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一村雨の雨宿り-4
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寮についたのは十六時過ぎだった。夕飯には早いがなにかするには中途半端になりそうな時間。今日は特に用事もなく、あえて言うならなんとなくさっぱりしたいと思うくらいだ。先に軽くシャワーを浴びるか、それとも空いている今のうちに大浴場に行くか。そうのんびり考えながら部屋へ戻る道中。
二階と三階の踊り場へ差し掛かった頃、よく知る声が聞こえてきた。
学生寮中央棟、個室のある二階から五階には、フロアを十字に横切る広い廊下がある。丸い建物の外周をぐるりと囲むように部屋があるという設計上、自由に移動できるよう作られたらしい。その廊下が交差する中央部分は円形のラウンジスペースで、ソファやテーブルが置かれている。
きっと、そこにいるのだろう。二つずつある階段とエレベーターは東西に走る廊下に繋がっているので、ラウンジに人がいることがわかりやすいのだ。
部屋へ向かうためにラウンジを横切りながら何気なく視線を向けると、ソファで談笑している優とばっちり目が合った。
「あ、理仁くん!」
優はにこにこと手を振っている。それに軽く手をあげて答えながら、一緒にいる男子生徒に会釈する。座っていてもわかる程度には長身の彼は、こちらを見てぺこりと頭を下げた。
「お出かけ?」
「ちょっと気晴らしにな」
「これからなにか用事はある?」
「特にないけど……」
「本当?」
途端パッと表情を明るくさせた優が手招きする。友人と一緒にいるのにいいのだろうか。隣の彼は特に嫌そうな顔はしていない……というよりもむしろ無表情と言った方が正しい顔をしているし、迷惑なのでは。遠慮したい気持ち半分友人の誘いを断れない気持ち半分で、戸惑いつつも優の元に向かった。
隣の座面を叩く優に促されるまま腰掛ける。浅く座ったのはせめてもの抵抗だ。
「二人は初めましてだよね?」
両隣の顔を交互に見ながら話すので、優の友人とオレのことだということは理解できる。だとてその意図を汲み取るのは難しかった。そもそも初対面だと知っていた上でこうして引き合わせたのはなぜなのか。優越しに目が合った彼はどこかぼんやりした様子で首を傾げている。
「理仁くんにはこの間話したよね。僕が応援してて、今回の選挙で選ばれた汐見大河くん」
「あー……、なるほど」
「で、こっちが軽音部でバンド組んでる真柴理仁くん」
「よろしくな」
ぺこりと頭を下げる汐見はさすが優の友人というべきか、優等生然とした雰囲気だ。優とは違い無愛想というか無表情というか、あまり感情の起伏がなさそうというか。あまり詳しくないのだが、こういうタイプをミステリアスというのだろうか。密かな人気がありそうだというのはなんとなくわかる。
「こんな感じでちょっとぼんやりしてるところはあるけど、とってもいい子だからよろしくね」
「保護者か」
「あはは、つい癖で。大きい弟みたいでさ」
にこにこと笑顔で言う優に対して、汐見はひっそりと眉を上げるだけだった。これが二人の関係なのだろう。
「四月からは二人ともA組だし、僕もそのままのはずだから同じクラスだね」
「そういえばそんなこと言ってたな。……ってか、なんで生徒会だとA組固定なんだ?」
「うーん。詳しくはわからないけど、評価の問題かな? 基本的にクラスは成績順だし、生徒会活動の影響で不利にならないように、とか」
「……なるほど?」
わかるような、わからないような。とりあえず、わざわざA組に集める必要性は感じない。
「まあ、大河くんも一緒だから安心して!」
ね、と拳を握りしめた優が力強く同意を求めれば、汐見はこくりと頷いてこちらに視線を向ける。
「……よろしく」
ぽつりと呟くようにそう言った。
二階と三階の踊り場へ差し掛かった頃、よく知る声が聞こえてきた。
学生寮中央棟、個室のある二階から五階には、フロアを十字に横切る広い廊下がある。丸い建物の外周をぐるりと囲むように部屋があるという設計上、自由に移動できるよう作られたらしい。その廊下が交差する中央部分は円形のラウンジスペースで、ソファやテーブルが置かれている。
きっと、そこにいるのだろう。二つずつある階段とエレベーターは東西に走る廊下に繋がっているので、ラウンジに人がいることがわかりやすいのだ。
部屋へ向かうためにラウンジを横切りながら何気なく視線を向けると、ソファで談笑している優とばっちり目が合った。
「あ、理仁くん!」
優はにこにこと手を振っている。それに軽く手をあげて答えながら、一緒にいる男子生徒に会釈する。座っていてもわかる程度には長身の彼は、こちらを見てぺこりと頭を下げた。
「お出かけ?」
「ちょっと気晴らしにな」
「これからなにか用事はある?」
「特にないけど……」
「本当?」
途端パッと表情を明るくさせた優が手招きする。友人と一緒にいるのにいいのだろうか。隣の彼は特に嫌そうな顔はしていない……というよりもむしろ無表情と言った方が正しい顔をしているし、迷惑なのでは。遠慮したい気持ち半分友人の誘いを断れない気持ち半分で、戸惑いつつも優の元に向かった。
隣の座面を叩く優に促されるまま腰掛ける。浅く座ったのはせめてもの抵抗だ。
「二人は初めましてだよね?」
両隣の顔を交互に見ながら話すので、優の友人とオレのことだということは理解できる。だとてその意図を汲み取るのは難しかった。そもそも初対面だと知っていた上でこうして引き合わせたのはなぜなのか。優越しに目が合った彼はどこかぼんやりした様子で首を傾げている。
「理仁くんにはこの間話したよね。僕が応援してて、今回の選挙で選ばれた汐見大河くん」
「あー……、なるほど」
「で、こっちが軽音部でバンド組んでる真柴理仁くん」
「よろしくな」
ぺこりと頭を下げる汐見はさすが優の友人というべきか、優等生然とした雰囲気だ。優とは違い無愛想というか無表情というか、あまり感情の起伏がなさそうというか。あまり詳しくないのだが、こういうタイプをミステリアスというのだろうか。密かな人気がありそうだというのはなんとなくわかる。
「こんな感じでちょっとぼんやりしてるところはあるけど、とってもいい子だからよろしくね」
「保護者か」
「あはは、つい癖で。大きい弟みたいでさ」
にこにこと笑顔で言う優に対して、汐見はひっそりと眉を上げるだけだった。これが二人の関係なのだろう。
「四月からは二人ともA組だし、僕もそのままのはずだから同じクラスだね」
「そういえばそんなこと言ってたな。……ってか、なんで生徒会だとA組固定なんだ?」
「うーん。詳しくはわからないけど、評価の問題かな? 基本的にクラスは成績順だし、生徒会活動の影響で不利にならないように、とか」
「……なるほど?」
わかるような、わからないような。とりあえず、わざわざA組に集める必要性は感じない。
「まあ、大河くんも一緒だから安心して!」
ね、と拳を握りしめた優が力強く同意を求めれば、汐見はこくりと頷いてこちらに視線を向ける。
「……よろしく」
ぽつりと呟くようにそう言った。
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