9 / 25
友人の本心
しおりを挟む
「なあ、これってもしかして、コットワール嬢の本か?」
ユーレットの机に置いてあった本を取り上げた友人が本のページをめくっている。
『お友達に勧められて読んでみた本なんだけど、本当に面白かったの。私もね、こういった本にはあまり興味がなかったから、読み始めるまで少し億劫に感じてたんだけど、読み始めたらもうね、すっごく面白くて! もしかしたらユーレットも気に入るんじゃないかと思って持ってきちゃった』
表紙を見ると明らかに女性向けの恋愛小説だと分かる題名だった。正直、いらないと言って断ろうと思ったけれど 『騙されたと思って少しだけでも読んでみて?』 と言われてしまい、断れなくなった本であった。
・・・面白かった。
少し読むどころか一気に全部読んでしまうほど、夢中になってしまった。エリシアの言うように無口で要領の悪い主人公が、どこか自分と似ているような気がした。
しかし、読み終わったらぜひ感想を聞かせてね。と言われていたのに、今の自分は感想どころか本を返すことすらできない有様だ。
「ああ・・・、借り物なんだ。返そうと思って持って来た」
ふーん・・・。と、たいして興味のなさそうな返事をした友人であったが、パラパラとページをめくりながらもその瞳が一つも文字を追っていないことなど、その時のユーレットは気づきもしなかった。
目の前の光景に、ユーレットは自分の目を疑った。
(なんであいつが!)
顔を赤くした友人が照れたように笑っていた。その姿は喜びを隠しきれていないように見える。
そして、友人の目の前で親しげな笑顔を見せているのは、まさかのエリシアであった。
そしてユーレットは気づいた。エリシアの手の中にある本に。
(あの本!? なんであいつが彼女に返してるんだ。なんで・・・、なんであいつと彼女が一緒にいる!?)
話をするような関係ではなかったはずの二人が、つい先ほどまで自分が持っていた本を手に笑顔で会話している。
友人に対する疑問や不信感が、強い怒りとなってこみ上げてくる。
本来、彼女の隣にいるのは自分のはずだ。借りた本を返し、面白かったと感想を述べるつもりでいた。気まずくなってしまった今だからこそ、あの本を理由に話しかけようと思っていたのに。
(なんであいつが!!)
ユーレットが怒りのままに拳を震わせていると、話し終わった様子のエリシアが友人に軽く手を振ってその場を立ち去って行った。
彼女の後ろ姿をじっと見送っている友人に怒りが増す。
友人の背後から掛けたユーレットの声は低く、怒りで少し震えていた。
「どういうことだ。なんでお前が彼女にあの本を返している?」
背後から唐突に話しかけたというのに、友人は驚くどころか振り返るなり薄く笑った。
「なあ、それがどうしたんだ?お前が返せない物を俺が返してやっただけだろう。あの本は彼女の本なんだろ!?じゃあ、別に俺が返したっていいじゃないか。それともなにか問題でもあるのか?」
友人の悪びれない態度と言葉に、ユーレットは一瞬で頭に血が上った。
しかし、いきなり胸ぐらを掴んだユーレットの手を友人は難なく払った。友人はユーレットよりもかなり体格がよかった。エリシアと並んでも、なんら不自然に見えないその外見がユーレットを更に苛立たせた。
「残念だったな。だが、なんの権利もないお前にとやかく言われる筋合いはないんだよ」
相変わらず薄笑いを浮かべているが、友人の目はひとつも笑っていなかった。
「・・・どうせ目的は爵位なんだろう!?」
しかし、ふっと視線を逸らした彼はユーレットの望んだ返事を口にすることはなかった。
「は!? 嘘だろう・・・。なんで・・・、いつから・・・」
友人は口をつぐんだまま、ユーレットを見ようともしなかった。
「だって、お前・・・、黒髪の女は嫌いだって―――」
「なに言ってんだお前。どれだけの男が彼女の姿を目で追ってたと思ってるんだ?俺達がどんな気持ちでお前達を見ていたのか・・・。まあ、相手の気持ちに胡坐をかいて余裕をかましていたお前になんて分かるわけないか。ははっ、教えてやるよ。彼女の魅力に気づいていなかった馬鹿は、お前くらいなもんだよ。」
