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新たな出会い
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帰路の途中でポーラは今後の事を色々考えた。
18歳から冒険者として暮らして約7年目だ、身の振り方を悩む年齢になっていた。
自身も体力は落ちて来たと自覚があったし、装具師の仕事もやってみたかったと思うのだ。
そもそも冒険者になったきっかけは、元恋人アルベルにしつこく勧誘されたせいだ。
彫金が好きだった彼女は職人を目指していたのである。魔力も高いポーラは選択肢が多かった。
何より器用さを発揮して、装飾品に魔力を込めてバフ効果を付与するのが得意なのだ。
「特技を生かせる仕事も悪くないよね、この年で弟子入りは難しいから一人で始めることになるけど」
小さな店を持つ程度の資金も貯まっているので、一考する価値はあるとポーラは思う。
しかし、それでも迷う気持ちが沸き上がるのも無視できない。
一人悩みながら街道を歩き、いよいよ王都手前の街へ辿り着いた。
そこそこ大きな町でもあるので、しばらくそこに滞在も悪くはないと彼女は考えた。
活気あふれる街の中心を歩き、露店などを見て回る。串焼きと果実水を買い広場のベンチに腰を下ろす。
炙った肉を頬張ってその肉汁を楽しんでいると、大道芸人らしい二人組が現れてパフォーマンスを始めた。
興味を持ったポーラは彼らの技を観察する、身軽に動き回る小柄な少女と剣舞で魅せる青年の姿に傍観客が増えていく。
技を決める度に大きな喝采を浴びて彼らはにこやかに手を振る。遠目に見ていたポーラも自然に拍手を送る。
「面白い物を観たわ、チップはどこに入れるのかしら」
手荷物を片付けて芸人たちに近づく、人だかりの隙間から円柱の箱が設置されているのが見えた、皆はそこへ金を投げ入れている。彼女もそれに倣い投げ入れた。
最後の大技を披露するとパフォーマンスは終了した。
観衆は最後に大きな拍手を二人へ送り、広場はもとの静けさを取り戻す。
大道芸を堪能したポーラは今日の宿探しを始めることにする、赤茶壁の落ち着いた雰囲気の宿をみつけ早速部屋を確保しようとドアを開く。
「一人部屋を一晩お願いします」
「はい、空いてますよ。夕飯はつけますか?」
「お願いします」
彼女は銀貨を2枚支払い、二階の宿泊部屋へ上って行く。指定された真ん中の小さな部屋へ入ると寝具にダイブして体を伸ばした。
「はぁ~落ち着くぅ、ベッドで寝るのはいつぶりかな」
ここまでの道中はずっと野宿だった彼女は安堵の笑みを浮かべて、脚を覆うブーツをはしたなく脱ぎ捨てる。
足を濯ぐのも面倒でそのまま惰眠を貪ることにした。
暫くして階下から響く賑わいに目を覚ました。
とっぷり陽が落ちたらしく窓の外は真っ暗だった、腹も空いたので夕飯を摂りに彼女は身支度する。
全身に浄化魔法をかけると部屋を出て階段をゆっくり下りた。1階の食堂にはミルクシチューの良い匂いが漂っている。
宿の店員に声を掛けてテーブルを案内される、窓際の席に落ち着くとレモンを落としたお冷を飲んだ。
なんとなく視線を食堂全体に巡らすとどこかで見た顔があった。
「あ、さっきの大道芸人さん」
偶然にも同じ宿だったらしい、彼らは少し大きめのテーブルで手先だけで出来るパフォーマンスを披露して酔っ払いたちを楽しませていた。
彼女もついそれに見入り、青年が手の平で弄んでいたコインが瞬時に消える手品というものに感心した。
思わず拍手しそうになったが、そういう場ではないと慌ててひっこめた。
