不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

20、俺たちどこまでした?

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 翌朝目を覚ますと、とんでもない状態になっていた。これは……すでに重大な事が起きてしまった後なのか!? 

「――っ!! どっ……えっ!! な、なん……!?」
「フィル……どうした……?」

 目を覚ましたランデルが気怠げに目をこすっている。問題なのは俺たちが『どうして裸なんだぁぁぁーー!!!!』ということだ。隣で横たわるランデルを何度確認しても、上掛けの布団から出ている上半身が裸なことに変わりない。

「ランデル……お、俺たち……」
「もしかして覚えてないの……?」

 何その間。伏せた睫毛がか細く震えて、よく見ると、ほ……頬も赤くなってる気がする。

『どういうこと!? 何があったのか詳しく聞かせて!』と言いたいのに声が上擦って上手く喋れない。俺は口をパクパクさせてランデルに縋りついた。

「いつの間にかここで寝てた俺も悪いんだけどさ。フィルが……夜中急に脱ぎだして、お前も脱げって無理矢理……。覚えてないなんて酷いじゃん」

 ぷーっと頬を膨らませたランデルがじとっと見上げてくる。

「ど、どこまでした……?」
「そんなの俺の口から言えないよ」

 ぽすっと枕に顔を埋めてランデルは無言になってしまった。キスしたのか? それとももっと――。

 上手く喋れずオロオロする俺の横でランデルの肩が震えだした。更に「くくくくっ」と押し殺した声が混じる。そしてとうとう「あはははっ」と笑い出して、彼は自分の体に掛かっている上掛けをめくった。

「見ろよ、下はちゃんと履いてるから」


(揶揄われたのか俺……何もなくて良かったぁぁぁ……)

 一気に力が抜けて再びベッドに仰向けになった。こうなったらやり返してやろうと不敵な笑みを浮かべる。

「ランデル……よくも騙してくれたな」

「騙してないって。服を無理矢理脱がされたのは本当なんだから。しかもオーティスオーティスって……」
 ランデルの顔がカァッと赤くなった。これ、本気で恥ずかしいやつだ。痴態を晒していたのは間違いないようで急に居た堪れなくなる。

「ごめん……なさい」
「……まぁ、フィルは友達だから許すけど。それよりさ……」

 ランデルは言い淀むと上半身裸のまま俺に覆い被さってきた。

 ギシッとベッドが軋みランデルの筋肉質で男らしい体が目の前に迫る。騎士科の訓練で裸の上半身なんて何度も見たことかあるのになぜか落ち着かない。彷徨わせていた視線が、俺を見下ろすランデルとついにかち合ってしまった。

 目の前にいるのは誰ですか?
 いつものやる気なさそうで、ぼんやり眠そうな、それでいてケラケラ笑うあのランデルはどこいったんだ!?

 俺を見下ろすこの目は、狩猟本能を剥き出しにした捕食者の目だ。

「ちょっと……ランデルさん?」
「フィルはああいう事いつもしてるの? オーティス大魔法師は恋人? もしも俺が酔っ払ってたらどうなってたかな……」

(ああいう事? 実際どこまで――)
 目を逸らしたくてランデルの首筋に視線を下ろした俺は、驚きのあまり目を見開いた。先程は気付かなかった赤い内出血の跡……キスマークに全身がブワッと発熱する。

「キスマーク……やっぱり付いてる?」

 ランデルは目を細めて首筋のキスマークを指先でなぞる。その凄まじい色気と熱のこもった目に鳴り響く警笛。猛獣に狙われた野うさぎ状態の俺は、冷や汗をかきながら「俺が悪かったから……この話はもう終わり!」とランデルを押し返した。

「そだな、起きよう。そうそう、そっちは真っ裸だから気を付けろよ」
「――ひゃぁ!!」

(変な声出ちゃったじゃん!)
 耳まで真っ赤になって動転しっぱなしの俺を見て、満足そうにランデルが笑う。まったく憎らしい奴だ。

「あ、そうだ。昨日の夜、本当はこれを渡したくてここに来たんだ」
「……?」

 俺は夜中に放り投げた服探しを一旦止めて、むすーっと頬を膨らませたままランデルを見た。両手で掴んでいる物に注目する。

「ネックレス?」

 それと女性用の指輪……ピンキーリングだろうか。小さなシルバーのリングが同じくシルバーの華奢なチェーンに通されている。

「ただのネックレスじゃないよ。お守り。フィルは俺の『運命の人』だから肌身離さず身に付けてて」

 ――『運命の人』

 どうしたんだろう? なぜか頭がぼうっとする。ランデルはぼんやりしている俺の首にネックレスを付けると、おでことおでこをこつんと付けた。そして赤い瞳で俺のブルーサファイアのような深く青い瞳を覗き込んだ。

「俺たちは特別だよ」

 ぞくっと身震いする。ランデルの言葉が頭に深く刻み込まれる、そんな不思議な感覚。

「…………うん……ありがとう。毎日身に付けるよ」

 俺が小さく答えるとランデルはいつものようにへら~と笑った。その笑顔になぜかホッとする。

「腹減ったぁ~早く着替えて朝食にしようぜ」
「あぁ、すぐ着替える。ええっと……俺の服……」

 結局この日はランデルと手合わせするのが楽しすぎて、オーティスの屋敷に帰るのが夕方になってしまった。
 俺は『オーティス以外と一緒に寝てはいけない』という教訓を得て、初めてのお泊まり会は幕を閉じたのである。
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