そう言った友人は、ユーレットを冷たく見下ろしたのだった。
ユーレットの机に置いてあった本を取り上げた友人が本のページをめくっている。
『お友達に勧められて読んでみた本なんだけど、本当に面白かったの。私もね、こういった本にはあまり興味がなかったから、読み始めるまで少し億劫に感じてたんだけど、読み始めたらもうね、すっごく面白くて! もしかしたらユーレットも気に入るんじゃないかと思って持ってきちゃった』
表紙を見ると明らかに女性向けの恋愛小説だと分かる題名だった。正直、いらないと言って断ろうと思ったけれど 『騙されたと思って少しだけでも読んでみて?』 と言われてしまい、断れなくなった本であった。
・・・面白かった。
少し読むどころか一気に全部読んでしまうほど、夢中になってしまった。エリシアの言うように無口で要領の悪い主人公が、どこか自分と似ているような気がした。
しかし、読み終わったらぜひ感想を聞かせてね。と言われていたのに、今の自分は感想どころか本を返すことすらできない有様だ。
「ああ・・・、借り物なんだ。返そうと思って持って来た」
ふーん・・・。と、たいして興味のなさそうな返事をした友人であったが、パラパラとページをめくりながらもその瞳が一つも文字を追っていないことなど、その時のユーレットは気づきもしなかった。
目の前の光景に、ユーレットは自分の目を疑った。
(なんであいつが!)
顔を赤くした友人が照れたように笑っていた。その姿は喜びを隠しきれていないように見える。
そして、友人の目の前で親しげな笑顔を見せているのは、まさかのエリシアであった。
そしてユーレットは気づいた。エリシアの手の中にある本に。
(あの本!? なんであいつが彼女に返してるんだ。なんで・・・、なんであいつと彼女が一緒にいる!?)
話をするような関係ではなかったはずの二人が、つい先ほどまで自分が持っていた本を手に笑顔で会話している。
友人に対する疑問や不信感が、強い怒りとなってこみ上げてくる。
本来、彼女の隣にいるのは自分のはずだ。借りた本を返し、面白かったと感想を述べるつもりでいた。気まずくなってしまった今だからこそ、あの本を理由に話しかけようと思っていたのに。
(なんであいつが!!)
ユーレットが怒りのままに拳を震わせていると、話し終わった様子のエリシアが友人に軽く手を振ってその場を立ち去って行った。
彼女の後ろ姿をじっと見送っている友人に怒りが増す。
友人の背後から掛けたユーレットの声は低く、怒りで少し震えていた。
「どういうことだ。なんでお前が彼女にあの本を返している?」
背後から唐突に話しかけたというのに、友人は驚くどころか振り返るなり薄く笑った。
「なあ、それがどうしたんだ?お前が返せない物を俺が返してやっただけだろう。あの本は彼女の本なんだろ!?じゃあ、別に俺が返したっていいじゃないか。それともなにか問題でもあるのか?」
友人の悪びれない態度と言葉に、ユーレットは一瞬で頭に血が上った。
しかし、いきなり胸ぐらを掴んだユーレットの手を友人は難なく払った。友人はユーレットよりもかなり体格がよかった。エリシアと並んでも、なんら不自然に見えないその外見がユーレットを更に苛立たせた。
「残念だったな。だが、なんの権利もないお前にとやかく言われる筋合いはないんだよ」
相変わらず薄笑いを浮かべているが、友人の目はひとつも笑っていなかった。
「・・・どうせ目的は爵位なんだろう!?」
しかし、ふっと視線を逸らした彼はユーレットの望んだ返事を口にすることはなかった。
「は!? 嘘だろう・・・。なんで・・・、いつから・・・」
友人は口をつぐんだまま、ユーレットを見ようともしなかった。
「だって、お前・・・、黒髪の女は嫌いだって―――」
「なに言ってんだお前。どれだけの男が彼女の姿を目で追ってたと思ってるんだ?俺達がどんな気持ちでお前達を見ていたのか・・・。まあ、相手の気持ちに胡坐をかいて余裕をかましていたお前になんて分かるわけないか。ははっ、教えてやるよ。彼女の魅力に気づいていなかった馬鹿は、お前くらいなもんだよ。」
そう言った友人は、ユーレットを冷たく見下ろしたのだった。
139
