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窓から槍-6
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部活動を終えた午後六時半。学生寮中央棟、217号室にて。
寮の個室は、多少の違いはあれどどの部屋もほとんど変わらない。シューズボックスを備えた玄関の先には短い廊下があって、両脇にあるのはどちらかがトイレで反対側が洗面所とシャワールーム。廊下の先、曇りガラスが嵌め込まれた扉を開ければ六畳ほどのリビングになっている。一応簡易キッチンがあるので自炊も可能だ。壁掛けテレビやローテーブルは備え付けのもので、その他家具の持ち込みは自由。リビングの奥にある二つの扉が、それぞれの寝室だ。
辰巳からなにかしら聞いていたのだろう、突然訪ねたオレを湊はなにも言わずに迎え入れてくれた。
キッチンの方でゴソゴソしている湊の傍らで、オレと辰巳は部屋の中に置かれたローテーブルの前に座っている。そこまで大きいわけでもないテーブルの一辺に図体のでかい男二人が並んで正座しているのは暑苦しいことこの上ないが、今日ばかりはこうして座るしかないのである。
そんなオレたちの前にお茶の入ったグラスを置いた湊が、テーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろした。
「それで、なにか聞きたいことがあるって?」
横目で辰巳と目を合わせると、どちらからともなく頷く。
「今朝、選挙の話したろ?」
「全然知らなかったから、助かったよ。ありがとう」
「……どういたしまして?」
できる限りいつも通りを意識しているが……、むしろ意識しすぎていたのかもしれない。声は硬いし変に力が入っているのが自分でも分かる。世間話にしては堅苦しい雰囲気に、湊は訝しげな顔をしている。
「で、その時色々聞いたと思うけど……、いや。もう直球で聞く。ミナ」
「な、なに? 怖い話?」
じっと湊の目を見つめれば、たじろいだ様子で肩を引く。
「なにを悩んでるんだ? オレらにも言えないことか?」
「悩みって、突然なに? 藪から棒に」
「誰に投票するのかって話になった時、様子がおかしかったから。ちょっと二人で相談してたんだ」
「投票……」
変にぼかさずそのまま告げれば「……まあ、そうだよね」と観念したように静かに笑う気配がした。
「そりゃ気になるよな。ごめん、変な態度とって」
思い切って来たものの、直接聞いたところで頑なな対応を取られたらどうしようかと思っていた。なので、苦笑いを浮かべる湊の様子が見られてよかった。どうやら辰巳も同じようで、目を見合わせて安堵の息をつく。
「実はさ。中学に上がってからずっと、生徒会に選ばれてる人がいて……今の副会長、分かる?」
「あー……なんかすごい派手そうな人?」
「皇先輩だよね」
「そう。皇礼斗。中学二年から四年間連続で生徒会に選ばれてて、今回もほぼ確実に選ばれるだろうだろう人」
「へー、カッコいい名前だな」
容姿はなんとなく分かるが、名前は初めて知った。そう相槌を打てば、湊に宇宙人でも見るような視線を向けられる。学年は違うし壇上に立つのは生徒会長だし、接点もない先輩なんてそんなものだろうと首を傾げるけれど、目の前でため息をつかれた。隣の辰巳も苦笑しているし、そんなに有名人だったのか。
「ま、理仁らしいというか……」
「それでこそ理仁だね」
「……うん、決めた。というか自信がついた」
いまいちついていけていないオレを置いて、湊は晴れやかな顔をしている。
「正直ちょっと不安というか、心配だったけど。大丈夫だと思う」
二人ともありがとうと笑うその表情は一切の陰りが見えない、いつもの明るい湊のものだった
寮の個室は、多少の違いはあれどどの部屋もほとんど変わらない。シューズボックスを備えた玄関の先には短い廊下があって、両脇にあるのはどちらかがトイレで反対側が洗面所とシャワールーム。廊下の先、曇りガラスが嵌め込まれた扉を開ければ六畳ほどのリビングになっている。一応簡易キッチンがあるので自炊も可能だ。壁掛けテレビやローテーブルは備え付けのもので、その他家具の持ち込みは自由。リビングの奥にある二つの扉が、それぞれの寝室だ。
辰巳からなにかしら聞いていたのだろう、突然訪ねたオレを湊はなにも言わずに迎え入れてくれた。
キッチンの方でゴソゴソしている湊の傍らで、オレと辰巳は部屋の中に置かれたローテーブルの前に座っている。そこまで大きいわけでもないテーブルの一辺に図体のでかい男二人が並んで正座しているのは暑苦しいことこの上ないが、今日ばかりはこうして座るしかないのである。
そんなオレたちの前にお茶の入ったグラスを置いた湊が、テーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろした。
「それで、なにか聞きたいことがあるって?」
横目で辰巳と目を合わせると、どちらからともなく頷く。
「今朝、選挙の話したろ?」
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「……どういたしまして?」
できる限りいつも通りを意識しているが……、むしろ意識しすぎていたのかもしれない。声は硬いし変に力が入っているのが自分でも分かる。世間話にしては堅苦しい雰囲気に、湊は訝しげな顔をしている。
「で、その時色々聞いたと思うけど……、いや。もう直球で聞く。ミナ」
「な、なに? 怖い話?」
じっと湊の目を見つめれば、たじろいだ様子で肩を引く。
「なにを悩んでるんだ? オレらにも言えないことか?」
「悩みって、突然なに? 藪から棒に」
「誰に投票するのかって話になった時、様子がおかしかったから。ちょっと二人で相談してたんだ」
「投票……」
変にぼかさずそのまま告げれば「……まあ、そうだよね」と観念したように静かに笑う気配がした。
「そりゃ気になるよな。ごめん、変な態度とって」
思い切って来たものの、直接聞いたところで頑なな対応を取られたらどうしようかと思っていた。なので、苦笑いを浮かべる湊の様子が見られてよかった。どうやら辰巳も同じようで、目を見合わせて安堵の息をつく。
「実はさ。中学に上がってからずっと、生徒会に選ばれてる人がいて……今の副会長、分かる?」
「あー……なんかすごい派手そうな人?」
「皇先輩だよね」
「そう。皇礼斗。中学二年から四年間連続で生徒会に選ばれてて、今回もほぼ確実に選ばれるだろうだろう人」
「へー、カッコいい名前だな」
容姿はなんとなく分かるが、名前は初めて知った。そう相槌を打てば、湊に宇宙人でも見るような視線を向けられる。学年は違うし壇上に立つのは生徒会長だし、接点もない先輩なんてそんなものだろうと首を傾げるけれど、目の前でため息をつかれた。隣の辰巳も苦笑しているし、そんなに有名人だったのか。
「ま、理仁らしいというか……」
「それでこそ理仁だね」
「……うん、決めた。というか自信がついた」
いまいちついていけていないオレを置いて、湊は晴れやかな顔をしている。
「正直ちょっと不安というか、心配だったけど。大丈夫だと思う」
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