1 / 50
第一章 陰陽師
プロローグ
しおりを挟む
日本。
バブル崩壊後、長らく経済を停滞させながらも驚異的な持久力で大国としての地位を維持し続けている極東の大国。
その国の裏側。
裏側の部分には経済大国としての姿の他にも、皇紀で2600年以上の数字を刻む歴史ある大国としての姿もあった。
「まったく何をやっていたのかねぇ……」
陰陽道。
その起源、基礎を遡れば、飛鳥時代に伝わっていた中華の陰陽五行思想に行きつく。
この陰陽道という制度は、縄文時代から弥生時代にかけての古代日本で完成した自然崇拝を旨とする淵源の上に、律令体制のおいて体系化された神道と共に、確固たる形となった。
この過程の中で、陰陽道は神道の要素を多分に盛り込んだことにより、日本の独自色が強いものとなっていた。
そんな陰陽道は今も、この令和になって七年経った今でも残っていた。
「まさか、一般人を私たちの世界に引き込んでしまうなんてぇ」
そんな陰陽道に連なる組織。
陰陽寮であったり、陰陽師であったり、それらすべては完全に隠匿され、一切表舞台には出ていなかった。
江戸時代までは、表舞台に立つこともチラホラあったが、
「はぁー」
そんな陰陽寮に所属する陰陽師の一人。
腰まで伸びた艶やかな黒髪に垂れ目で優し気な瞳に加え、グラビアアイドルなど超越する抜群のプロポーションを持った赤羽一葉は深々とため息を吐きながら、その視線を自分の隣へと送る。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
その先にいるのは寝息を立てている一人の少年。
同年代と比べても一回り小さな体を持つその子は白髪赤目という目を引く見た目をしていた。その相貌は童顔ながらも整っており、道行く人が十人いれば、十二人が振り返るほどの美しさだった。
ベッドで寝息を立てるその姿は、何処か芸術品のようにも感じた。
「どうしましょ」
そんな少年のお腹の上には黒いもふもふの毛玉が乗っかっていた。
「それにしても、あれが……妖魔なのかしらぁ」
妖魔。
その時代時代によって呼び名が変わる、日本だけではなく世界共通の敵であり、怪物。
この世界の裏側。反世界に住まうその怪物たちは不毛の土地である反世界から脱出し、現実世界へと現出することを望んでいる。
陰陽師の歴史とは、その妖魔たちとの戦いの歴史だ。
陰陽師は自分たちの使う秘儀、陰陽術を用いて妖魔たちと戦うのだ。
「ちょっと、そうは見えないけどぉ?」
そんな陰陽師の戦う妖魔と言えば、獰猛で狂暴。
そんなイメージなのだが、少年のお腹の上に鎮座しているそいつは見た目が実に可愛らしく、凶暴さもゼロで、呑気にあくびを浮かべている。
マスコットのような雰囲気を持っている。
「どうなっているのかしらねぇ?」
陰陽師の一人である赤羽一葉の元へと少し前に届いた一報は、一人の少年が反世界へと妖魔の手によって連れさられ、相手の攻撃を受けて気絶してしまったというもの。
それで医務官としての顔を持つ赤羽一葉の元へと運び込まれたのが無害そうな妖魔をお腹の上に乗せて穏やかな表情で眠る少年だ。
だが、一体何をすればいいというのだろうか?