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
婚約破棄された公爵令嬢と、処方箋を無視する天才薬師 ――正しい医療は、二人で始めます
ふわふわ
恋愛
「その医療は、本当に正しいと言えますか?」
医療体制への疑問を口にしたことで、
公爵令嬢ミーシャ・ゲートは、
医会の頂点に立つ婚約者ウッド・マウント公爵から
一方的に婚約を破棄される。
――素人の戯言。
――体制批判は不敬。
そう断じられ、
“医療を否定した危険な令嬢”として社交界からも排斥されたミーシャは、
それでも引かなかった。
ならば私は、正しい医療を制度として作る。
一方その頃、国営薬局に現れた謎の新人薬師・ギ・メイ。
彼女は転生者であり、前世の知識を持つ薬師だった。
画一的な万能薬が当然とされる現場で、
彼女は処方箋に書かれたわずかな情報から、
最適な調剤を次々と生み出していく。
「決められた万能薬を使わず、
問題が起きたら、どうするつもりだ?」
そう問われても、彼女は即答する。
「私、失敗しませんから」
(……一度言ってみたかったのよね。このドラマの台詞)
結果は明らかだった。
患者は回復し、評判は広がる。
だが――
制度は、個人の“正
制度を変えようとする令嬢。
現場で結果を出し続ける薬師。
医師、薬局、医会、王宮。
それぞれの立場と正義が衝突する中、
医療改革はやがて「裁き」の局面へと進んでいく。
これは、
転生者の知識で無双するだけでは終わらない医療改革ファンタジー。
正しさとは何か。
責任は誰が負うべきか。
最後に裁かれるのは――
人か、制度か。
職業・聖女~稼ぐわよ!
satomi
恋愛
私は村人Aとして兄弟妹仲良く暮らしていく予定だったリリス。ある日、王都から神官がやってきて多分聖女探し。
私は聖女に認定されて、王都に連れて行かれそうになったんだけど、神官がコソコソと話しているのを耳にした。「兄弟妹なんぞ始末してしまえ!」と。
そんな人に力を使う予定はありません。
聞けば、無報酬での仕事。将来的に王妃になれるのだから。と。
ハァ?見たこともない相手との縁談なんてお断りよ!無報酬で働きまくるなんてもってのほか!
このお話、お断りします!!
愛しい人を手に入れるまでの、とある伯爵令息の話
ひとみん
恋愛
ペルソン伯爵令息レナードは、評判の悪い公爵令嬢メーガン・ティラーと婚約せざるおえなくなる。
だがその一年後、彼女の方から声高に婚約破棄を言い渡された。
理由は彼が「ドケチだから」と。
ようやく本当に愛する人を迎えに行けると、喜びを隠し切れないレナードと彼らを取り巻く人たちのお話。
流行りの婚約破棄ものを書きたくて挑戦。広いお心で読んでいただけたらと思います。
16話完結です。
ゆるゆるご都合主義ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
なろう様、カクヨム様にも投稿してます。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました
黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。
激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。
王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。
元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。
期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか?
そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは?
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※他サイトからの転載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる