛錬を怠っていたせいだと少しばかり反省した彼は渋々と剣を振ることにする。
だがどうしたことか、振り上げるどころか持ち上げることもままならない。
腰を低く落とし踏ん張って構えようとしても鞘から抜いた剣が地面から上がる様子がない。
「な、なんでだ!?急にどうしたというんだ!」
つい数日前にはオーガキングを一振りで成敗したほどの力がさっぱり発動しないのだ。
そして、彼は漸く元恋人から贈られた腕輪が消えていたことに気が付く。
『これはアナタを護る装具よ、付けていれば無敵同然なの。肌身離さず付けていてね』
かつて旅に出た最初の頃にポーラが言った言葉を思い出す。
「ま、まさか……彼女が俺の、俺の力を底上げしていたのか、ただのお呪いだとばかり……」
いつも左腕に装備していた腕輪の消失に、アルベルはやっと重大なことを思い出したのだ。
「へえ、全然すまなそうに見えないけど?まぁ良いわ、バイバイ」
ゴネるかと思っていた彼女がアッサリ身を引いたので、アルベルは少し気に入らない顔する。自惚れていた彼は泣いて縋る無様なポーラを新しい彼女と小馬鹿にするつもりだったのだ。
「けっ!そういう可愛気がないのも別れる原因なんだよ!泣きついてきても相手しねぇからな!」
「するわけないでしょ?精々死なない様にね、最近の貴方は体力が落ちてるから」
「へ?ま、負け惜しみを」
去り際のポーラの言葉にギクリとしたが、そんなはずはないと頭を振って否定した。共に二十台中盤になり眠っただけでは疲れが取れにくくなっていたことに気づいていたが「たまたま」だとアルベルは思い込む。
町に長居する用もないので、ポーラはさっさと旅支度をして王都のギルドへ戻ることにした。
一人旅は久しぶりのことで少々不安もあったが、アフォに成り下がった元恋人に足を引っ張られるよりは万倍マシと思うのだ。
***
一方、町に留まり新たな相棒を得たアルベルは鼻の下を伸ばして調子づいていた。
「まだ17歳なんだって?やっぱり若い子はいいな!しかも可愛い」
「あらまぁお上手ね!うふふ、仲良くこの領地を護って生きましょう」
「ああ、もちろんだとも!」
黒髪が美しくどこかエキゾチックな魅力を持つ領主の娘に彼は骨抜きにされつつあった。
この辺りで幅を利かせていたオーガキングを倒したとあって、アルベルも領民たちもすっかり気を抜いて呑気に暮らしはじめた。小者のモンスターはちょろちょろ出てはいたが、弱いものばかりだったので油断する。
「コボルトがちらちら出ているそうだな」
「ええ、でもたかが弱い魔物でしょ。出だしの冒険者でも楽勝な相手だわ」
すっかり平和ボケの彼らは昼間から酒を煽り、女といちゃつくことが増えていた。
領主に勇者と称えられたアルベルの偉業を目の当たりにしていた領民は、咎めるわけもいかず見て見ぬふりをした。
意見して睨まれるほうが面倒だからである。
魔法使いのポーラが去ってしばらくしての事。
アルベルは身体に異変を感じ始めていた、これまで小枝の如く振りまわしていた鋼の剣がずっしりと腰に重い気がした。鍛錬を怠っていたせいだと少しばかり反省した彼は渋々と剣を振ることにする。
だがどうしたことか、振り上げるどころか持ち上げることもままならない。
腰を低く落とし踏ん張って構えようとしても鞘から抜いた剣が地面から上がる様子がない。
「な、なんでだ!?急にどうしたというんだ!」
つい数日前にはオーガキングを一振りで成敗したほどの力がさっぱり発動しないのだ。
そして、彼は漸く元恋人から贈られた腕輪が消えていたことに気が付く。
『これはアナタを護る装具よ、付けていれば無敵同然なの。肌身離さず付けていてね』
かつて旅に出た最初の頃にポーラが言った言葉を思い出す。
「ま、まさか……彼女が俺の、俺の力を底上げしていたのか、ただのお呪いだとばかり……」
いつも左腕に装備していた腕輪の消失に、アルベルはやっと重大なことを思い出したのだ。
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