空腹を訴える腹の音が鳴った時だった、少女の悲鳴が上がる。驚いてそちらを見れば泥酔したらしい男に絡まれている所だった。
ちょうど連れの青年が席を外したところを狙われたようだ、気の毒に思った彼女は少女を助けることにした。
「なぁもっと面白いものを見せてくれよ、例えばその谷間の奥とかさ、御駄賃弾むぜ?」
「いやだったら!手を離して!」
下品な男はニタニタと笑い少女の身体に触れようとしていた、身を捩り抵抗する少女は涙目である。
その下劣な行為に腹を立てた魔法使いポーラは酔っ払いに氷魔法を放ってカチコチにしてやった。
酔っ払いは首から下が銅像のように固まって失神した。
「大丈夫貴女、お連れの方は?」
「あ、ありがとう!兄さんは外のトイレだと思うの」
細かく震えていた少女はポーラにお礼を述べて、少しばかりベソを掻く。心配になったポーラは兄とやらが戻るまで傍にいることにする。
「落ち着いてもう平気だから、ね?」
「うん、私はネッテよ。お姉さんの名前は?」
「ポーラよ、見ての通り魔法使いで冒険者をやっているわ」
魔法使いポーラを見上げて少女はキラキした目を向けて「私達も冒険者なんだよ」と説明する。
大道芸はただの小遣い稼ぎなのだと少女は言う、そして話が盛り上がった頃に兄らしい連れが戻ってきた。
「もー遅い!何してたのよ兄さん!」
「悪い、酔い醒ましも兼ねて夜風に当たってたんだ」
少女ネッテは不在中に起きた事を粗方に説明してポーラを紹介する。
「それは悪かった、ポーラさん妹が世話になりました」青年は頭を下げて礼を言った。
「大したことはしてませんよ、気にしないで」
「いやいや、でもコイツは武闘家だからほっといても良かったんですよ。すみません」
「え!?こんな可愛い子が?」
彼女は驚いて少女の方を見れば、舌をペロリと出して「てへっ」と笑った。
少女は弱い振りをしてからボコボコに伸すのが好きらしい。
18歳から冒険者として暮らして約7年目だ、身の振り方を悩む年齢になっていた。
自身も体力は落ちて来たと自覚があったし、装具師の仕事もやってみたかったと思うのだ。
そもそも冒険者になったきっかけは、元恋人アルベルにしつこく勧誘されたせいだ。
彫金が好きだった彼女は職人を目指していたのである。魔力も高いポーラは選択肢が多かった。
何より器用さを発揮して、装飾品に魔力を込めてバフ効果を付与するのが得意なのだ。
「特技を生かせる仕事も悪くないよね、この年で弟子入りは難しいから一人で始めることになるけど」
小さな店を持つ程度の資金も貯まっているので、一考する価値はあるとポーラは思う。
しかし、それでも迷う気持ちが沸き上がるのも無視できない。
一人悩みながら街道を歩き、いよいよ王都手前の街へ辿り着いた。
そこそこ大きな町でもあるので、しばらくそこに滞在も悪くはないと彼女は考えた。
活気あふれる街の中心を歩き、露店などを見て回る。串焼きと果実水を買い広場のベンチに腰を下ろす。
炙った肉を頬張ってその肉汁を楽しんでいると、大道芸人らしい二人組が現れてパフォーマンスを始めた。
興味を持ったポーラは彼らの技を観察する、身軽に動き回る小柄な少女と剣舞で魅せる青年の姿に傍観客が増えていく。
技を決める度に大きな喝采を浴びて彼らはにこやかに手を振る。遠目に見ていたポーラも自然に拍手を送る。
「面白い物を観たわ、チップはどこに入れるのかしら」
手荷物を片付けて芸人たちに近づく、人だかりの隙間から円柱の箱が設置されているのが見えた、皆はそこへ金を投げ入れている。彼女もそれに倣い投げ入れた。
最後の大技を披露するとパフォーマンスは終了した。
観衆は最後に大きな拍手を二人へ送り、広場はもとの静けさを取り戻す。
大道芸を堪能したポーラは今日の宿探しを始めることにする、赤茶壁の落ち着いた雰囲気の宿をみつけ早速部屋を確保しようとドアを開く。
「一人部屋を一晩お願いします」
「はい、空いてますよ。夕飯はつけますか?」
「お願いします」
彼女は銀貨を2枚支払い、二階の宿泊部屋へ上って行く。指定された真ん中の小さな部屋へ入ると寝具にダイブして体を伸ばした。
「はぁ~落ち着くぅ、ベッドで寝るのはいつぶりかな」
ここまでの道中はずっと野宿だった彼女は安堵の笑みを浮かべて、脚を覆うブーツをはしたなく脱ぎ捨てる。
足を濯ぐのも面倒でそのまま惰眠を貪ることにした。
暫くして階下から響く賑わいに目を覚ました。
とっぷり陽が落ちたらしく窓の外は真っ暗だった、腹も空いたので夕飯を摂りに彼女は身支度する。
全身に浄化魔法をかけると部屋を出て階段をゆっくり下りた。1階の食堂にはミルクシチューの良い匂いが漂っている。
宿の店員に声を掛けてテーブルを案内される、窓際の席に落ち着くとレモンを落としたお冷を飲んだ。
なんとなく視線を食堂全体に巡らすとどこかで見た顔があった。
「あ、さっきの大道芸人さん」
偶然にも同じ宿だったらしい、彼らは少し大きめのテーブルで手先だけで出来るパフォーマンスを披露して酔っ払いたちを楽しませていた。
彼女もついそれに見入り、青年が手の平で弄んでいたコインが瞬時に消える手品というものに感心した。
思わず拍手しそうになったが、そういう場ではないと慌ててひっこめた。
空腹を訴える腹の音が鳴った時だった、少女の悲鳴が上がる。驚いてそちらを見れば泥酔したらしい男に絡まれている所だった。
ちょうど連れの青年が席を外したところを狙われたようだ、気の毒に思った彼女は少女を助けることにした。
「なぁもっと面白いものを見せてくれよ、例えばその谷間の奥とかさ、御駄賃弾むぜ?」
「いやだったら!手を離して!」
下品な男はニタニタと笑い少女の身体に触れようとしていた、身を捩り抵抗する少女は涙目である。
その下劣な行為に腹を立てた魔法使いポーラは酔っ払いに氷魔法を放ってカチコチにしてやった。
酔っ払いは首から下が銅像のように固まって失神した。
「大丈夫貴女、お連れの方は?」
「あ、ありがとう!兄さんは外のトイレだと思うの」
細かく震えていた少女はポーラにお礼を述べて、少しばかりベソを掻く。心配になったポーラは兄とやらが戻るまで傍にいることにする。
「落ち着いてもう平気だから、ね?」
「うん、私はネッテよ。お姉さんの名前は?」
「ポーラよ、見ての通り魔法使いで冒険者をやっているわ」
魔法使いポーラを見上げて少女はキラキした目を向けて「私達も冒険者なんだよ」と説明する。
大道芸はただの小遣い稼ぎなのだと少女は言う、そして話が盛り上がった頃に兄らしい連れが戻ってきた。
「もー遅い!何してたのよ兄さん!」
「悪い、酔い醒ましも兼ねて夜風に当たってたんだ」
少女ネッテは不在中に起きた事を粗方に説明してポーラを紹介する。
「それは悪かった、ポーラさん妹が世話になりました」青年は頭を下げて礼を言った。
「大したことはしてませんよ、気にしないで」
「いやいや、でもコイツは武闘家だからほっといても良かったんですよ。すみません」
「え!?こんな可愛い子が?」
彼女は驚いて少女の方を見れば、舌をペロリと出して「てへっ」と笑った。
少女は弱い振りをしてからボコボコに伸すのが好きらしい。
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