4 / 5
コボルト退治
しおりを挟む
かつての相棒ポーラが王都へ向かっている頃、”勇者”アルベルは体力の衰えに加えて彼女のバフを失い途方に暮れていた。人前で剣を揮いさえしなければ弱者に落ちたことは誤魔化せた。
それでも、腰に重い剣を下げて歩くのはとても難儀である。何度も外してしまおうかと彼は思ったが剣士が手ぶらでは恰好が付かないし、仮にも領地の守護神として崇められていたゆえに我慢するほかなかった。
「ねえ、アルベルぅ。以前に宴会で魅せてくれた剣舞を披露して貰えないかしら?」
「え!?な、なんで?危ないから広い場所がないとできないよ」
大慌てで拒否をするアルベルはもっともらしい理由を吐いて断る、だが領主の娘ヴィナは引いてくれなかった。
「ダイジョブよ、うちの広間はとーても広いわ。近いうちにお父様の51歳の誕生会があるの、その宴で剣舞を披露して欲しいのぉ!」
「え……あぁそうなのか、実は肩を痛めていてな、鍛錬中に油断したようなんだ」
「あら、そうだったの。うーん、残念。私の婚約者の美技をお披露目したかったのだけど」
「婚約!?」
いつの間にか外堀を埋められてしまったらしいアルベルは焦りを見せる、年齢的にも落ち着いて良い頃合いだが女達にチヤホヤされることに慣れてしまった彼は嫁を貰うという事を念頭になかったのだ。
「ま、まだ早くないか?出会って一月も経ってないよ」
「そんなことないわ、私達は愛し合っているじゃない?御父様も喜んでいるわ」
領主が乗り気と聞いたアルベルはサーッと青褪めた、権力に弱い彼は逃げ場がないのだと覚って肩を落とす。
年貢の納め時となったアルベルは項垂れたが、領主の婿となれば将来は安泰であると気が付く。
「そうか、生涯冒険などやってられないからな、腹を括るか」
ある程度権力を持ってしまえば、酒も女遊びもやりたい放題ではないかと腹黒い前向きさを見せた。
この”勇者”はどこまでもクズらしい。
***
そんな平和ボケの日々を堪能していたアルベルであったが、領地内で良くない噂が立ったことに焦りを見せた。
オーガを倒してからは人里周辺に魔物は減っていた、しかし小者の魔物の姿が多く目撃されていると町人らが困ったものだと話し合っている。
弱い魔物でも集団を作られたら厄介であると懸念した領主は、勇者アルベルに討伐依頼をしてきた。
「さあ、未来の婿殿!いまこそその雄姿を再び見せて戴きたい!」
「え」
「そうよ、アルベル!あのカッコイイ剣技を民衆に見せつけてよ。そして自慢させてほしいわ」
「え」
戦えない事情を知らない親子は好き勝手言ってきて「討伐討伐」と繰り返しせっつく。今の彼には剣さえ持ち上げられないというのに戦うなど出来るわけがない。
急かされた彼はイラつくが、いずれは魔物の殲滅をしなければ恰好が付かない。
散々悩んだ結果、鋼の剣を振るのではなく、女でも揮えるレイピアに武器を変えることにした。苦肉の策としてこれに至ったが果たして上手くいくのか。
「はん、たかがコボルトに大剣など要らない!このレイピアで十分なのさ!」
「まあアルベルったら、そうね小者相手だものハンデくらいあって当たり前よね!」
「大いに期待しているぞアルベル殿!」
領主親子におだてられた彼は、町周辺の林に跋扈し始めたコボルトたちを一掃しようと出立した。
いかに弱体化していようと冒険者として活躍してきた彼なりに腕に覚えがあった。振るえる武器さえあればなんとかなると高を括ったのだ。
町を出てすぐに一体のコボルトがヒョロヒョロ歩いているのを見つけるや一突きした。運良く急所を刺せたようで相手は地に落ちた。
気を良くしたアルベルは次々に倒して林奥へと突き進む。
「なんだやればできるじゃないか!なんたって勇者と称えられた俺なのだからな、臆して損した気分だよ」
レイピアにこびり付いた魔物の血を拭い捨て益々調子に乗るアルベルであった。
だがしかし、彼は油断が過ぎた。
弱いコボルトは群れをなし団体で動く習性がある、ずんずん進んだその先にはコボルトの集落が出来ていたのだ。
「へいへい、全員ぶっ殺してやるぜ!人里に降りて来たことを後悔させてやる!」
人間のオスが発した煽る言葉に応えたのか、貧相な集落奥から一回りおおきな体格のコボルトが出て来た。
「ほお、倒し甲斐がありそうじゃないか」
先ほどまでは彼の腰ほどしか背丈がなかったコボルトに対して、その者は人間くらいの大きさだった。
コボルトは知能は高くはない、戦法を駆使すれば勝てる相手である。
しかし、その大型コボルトは違った。
樫の杖を携えたそのコボルトは雷の魔法を詠唱なしで発現したのである。
「な、なんだと!?コボルトが魔法を」
侮った相手はコボルトロードだったのである、かなり賢いその個体は炎を使わない。なぜなら木々に延焼しては後々拙い事を理解しているからだ。集団を作った魔物からは突然変異体が誕生することが稀にあるのだ。
「ニンゲン 火デ炙ルカンタン デモ集落ダイジ」
「しゃ喋った?」
「感電シテシネ ソレガ一番土地ヲ穢サナイ」
コボルトロードはバチバチと雷針を幾数も放って勇者もどきアルベルを攻撃したのである。
それでも、腰に重い剣を下げて歩くのはとても難儀である。何度も外してしまおうかと彼は思ったが剣士が手ぶらでは恰好が付かないし、仮にも領地の守護神として崇められていたゆえに我慢するほかなかった。
「ねえ、アルベルぅ。以前に宴会で魅せてくれた剣舞を披露して貰えないかしら?」
「え!?な、なんで?危ないから広い場所がないとできないよ」
大慌てで拒否をするアルベルはもっともらしい理由を吐いて断る、だが領主の娘ヴィナは引いてくれなかった。
「ダイジョブよ、うちの広間はとーても広いわ。近いうちにお父様の51歳の誕生会があるの、その宴で剣舞を披露して欲しいのぉ!」
「え……あぁそうなのか、実は肩を痛めていてな、鍛錬中に油断したようなんだ」
「あら、そうだったの。うーん、残念。私の婚約者の美技をお披露目したかったのだけど」
「婚約!?」
いつの間にか外堀を埋められてしまったらしいアルベルは焦りを見せる、年齢的にも落ち着いて良い頃合いだが女達にチヤホヤされることに慣れてしまった彼は嫁を貰うという事を念頭になかったのだ。
「ま、まだ早くないか?出会って一月も経ってないよ」
「そんなことないわ、私達は愛し合っているじゃない?御父様も喜んでいるわ」
領主が乗り気と聞いたアルベルはサーッと青褪めた、権力に弱い彼は逃げ場がないのだと覚って肩を落とす。
年貢の納め時となったアルベルは項垂れたが、領主の婿となれば将来は安泰であると気が付く。
「そうか、生涯冒険などやってられないからな、腹を括るか」
ある程度権力を持ってしまえば、酒も女遊びもやりたい放題ではないかと腹黒い前向きさを見せた。
この”勇者”はどこまでもクズらしい。
***
そんな平和ボケの日々を堪能していたアルベルであったが、領地内で良くない噂が立ったことに焦りを見せた。
オーガを倒してからは人里周辺に魔物は減っていた、しかし小者の魔物の姿が多く目撃されていると町人らが困ったものだと話し合っている。
弱い魔物でも集団を作られたら厄介であると懸念した領主は、勇者アルベルに討伐依頼をしてきた。
「さあ、未来の婿殿!いまこそその雄姿を再び見せて戴きたい!」
「え」
「そうよ、アルベル!あのカッコイイ剣技を民衆に見せつけてよ。そして自慢させてほしいわ」
「え」
戦えない事情を知らない親子は好き勝手言ってきて「討伐討伐」と繰り返しせっつく。今の彼には剣さえ持ち上げられないというのに戦うなど出来るわけがない。
急かされた彼はイラつくが、いずれは魔物の殲滅をしなければ恰好が付かない。
散々悩んだ結果、鋼の剣を振るのではなく、女でも揮えるレイピアに武器を変えることにした。苦肉の策としてこれに至ったが果たして上手くいくのか。
「はん、たかがコボルトに大剣など要らない!このレイピアで十分なのさ!」
「まあアルベルったら、そうね小者相手だものハンデくらいあって当たり前よね!」
「大いに期待しているぞアルベル殿!」
領主親子におだてられた彼は、町周辺の林に跋扈し始めたコボルトたちを一掃しようと出立した。
いかに弱体化していようと冒険者として活躍してきた彼なりに腕に覚えがあった。振るえる武器さえあればなんとかなると高を括ったのだ。
町を出てすぐに一体のコボルトがヒョロヒョロ歩いているのを見つけるや一突きした。運良く急所を刺せたようで相手は地に落ちた。
気を良くしたアルベルは次々に倒して林奥へと突き進む。
「なんだやればできるじゃないか!なんたって勇者と称えられた俺なのだからな、臆して損した気分だよ」
レイピアにこびり付いた魔物の血を拭い捨て益々調子に乗るアルベルであった。
だがしかし、彼は油断が過ぎた。
弱いコボルトは群れをなし団体で動く習性がある、ずんずん進んだその先にはコボルトの集落が出来ていたのだ。
「へいへい、全員ぶっ殺してやるぜ!人里に降りて来たことを後悔させてやる!」
人間のオスが発した煽る言葉に応えたのか、貧相な集落奥から一回りおおきな体格のコボルトが出て来た。
「ほお、倒し甲斐がありそうじゃないか」
先ほどまでは彼の腰ほどしか背丈がなかったコボルトに対して、その者は人間くらいの大きさだった。
コボルトは知能は高くはない、戦法を駆使すれば勝てる相手である。
しかし、その大型コボルトは違った。
樫の杖を携えたそのコボルトは雷の魔法を詠唱なしで発現したのである。
「な、なんだと!?コボルトが魔法を」
侮った相手はコボルトロードだったのである、かなり賢いその個体は炎を使わない。なぜなら木々に延焼しては後々拙い事を理解しているからだ。集団を作った魔物からは突然変異体が誕生することが稀にあるのだ。
「ニンゲン 火デ炙ルカンタン デモ集落ダイジ」
「しゃ喋った?」
「感電シテシネ ソレガ一番土地ヲ穢サナイ」
コボルトロードはバチバチと雷針を幾数も放って勇者もどきアルベルを攻撃したのである。
81
あなたにおすすめの小説
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
私との婚約を破棄した王子が捕まりました。良かった。良かった。
狼狼3
恋愛
冤罪のような物を掛けられて何故か婚約を破棄された私ですが、婚約破棄をしてきた相手は、気付けば逮捕されていた。
そんな元婚約者の相手の今なんか知らずに、私は優雅に爺とお茶を飲む。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
【完結】お姉様ばかりずるい!私も!何でもマネする妹のせいで品行方正を強いられる
堀 和三盆
恋愛
「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私もダンスを習いたいわ」
ダンスが苦手だった私が二年間ほど習ってようやく楽しめるようになったころ。妹がそんなことを言い出した。そして遅れて習い始めた妹に半年もしないうちにサクッと追い越されてしまう。
ああ、やっぱりこうなるのね、と思う。
妹は何でも私のマネをしたがる。そして優秀な妹は私の数倍の速さで色々な技術を身に付ける。両親はそんな妹に期待をかけて、いつの間にか妹に習わせたいものだけを私にやらせるようになった。
料理も水泳も山登りも、私が望んだものは何一つ習わせてもらえない。
そして常に品行方正を強いられる。
妹のためとはいえ、様々な習い事や勉強で知識を増やしてきた私はそれなりに注目されていたらしく、なんと王太子殿下の婚約者に指名されてしまった。
そして、王太子妃教育が始まり3年立ったころ。
やはり、いつものアレが始まった。
「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私も王太子妃教育が受けたい」
……妹の中では王太子妃教育も習い事に入るみたい。
婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~
岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。
「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」
開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。
自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです
麻宮デコ@SS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。
母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。
「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。
このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。
弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した――
全3話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる