完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?

音爽(ネソウ)

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コボルト退治

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かつての相棒ポーラが王都へ向かっている頃、”勇者”アルベルは体力の衰えに加えて彼女のバフを失い途方に暮れていた。人前で剣を揮いさえしなければ弱者に落ちたことは誤魔化せた。
それでも、腰に重い剣を下げて歩くのはとても難儀である。何度も外してしまおうかと彼は思ったが剣士が手ぶらでは恰好が付かないし、仮にも領地の守護神として崇められていたゆえに我慢するほかなかった。

「ねえ、アルベルぅ。以前に宴会で魅せてくれた剣舞を披露して貰えないかしら?」
「え!?な、なんで?危ないから広い場所がないとできないよ」
大慌てで拒否をするアルベルはもっともらしい理由を吐いて断る、だが領主の娘ヴィナは引いてくれなかった。

「ダイジョブよ、うちの広間はとーても広いわ。近いうちにお父様の51歳の誕生会があるの、その宴で剣舞を披露して欲しいのぉ!」
「え……あぁそうなのか、実は肩を痛めていてな、鍛錬中に油断したようなんだ」
「あら、そうだったの。うーん、残念。私の婚約者の美技をお披露目したかったのだけど」
「婚約!?」
いつの間にか外堀を埋められてしまったらしいアルベルは焦りを見せる、年齢的にも落ち着いて良い頃合いだが女達にチヤホヤされることに慣れてしまった彼は嫁を貰うという事を念頭になかったのだ。

「ま、まだ早くないか?出会って一月も経ってないよ」
「そんなことないわ、私達は愛し合っているじゃない?御父様も喜んでいるわ」
領主が乗り気と聞いたアルベルはサーッと青褪めた、権力に弱い彼は逃げ場がないのだと覚って肩を落とす。
年貢の納め時となったアルベルは項垂れたが、領主の婿となれば将来は安泰であると気が付く。

「そうか、生涯冒険などやってられないからな、腹を括るか」
ある程度権力を持ってしまえば、酒も女遊びもやりたい放題ではないかと腹黒い前向きさを見せた。
この”勇者”はどこまでもクズらしい。

***

そんな平和ボケの日々を堪能していたアルベルであったが、領地内で良くない噂が立ったことに焦りを見せた。
オーガを倒してからは人里周辺に魔物は減っていた、しかし小者の魔物の姿が多く目撃されていると町人らが困ったものだと話し合っている。
弱い魔物でも集団を作られたら厄介であると懸念した領主は、勇者アルベルに討伐依頼をしてきた。
「さあ、未来の婿殿!いまこそその雄姿を再び見せて戴きたい!」
「え」
「そうよ、アルベル!あのカッコイイ剣技を民衆に見せつけてよ。そして自慢させてほしいわ」
「え」

戦えない事情を知らない親子は好き勝手言ってきて「討伐討伐」と繰り返しせっつく。今の彼には剣さえ持ち上げられないというのに戦うなど出来るわけがない。
急かされた彼はイラつくが、いずれは魔物の殲滅をしなければ恰好が付かない。
散々悩んだ結果、鋼の剣を振るのではなく、女でも揮えるレイピアに武器を変えることにした。苦肉の策としてこれに至ったが果たして上手くいくのか。

「はん、たかがコボルトに大剣など要らない!このレイピアで十分なのさ!」
「まあアルベルったら、そうね小者相手だものハンデくらいあって当たり前よね!」
「大いに期待しているぞアルベル殿!」
領主親子におだてられた彼は、町周辺の林に跋扈し始めたコボルトたちを一掃しようと出立した。

いかに弱体化していようと冒険者として活躍してきた彼なりに腕に覚えがあった。振るえる武器さえあればなんとかなると高を括ったのだ。
町を出てすぐに一体のコボルトがヒョロヒョロ歩いているのを見つけるや一突きした。運良く急所を刺せたようで相手は地に落ちた。
気を良くしたアルベルは次々に倒して林奥へと突き進む。

「なんだやればできるじゃないか!なんたって勇者と称えられた俺なのだからな、臆して損した気分だよ」
レイピアにこびり付いた魔物の血を拭い捨て益々調子に乗るアルベルであった。

だがしかし、彼は油断が過ぎた。
弱いコボルトは群れをなし団体で動く習性がある、ずんずん進んだその先にはコボルトの集落が出来ていたのだ。
「へいへい、全員ぶっ殺してやるぜ!人里に降りて来たことを後悔させてやる!」
人間のオスが発した煽る言葉に応えたのか、貧相な集落奥から一回りおおきな体格のコボルトが出て来た。
「ほお、倒し甲斐がありそうじゃないか」

先ほどまでは彼の腰ほどしか背丈がなかったコボルトに対して、その者は人間くらいの大きさだった。
コボルトは知能は高くはない、戦法を駆使すれば勝てる相手である。
しかし、その大型コボルトは違った。

樫の杖を携えたそのコボルトは雷の魔法を詠唱なしで発現したのである。
「な、なんだと!?コボルトが魔法を」
侮った相手はコボルトロードだったのである、かなり賢いその個体は炎を使わない。なぜなら木々に延焼しては後々拙い事を理解しているからだ。集団を作った魔物からは突然変異体が誕生することが稀にあるのだ。
「ニンゲン 火デ炙ルカンタン デモ集落ダイジ」
「しゃ喋った?」

「感電シテシネ ソレガ一番土地ヲ穢サナイ」
コボルトロードはバチバチと雷針を幾数も放って勇者もどきアルベルを攻撃したのである。


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