この少年は寝ているだけ。ここから何を処置すればいいというのだろうか。
「それにここ、保健室だしぃ」
なおかつ、ここは普通に高校の保健室。
運ばれてきた少年が通っている高校の保健室である。
陰陽師は基本的に、特殊な修行によって体内へと蓄積される呪力を用いて戦う。そして、その出力方法には何かしらの道具を必要とする。
ここには陰陽術を使うための道具が何もない。
もし、この少年が何かしらの治癒行為が必要だったとしても、今の赤羽一葉では大したこと出来ない。
ここにいる彼女は本当に、高校の保健室の先生として勤めているだけなのだから。
「あいつは元気かしらっ!?」
そんな理由で、保健室に運び込まれても、少し困る。
そんなことを思っていた赤羽一葉のいる保健室へと一人の少女が慌ただしく入ってくる。
彼女は土御門涼音。
肩のラインに揃えられた綺麗な黒髪に、紫色のつり目を持った実に美しい少女だ。
その少女が視線を送る先はベッドで寝かされている少年だ。
「元気よぉ」
心配そうにベッドの上で眠らされている少年のことを眺める土御門涼音に対し、赤羽一葉は微笑ましいものを見るような視線と共に大丈夫だと声をかけるのだった。
バブル崩壊後、長らく経済を停滞させながらも驚異的な持久力で大国としての地位を維持し続けている極東の大国。
その国の裏側。
裏側の部分には経済大国としての姿の他にも、皇紀で2600年以上の数字を刻む歴史ある大国としての姿もあった。
「まったく何をやっていたのかねぇ……」
陰陽道。
その起源、基礎を遡れば、飛鳥時代に伝わっていた中華の陰陽五行思想に行きつく。
この陰陽道という制度は、縄文時代から弥生時代にかけての古代日本で完成した自然崇拝を旨とする淵源の上に、律令体制のおいて体系化された神道と共に、確固たる形となった。
この過程の中で、陰陽道は神道の要素を多分に盛り込んだことにより、日本の独自色が強いものとなっていた。
そんな陰陽道は今も、この令和になって七年経った今でも残っていた。
「まさか、一般人を私たちの世界に引き込んでしまうなんてぇ」
そんな陰陽道に連なる組織。
陰陽寮であったり、陰陽師であったり、それらすべては完全に隠匿され、一切表舞台には出ていなかった。
江戸時代までは、表舞台に立つこともチラホラあったが、
「はぁー」
そんな陰陽寮に所属する陰陽師の一人。
腰まで伸びた艶やかな黒髪に垂れ目で優し気な瞳に加え、グラビアアイドルなど超越する抜群のプロポーションを持った赤羽一葉は深々とため息を吐きながら、その視線を自分の隣へと送る。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
その先にいるのは寝息を立てている一人の少年。
同年代と比べても一回り小さな体を持つその子は白髪赤目という目を引く見た目をしていた。その相貌は童顔ながらも整っており、道行く人が十人いれば、十二人が振り返るほどの美しさだった。
ベッドで寝息を立てるその姿は、何処か芸術品のようにも感じた。
「どうしましょ」
そんな少年のお腹の上には黒いもふもふの毛玉が乗っかっていた。
「それにしても、あれが……妖魔なのかしらぁ」
妖魔。
その時代時代によって呼び名が変わる、日本だけではなく世界共通の敵であり、怪物。
この世界の裏側。反世界に住まうその怪物たちは不毛の土地である反世界から脱出し、現実世界へと現出することを望んでいる。
陰陽師の歴史とは、その妖魔たちとの戦いの歴史だ。
陰陽師は自分たちの使う秘儀、陰陽術を用いて妖魔たちと戦うのだ。
「ちょっと、そうは見えないけどぉ?」
そんな陰陽師の戦う妖魔と言えば、獰猛で狂暴。
そんなイメージなのだが、少年のお腹の上に鎮座しているそいつは見た目が実に可愛らしく、凶暴さもゼロで、呑気にあくびを浮かべている。
マスコットのような雰囲気を持っている。
「どうなっているのかしらねぇ?」
陰陽師の一人である赤羽一葉の元へと少し前に届いた一報は、一人の少年が反世界へと妖魔の手によって連れさられ、相手の攻撃を受けて気絶してしまったというもの。
それで医務官としての顔を持つ赤羽一葉の元へと運び込まれたのが無害そうな妖魔をお腹の上に乗せて穏やかな表情で眠る少年だ。
だが、一体何をすればいいというのだろうか?
この少年は寝ているだけ。ここから何を処置すればいいというのだろうか。
「それにここ、保健室だしぃ」
なおかつ、ここは普通に高校の保健室。
運ばれてきた少年が通っている高校の保健室である。
陰陽師は基本的に、特殊な修行によって体内へと蓄積される呪力を用いて戦う。そして、その出力方法には何かしらの道具を必要とする。
ここには陰陽術を使うための道具が何もない。
もし、この少年が何かしらの治癒行為が必要だったとしても、今の赤羽一葉では大したこと出来ない。
ここにいる彼女は本当に、高校の保健室の先生として勤めているだけなのだから。
「あいつは元気かしらっ!?」
そんな理由で、保健室に運び込まれても、少し困る。
そんなことを思っていた赤羽一葉のいる保健室へと一人の少女が慌ただしく入ってくる。
彼女は土御門涼音。
肩のラインに揃えられた綺麗な黒髪に、紫色のつり目を持った実に美しい少女だ。
その少女が視線を送る先はベッドで寝かされている少年だ。
「元気よぉ」
心配そうにベッドの上で眠らされている少年のことを眺める土御門涼音に対し、赤羽一葉は微笑ましいものを見るような視線と共に大丈夫だと声をかけるのだった。
30
あなたにおすすめの小説
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜
大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!?
どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる