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頭を下げて終わりに
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「ちょっと待て! 彼女は俺の婚約者だ。彼女を離せ!」
婚約者様は、いきなり大きな声を出したかと思うと、眉間に皺を寄せ、ライナーに強い視線を向けました。
「そうよ!まだ話は終わってませんわ!」
「こんな騒ぎにしたのは、ユニーナ様のせいなんですからぁ、ちゃあんと責任とって謝ってくださいぃ。」
婚約者様とゾンビ令嬢の言葉に、それまで黙って聞いていた周りの生徒達がガヤガヤ騒ぎ出しました。
「はっ? ユニーナ嬢のせいって、彼女、さっきから一言もしゃべってないだろう。責任ってなんだよ。」
「嫉妬もここまでくると、見苦しいわね・・・。」
「でも、彼が婚約者のこと嫌っているのは間違ってないんじゃないか?」
「そう言えば、二人が会話してるのって見たことないですわね。」
「だけど、あいつなんだよ、俺の婚約者って・・・今更そりゃないだろ・・・。」
あちこちで皆が好き勝手言っている中、それは、なんの前触れもなく訪れました。
「パンッ!」
乾いた音が鳴り響き、騒がしかった廊下が一瞬で静まりました。勢いが強すぎて二三歩よろめいてしまった後には、頬にじわじわとした熱い痛みを感じました。
「あなたが、好かれてもいないのに、いつまでもアレイド様との婚約を解消しないからでしょう!?いつまで彼を縛り付けているつもりなの!?いい加減自分の立場をわきまえなさいよ!!」
ゾンビ1号がふうふう肩で息をしながら、顔を真っ赤にして怒鳴りつけてきました。一度の暴力では足りなかったのか、彼女はもう一度手をあげようとしていました。
驚きに目を見開き、呆然として手を振り上げた令嬢を見ていた私を、咄嗟にライナーが強い力で引き寄せて庇ってくれました。
同時に婚約者様が駆け寄って来て、1号の手を掴んで上に捻り上げています。その時、婚約者様の顔からは、表情が全て抜け落ちており、真っ青になっていました。
(・・・ああ、もういいわ・・・。これ以上はさすがの私も、もう無理ね。)
私はライナーの手を押しのけると、婚約者様に近寄りました。叩かれた頬がじんじん痛み、熱を持つのを感じました。
ライナーが後ろで私の名前を呼んでいましたが振り返ることはしませんでした。婚約者様は驚いた顔で私を見ています。今もまだ、婚約者様の手は私をぶった令嬢を拘束していました。
私は、大きく息を吸い込むと、自分の目に、クッと力を込めて婚約者様と視線を合わせました。私はとても怒っていましたが、決して声を荒げないよう、懸命に心を静めました。
「婚約者様。いくらなんでもこれはひど過ぎます。こんな大騒ぎにしてしまっては、どんな作戦を立てたとしても成功するはずがありません。残念なことに、姉のミズリーは妹の私を愛してくれています。いくら私が気に入らないからと言って、こんな騒ぎを起こしてしまったなら、姉はきっと悲しむでしょう。貴方様にとって、私などはどうせ使い捨てる駒なのです。ならば、もう少し有効に使っていただきたかったです。それと・・・ご存知かもしれませんが、姉は二か月後に結婚いたします。申し訳ありませんが、二人は思い合っております。ですので、これからは、どうか姉の幸せを願っていただけないでしょうか。何のお役にも立てず、申し訳ありませんでした。この騒ぎを機に私のお役目も、そろそろ終わりにしていただきたいと思います。幼き頃より大変お世話になりました。叔父様、叔母様、使用人の方々にもお礼を伝えていただけると嬉しいです。どうぞ、これからもお元気でお過ごしくださいませ。」
(そうです。最後に頭を下げて終わりにしましょう。)
「違う!!ユニーナ、待って、ユニーナ!! ちゃんと話を聞いて!! ユニーナ!!」
そう叫ぶなり、婚約者様は突然両手で私の腕を強く掴みました。何事かと思った私が、怯えた顔で戸惑っていると、近くに来ていたライナーがその手を引き離しました。そのまま、私を庇うように腕に抱くと、婚約者様に向かって怒鳴ったのです。
「アレイド。もう、こんなことやめろ!お前、いい加減にしろ!少しは、ユニの気持ちも考えろ!!」
「うるさい!!お前に関係ないだろ!!俺のユニーナだ!!なんで婚約者でもないお前が! なんでっ!なんでいつもユニーナの傍には、お前がいるんだ!!」
婚約者様は強い怒りを隠しもせず、ライナーの肩を力任せに掴みながら怒鳴りました。そして気付いた時には、その勢いのままライナーの頬を殴ってしまったのです。
殴られたライナーは、一瞬息を飲み呆然とした顔で婚約者様を見ていましたが、直ぐに我に返ったかのように怒りの表情に変わると、そのまま婚約者様の胸ぐらを掴みました。
「なんでわからないんだ!!ユニはあの時の俺達の会話を聞いていたんだ!お前だって、こいつの後ろ姿を見ただろう!?ユニは全部知っているんだ!なのに、お前みたいな姑息な奴の為にずっと自分を犠牲にして耐えてきたんだぞ!それがどうゆう事かわかってんのか!?」
すると、もみ合っている二人の間に、二人の男子生徒が止めに入ってきました。
「アレイド!! だめだ!やめろ!!ライナーは間違ってない!!」
「アレイド!!ミズリー嬢と上手くいかなかったからって、これ以上ユニーナ嬢を犠牲にしちゃいけない!わかってるだろ。相手は侯爵家だ。もう無理だ。諦めろ!!」
その言葉に、怒りで我を失っている婚約者様の顔が、更に歪むのが分かりました。
「離せ!!お前らに俺の何がわかる!!他の誰にも渡さない!!ユニーナは俺のものだ!!」
婚約者様は、ライナーだけでなく、後から止めに入ってきた二人に向かっても、大声で怒鳴りつけました。今や、四人の男子生徒が揉みくちゃになって、何が何やら分からない状態になっていました。
私は、痛む頬に手を当て、それらを呆然と眺めていましたが、心の中は、先ほどからの自分勝手な婚約者様の言動に対し、今までため込んでいた怒りがじわじわと湧き上がって来るのを感じていたのでした。
婚約者様は、いきなり大きな声を出したかと思うと、眉間に皺を寄せ、ライナーに強い視線を向けました。
「そうよ!まだ話は終わってませんわ!」
「こんな騒ぎにしたのは、ユニーナ様のせいなんですからぁ、ちゃあんと責任とって謝ってくださいぃ。」
婚約者様とゾンビ令嬢の言葉に、それまで黙って聞いていた周りの生徒達がガヤガヤ騒ぎ出しました。
「はっ? ユニーナ嬢のせいって、彼女、さっきから一言もしゃべってないだろう。責任ってなんだよ。」
「嫉妬もここまでくると、見苦しいわね・・・。」
「でも、彼が婚約者のこと嫌っているのは間違ってないんじゃないか?」
「そう言えば、二人が会話してるのって見たことないですわね。」
「だけど、あいつなんだよ、俺の婚約者って・・・今更そりゃないだろ・・・。」
あちこちで皆が好き勝手言っている中、それは、なんの前触れもなく訪れました。
「パンッ!」
乾いた音が鳴り響き、騒がしかった廊下が一瞬で静まりました。勢いが強すぎて二三歩よろめいてしまった後には、頬にじわじわとした熱い痛みを感じました。
「あなたが、好かれてもいないのに、いつまでもアレイド様との婚約を解消しないからでしょう!?いつまで彼を縛り付けているつもりなの!?いい加減自分の立場をわきまえなさいよ!!」
ゾンビ1号がふうふう肩で息をしながら、顔を真っ赤にして怒鳴りつけてきました。一度の暴力では足りなかったのか、彼女はもう一度手をあげようとしていました。
驚きに目を見開き、呆然として手を振り上げた令嬢を見ていた私を、咄嗟にライナーが強い力で引き寄せて庇ってくれました。
同時に婚約者様が駆け寄って来て、1号の手を掴んで上に捻り上げています。その時、婚約者様の顔からは、表情が全て抜け落ちており、真っ青になっていました。
(・・・ああ、もういいわ・・・。これ以上はさすがの私も、もう無理ね。)
私はライナーの手を押しのけると、婚約者様に近寄りました。叩かれた頬がじんじん痛み、熱を持つのを感じました。
ライナーが後ろで私の名前を呼んでいましたが振り返ることはしませんでした。婚約者様は驚いた顔で私を見ています。今もまだ、婚約者様の手は私をぶった令嬢を拘束していました。
私は、大きく息を吸い込むと、自分の目に、クッと力を込めて婚約者様と視線を合わせました。私はとても怒っていましたが、決して声を荒げないよう、懸命に心を静めました。
「婚約者様。いくらなんでもこれはひど過ぎます。こんな大騒ぎにしてしまっては、どんな作戦を立てたとしても成功するはずがありません。残念なことに、姉のミズリーは妹の私を愛してくれています。いくら私が気に入らないからと言って、こんな騒ぎを起こしてしまったなら、姉はきっと悲しむでしょう。貴方様にとって、私などはどうせ使い捨てる駒なのです。ならば、もう少し有効に使っていただきたかったです。それと・・・ご存知かもしれませんが、姉は二か月後に結婚いたします。申し訳ありませんが、二人は思い合っております。ですので、これからは、どうか姉の幸せを願っていただけないでしょうか。何のお役にも立てず、申し訳ありませんでした。この騒ぎを機に私のお役目も、そろそろ終わりにしていただきたいと思います。幼き頃より大変お世話になりました。叔父様、叔母様、使用人の方々にもお礼を伝えていただけると嬉しいです。どうぞ、これからもお元気でお過ごしくださいませ。」
(そうです。最後に頭を下げて終わりにしましょう。)
「違う!!ユニーナ、待って、ユニーナ!! ちゃんと話を聞いて!! ユニーナ!!」
そう叫ぶなり、婚約者様は突然両手で私の腕を強く掴みました。何事かと思った私が、怯えた顔で戸惑っていると、近くに来ていたライナーがその手を引き離しました。そのまま、私を庇うように腕に抱くと、婚約者様に向かって怒鳴ったのです。
「アレイド。もう、こんなことやめろ!お前、いい加減にしろ!少しは、ユニの気持ちも考えろ!!」
「うるさい!!お前に関係ないだろ!!俺のユニーナだ!!なんで婚約者でもないお前が! なんでっ!なんでいつもユニーナの傍には、お前がいるんだ!!」
婚約者様は強い怒りを隠しもせず、ライナーの肩を力任せに掴みながら怒鳴りました。そして気付いた時には、その勢いのままライナーの頬を殴ってしまったのです。
殴られたライナーは、一瞬息を飲み呆然とした顔で婚約者様を見ていましたが、直ぐに我に返ったかのように怒りの表情に変わると、そのまま婚約者様の胸ぐらを掴みました。
「なんでわからないんだ!!ユニはあの時の俺達の会話を聞いていたんだ!お前だって、こいつの後ろ姿を見ただろう!?ユニは全部知っているんだ!なのに、お前みたいな姑息な奴の為にずっと自分を犠牲にして耐えてきたんだぞ!それがどうゆう事かわかってんのか!?」
すると、もみ合っている二人の間に、二人の男子生徒が止めに入ってきました。
「アレイド!! だめだ!やめろ!!ライナーは間違ってない!!」
「アレイド!!ミズリー嬢と上手くいかなかったからって、これ以上ユニーナ嬢を犠牲にしちゃいけない!わかってるだろ。相手は侯爵家だ。もう無理だ。諦めろ!!」
その言葉に、怒りで我を失っている婚約者様の顔が、更に歪むのが分かりました。
「離せ!!お前らに俺の何がわかる!!他の誰にも渡さない!!ユニーナは俺のものだ!!」
婚約者様は、ライナーだけでなく、後から止めに入ってきた二人に向かっても、大声で怒鳴りつけました。今や、四人の男子生徒が揉みくちゃになって、何が何やら分からない状態になっていました。
私は、痛む頬に手を当て、それらを呆然と眺めていましたが、心の中は、先ほどからの自分勝手な婚約者様の言動に対し、今までため込んでいた怒りがじわじわと湧き上がって来るのを感じていたのでした。
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