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大切な友人
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私は、昨日一日お休みして、今日からは普通に学園に向かいました。アレイド様と私に手を上げたご令嬢は二週間の停学になっていました。あの攻撃的なご令嬢は、最後にきちんと謝ってくれたのですが、我が家とアレイド様の伯爵家、その上スワルス様の侯爵家からも抗議文が送られてしまったようで、随分反省させられたのか、わざわざ謝罪のお手紙までいただいてしまいました。
教室へ行くと、いつものように誰も近寄っては来ませんが、心なしかいつもよりも好奇の目で見られているような気がして落ち着きませんでした。ライナーがおはようと爽やかに近づいて来ました。アレイド様に殴られた頬が少しアザになっているようでしたが、思ったより酷くなかったのでほっと安心しました。ライナーも、私の頬を気にしてくれていたようで、元気そうな顔を見て安心したと、お互い笑い合いました。
昼休みには、いつものようにライナーと食事をして、昨日一日の出来事を細かく話して聞かせました。
「それは本当なのか?あいつが? うーん・・・本当に? でも、本当にそうなら、今までのあいつの態度はなんだったんだ?だってあいつ、ユニに対する感じの悪さだけは満点だったぞ!?あれが全部、愛情の裏返しってことなのか?だったら、ちょっと・・・いや、かなり怖いぞ。」
話しの後半に進むにつれ、意味不明だと言って、ライナーは頭を抱えて唸ってしまうのでした。
ライナーは、私が孤立して一人寂しかった時に、唯一話かけてきてくれた人でした。偽物の婚約者とか、お飾りの婚約者などと陰口を叩かれ、頻繁に爵位の高い令嬢達に呼び出されるようになると、親しい友人はいつの間にか誰も居なくなっていました。しかしライナーだけは、そんな私の陰口など気にせず普通に接してくれていました。私に話しかけてくれる人はライナーの他に誰も居なかったので、私とライナーは、なんとなく一緒に行動するようになりました。そのせいで、令嬢達からの暴言に 「婚約者がいるくせに、他の男性にまで手を出すなんて!!」 などが追加されたのですが、常に一人、孤独に耐えていた私にとって、ライナーには申し訳なく思う反面、つい話し相手がいる喜びの方を優先してしまったのでした。
何より、ライナーとの関係が私にとって心地よかったのは、ライナーが裏表のないはっきりとした性格だったからでした。好きなものは好き、嫌いな物は嫌い、ライナーには貴族特有の打算がないのです。嘘や偽りばかりの貴族社会で、知らないうちに信用の置けない人間に取り囲まれてしまうことは珍しくありません。そんな中、ライナーの言うことだけは、何の疑いもなく信じることができたのです。
周りからは、ライナーとの恋仲をチクチク指摘されていましたが、私達の関係は決して友情以外のなにものでもありません。
だって、ライナーには、恋人がいるんですもの。裕福な商家の女性ですが、あくまでも貴族ではありませんから、私達の通う貴族学院には入学できませんが、お嬢様の割には、ライナーとよく似た真っすぐな性格で、スラっとした背の高い美人なのです。紹介された時は、彼女にライナーとの仲を疑われたりもしましたが、私が学園で誰にも相手にされてないという話をすると、涙を浮かべて同情してくれるような人の痛みのわかる素敵な女性だったのです。そして彼女もライナーと同じで馬鹿正直で嘘とは無縁の人でした。
お互いの愛情表現も、嫉妬が原因でたまに起こる喧嘩も、それはそれは包み隠さずはっきりとした言葉のやり取りで、聞いているこちらが恥ずかしくなるような感情のぶつけ合いなのです。そんなライナーですから、難解なアレイド様の言動など理解に苦しむものばかりなのでしょう。なにせ、幼馴染の私ですら理解できないのですから。
「あいつの気持ちがずっとユニにあったのなら、俺が殴られたのはやっぱり嫉妬だったのかなぁ・・・。随分わかりにくい奴だな。」
ライナーは、少し馬鹿にしたように、薄く笑うのでした。
授業が終わり、邸に戻ると馬車を降りるなりアレイド様に迎えられました。
「ユニ、お帰り!ずっと待っていたんだよ。さあ、中に入ってお茶にでもしよう!」
私が何も言えずに立ち尽くしていると、アレイド様が私の腰に手を回し、またもやピッタリくっ付いて私の部屋までエスコートしてくれました。歩きながらも、爽やかな笑顔でずっと話続けているのですが、私がろくに返事もしないことに気付いたのか、部屋に入るなりにっこり笑って 「二人で少し話をしようね。」 と、ドアを閉めてしまいました。
私にソファーに座るよう促すとアレイド様は話始めました。
「僕は今、停学中だからね。本当は自分の部屋での謹慎を言い渡されていたんだけれど、どうしてもユニに会って話がしたくて、ユニが帰る時間を見計らって、こっそり邸を抜け出して来てしまったよ。 ・・・ねぇ、ユニ、まだ僕のこと許せないんだよね?」
俯いている私の顔を、腰を曲げて覗き込むように見てくるアレイド様は、不安そうな顔で瞳を揺らしていました。
「・・・許す、許さないではなく、戸惑っています。」
「うん。僕はずっと、ユニと話すこともできなかったしね。でも、僕が本当はユニのことが大好きだってことはわかってくれたかな?」
「・・・わかりません。」
アレイド様の探るような視線を振り切り、私は今の気持ちを正直に伝えました。
アレイド様は一瞬苦しそうに口を引き結びましたが、直ぐに気を取り直したように表情を緩めました。
「どうして?」
「人は平気で嘘をつく生き物ですから。」
「・・・うん。そうだね。でも、僕はどうしてもユニに僕の気持ちを解ってもらいたいんだ。 もう、何も隠さないし全部素直に答える。嘘はつかないと約束するから、聞いてもらえるかな?」
教室へ行くと、いつものように誰も近寄っては来ませんが、心なしかいつもよりも好奇の目で見られているような気がして落ち着きませんでした。ライナーがおはようと爽やかに近づいて来ました。アレイド様に殴られた頬が少しアザになっているようでしたが、思ったより酷くなかったのでほっと安心しました。ライナーも、私の頬を気にしてくれていたようで、元気そうな顔を見て安心したと、お互い笑い合いました。
昼休みには、いつものようにライナーと食事をして、昨日一日の出来事を細かく話して聞かせました。
「それは本当なのか?あいつが? うーん・・・本当に? でも、本当にそうなら、今までのあいつの態度はなんだったんだ?だってあいつ、ユニに対する感じの悪さだけは満点だったぞ!?あれが全部、愛情の裏返しってことなのか?だったら、ちょっと・・・いや、かなり怖いぞ。」
話しの後半に進むにつれ、意味不明だと言って、ライナーは頭を抱えて唸ってしまうのでした。
ライナーは、私が孤立して一人寂しかった時に、唯一話かけてきてくれた人でした。偽物の婚約者とか、お飾りの婚約者などと陰口を叩かれ、頻繁に爵位の高い令嬢達に呼び出されるようになると、親しい友人はいつの間にか誰も居なくなっていました。しかしライナーだけは、そんな私の陰口など気にせず普通に接してくれていました。私に話しかけてくれる人はライナーの他に誰も居なかったので、私とライナーは、なんとなく一緒に行動するようになりました。そのせいで、令嬢達からの暴言に 「婚約者がいるくせに、他の男性にまで手を出すなんて!!」 などが追加されたのですが、常に一人、孤独に耐えていた私にとって、ライナーには申し訳なく思う反面、つい話し相手がいる喜びの方を優先してしまったのでした。
何より、ライナーとの関係が私にとって心地よかったのは、ライナーが裏表のないはっきりとした性格だったからでした。好きなものは好き、嫌いな物は嫌い、ライナーには貴族特有の打算がないのです。嘘や偽りばかりの貴族社会で、知らないうちに信用の置けない人間に取り囲まれてしまうことは珍しくありません。そんな中、ライナーの言うことだけは、何の疑いもなく信じることができたのです。
周りからは、ライナーとの恋仲をチクチク指摘されていましたが、私達の関係は決して友情以外のなにものでもありません。
だって、ライナーには、恋人がいるんですもの。裕福な商家の女性ですが、あくまでも貴族ではありませんから、私達の通う貴族学院には入学できませんが、お嬢様の割には、ライナーとよく似た真っすぐな性格で、スラっとした背の高い美人なのです。紹介された時は、彼女にライナーとの仲を疑われたりもしましたが、私が学園で誰にも相手にされてないという話をすると、涙を浮かべて同情してくれるような人の痛みのわかる素敵な女性だったのです。そして彼女もライナーと同じで馬鹿正直で嘘とは無縁の人でした。
お互いの愛情表現も、嫉妬が原因でたまに起こる喧嘩も、それはそれは包み隠さずはっきりとした言葉のやり取りで、聞いているこちらが恥ずかしくなるような感情のぶつけ合いなのです。そんなライナーですから、難解なアレイド様の言動など理解に苦しむものばかりなのでしょう。なにせ、幼馴染の私ですら理解できないのですから。
「あいつの気持ちがずっとユニにあったのなら、俺が殴られたのはやっぱり嫉妬だったのかなぁ・・・。随分わかりにくい奴だな。」
ライナーは、少し馬鹿にしたように、薄く笑うのでした。
授業が終わり、邸に戻ると馬車を降りるなりアレイド様に迎えられました。
「ユニ、お帰り!ずっと待っていたんだよ。さあ、中に入ってお茶にでもしよう!」
私が何も言えずに立ち尽くしていると、アレイド様が私の腰に手を回し、またもやピッタリくっ付いて私の部屋までエスコートしてくれました。歩きながらも、爽やかな笑顔でずっと話続けているのですが、私がろくに返事もしないことに気付いたのか、部屋に入るなりにっこり笑って 「二人で少し話をしようね。」 と、ドアを閉めてしまいました。
私にソファーに座るよう促すとアレイド様は話始めました。
「僕は今、停学中だからね。本当は自分の部屋での謹慎を言い渡されていたんだけれど、どうしてもユニに会って話がしたくて、ユニが帰る時間を見計らって、こっそり邸を抜け出して来てしまったよ。 ・・・ねぇ、ユニ、まだ僕のこと許せないんだよね?」
俯いている私の顔を、腰を曲げて覗き込むように見てくるアレイド様は、不安そうな顔で瞳を揺らしていました。
「・・・許す、許さないではなく、戸惑っています。」
「うん。僕はずっと、ユニと話すこともできなかったしね。でも、僕が本当はユニのことが大好きだってことはわかってくれたかな?」
「・・・わかりません。」
アレイド様の探るような視線を振り切り、私は今の気持ちを正直に伝えました。
アレイド様は一瞬苦しそうに口を引き結びましたが、直ぐに気を取り直したように表情を緩めました。
「どうして?」
「人は平気で嘘をつく生き物ですから。」
「・・・うん。そうだね。でも、僕はどうしてもユニに僕の気持ちを解ってもらいたいんだ。 もう、何も隠さないし全部素直に答える。嘘はつかないと約束するから、聞いてもらえるかな?」
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