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第一章 陰陽師
こっくりさん
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「「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」
暗くされた高校の教室に、三人の少女の声が響く。
一切の照明が落とされ、完全に窓まで閉じられて作られた暗闇の中で、唯一揺らめている蝋燭の炎によって照らされているのは白い紙だった。
その白い紙に書かれているのはあいうえお表が手書きで書かれ、その上には簡単な鳥居の絵が描かれていた。それを挟むように左に『はい』右に『いいえ』と記入されている。そして、その表の下には『1234567890』と数字が書かれていた。
「あっ!凄い。本当に『はい』の方へと動いた!」
「えー、ちょっと。二人どっちか恣意的に動かしているんじゃない?」
「……嘘」
その表を囲み、見たことのない硬貨を三人で指を抑え、キャッキャしている少女たち。
そんな彼女たちのことを僕は今、何故か眺めていた。
「うぅん」
うぅ……何で僕がこれを眺めさせられているのぉ?
いつも通りに下校としようとしていた僕は何故か、いきなり目の前にいる三人の女子に空き教室へと連れ込まれ、謎にこっくりさんをやっている姿を見てて、とだけ告げられたのだ。
マジで僕は意味もわからないままに三人の少女がこっくりさんをやっている姿を眺めさせられていた。
というか、何で今更になって、こっくりさんなんかを?あれって小学生くらいの頃に流行った謎の怪異遊びだよね?狐などの霊を呼び起こしてお告げを聞く占いのあれ。なんてこれを女子高校生三人でやっているんだ。
意味がわからない。
「ねぇ!何聞く?」
「えー?どうしよぉー」
疑問を抱えながら、僕は楽しそうに白い紙を囲んで色々と話す三人の少女を眺める。
「……えっ?」
そんな中で、僕は急に、白い紙の上に古びた狐の人形が出現し───それが、すぐにひび割れて砕け散っていく様子をこの目に映した。
「……見間違、い?」
そう思ったその瞬間。
一度、この場の音のすべてが消滅する。
静かな部屋に、不意に響く低い音が響き渡った。
「…ギィィィ」
まるで古びた扉が開くような音だった。目の前の空気が歪むと、そこに現れるものがあった。
それは狐の姿だった。しかし、それはただの狐ではなかった。目はまるで炎のように赤く、ギラギラと不気味に輝いていた。その目が少女たち一人ひとりを見つめ、彼女たちは動けなくなった。目の前に立つその姿は、普通の狐とは比べ物にならないほど巨大で、背中には薄暗い霧のようなものがまとわりついていた。
その狐は、立ち上がるようにして、ゆっくりと体を伸ばすと、まるで人間のように二足で立った。長く黒い毛皮が血のように赤く染まり、背中には何本もの鋭い角が突き出していた。それは、まるで古の神の使いのような、神秘的で恐ろしい存在だった。
そんな存在へと、この場にいる全員の視線が注がれる。
いつの間にか、こっくりさんをやっていた三人の指は白い紙に置かれている硬貨の上から離れていた。
「うそうそうそ……っ!?」
その姿を見て、こっくりさんをやっていた三人の少女の一人。僕の幼馴染でもある土御門涼音が焦ったような声を上げる。
「……っ」
僕はそんな涼音の姿を見て、ほぼ反射的に立ち上がる。
「……こっくりさん……?」
そんな中で、涼音の隣にいた少女の人が口を開いた。
震える声が部屋に響いたが、狐は答えなかった。ただ、その大きな尾がゆっくりと揺れながら、まるで少女たちを試すかのように近づいていた。
空気がますます重くなり、蝋燭の灯りが一瞬揺らめく。狐の口元がゆっくりと開き、その唇から、まるで呪文のような言葉が漏れ出した。
『『『殴殺だ』』』
その声は、人間の言葉とは思えないほど深く、低く、そして冷たかった。
怨嗟の声。地獄より響いているかのような声が幾重にも重なって響いていた。
「「……ッ」」
その声を聞き、涼音以外の女子二人は体を凍りつかせた。
「……ッ」
そんな二人を横目に涼音だけは一歩前に踏み出して、胸元から一枚の紙を取り出す。
『『『殴殺だ』』』
その涼音の元へと、狐は床を滑るかのような動きで向かって行く。足は一切動かしていない。本当に滑るように動いていた。
ただ、その仕草は、妙に遅かった。
ゆっくりと、狐は涼音の元へと向かって行き───いや、違う。狐だけじゃなくて、涼音を始めとするこの場にいる全員の動きが遅かった。だけど、ここでそれについて考えるような暇もない。
「危ないッ!」
僕は狐がすぐ目の前にまで迫っていた涼音の元へと駆け寄り、彼女の体を突き飛ばす。
「……えっ?」
あのまま、涼音を狐の前に立たせてはいけないと思ったから。
「わぶっ!?」
驚愕の視線を涼音が僕の方へと送ってくる中で、自分の感覚は何か黒いものに包まれていった。
視界を失い、聴覚を失い、触覚を失った。
自分のありとあらゆる感覚が喪失していくと共に、自分の意識が闇へと落ちていく。
そんな、そんな僕は。
────ジャラララララララッ。
最後に。
僕の耳もとへと鎖の音が響いてきたような気がした。
暗くされた高校の教室に、三人の少女の声が響く。
一切の照明が落とされ、完全に窓まで閉じられて作られた暗闇の中で、唯一揺らめている蝋燭の炎によって照らされているのは白い紙だった。
その白い紙に書かれているのはあいうえお表が手書きで書かれ、その上には簡単な鳥居の絵が描かれていた。それを挟むように左に『はい』右に『いいえ』と記入されている。そして、その表の下には『1234567890』と数字が書かれていた。
「あっ!凄い。本当に『はい』の方へと動いた!」
「えー、ちょっと。二人どっちか恣意的に動かしているんじゃない?」
「……嘘」
その表を囲み、見たことのない硬貨を三人で指を抑え、キャッキャしている少女たち。
そんな彼女たちのことを僕は今、何故か眺めていた。
「うぅん」
うぅ……何で僕がこれを眺めさせられているのぉ?
いつも通りに下校としようとしていた僕は何故か、いきなり目の前にいる三人の女子に空き教室へと連れ込まれ、謎にこっくりさんをやっている姿を見てて、とだけ告げられたのだ。
マジで僕は意味もわからないままに三人の少女がこっくりさんをやっている姿を眺めさせられていた。
というか、何で今更になって、こっくりさんなんかを?あれって小学生くらいの頃に流行った謎の怪異遊びだよね?狐などの霊を呼び起こしてお告げを聞く占いのあれ。なんてこれを女子高校生三人でやっているんだ。
意味がわからない。
「ねぇ!何聞く?」
「えー?どうしよぉー」
疑問を抱えながら、僕は楽しそうに白い紙を囲んで色々と話す三人の少女を眺める。
「……えっ?」
そんな中で、僕は急に、白い紙の上に古びた狐の人形が出現し───それが、すぐにひび割れて砕け散っていく様子をこの目に映した。
「……見間違、い?」
そう思ったその瞬間。
一度、この場の音のすべてが消滅する。
静かな部屋に、不意に響く低い音が響き渡った。
「…ギィィィ」
まるで古びた扉が開くような音だった。目の前の空気が歪むと、そこに現れるものがあった。
それは狐の姿だった。しかし、それはただの狐ではなかった。目はまるで炎のように赤く、ギラギラと不気味に輝いていた。その目が少女たち一人ひとりを見つめ、彼女たちは動けなくなった。目の前に立つその姿は、普通の狐とは比べ物にならないほど巨大で、背中には薄暗い霧のようなものがまとわりついていた。
その狐は、立ち上がるようにして、ゆっくりと体を伸ばすと、まるで人間のように二足で立った。長く黒い毛皮が血のように赤く染まり、背中には何本もの鋭い角が突き出していた。それは、まるで古の神の使いのような、神秘的で恐ろしい存在だった。
そんな存在へと、この場にいる全員の視線が注がれる。
いつの間にか、こっくりさんをやっていた三人の指は白い紙に置かれている硬貨の上から離れていた。
「うそうそうそ……っ!?」
その姿を見て、こっくりさんをやっていた三人の少女の一人。僕の幼馴染でもある土御門涼音が焦ったような声を上げる。
「……っ」
僕はそんな涼音の姿を見て、ほぼ反射的に立ち上がる。
「……こっくりさん……?」
そんな中で、涼音の隣にいた少女の人が口を開いた。
震える声が部屋に響いたが、狐は答えなかった。ただ、その大きな尾がゆっくりと揺れながら、まるで少女たちを試すかのように近づいていた。
空気がますます重くなり、蝋燭の灯りが一瞬揺らめく。狐の口元がゆっくりと開き、その唇から、まるで呪文のような言葉が漏れ出した。
『『『殴殺だ』』』
その声は、人間の言葉とは思えないほど深く、低く、そして冷たかった。
怨嗟の声。地獄より響いているかのような声が幾重にも重なって響いていた。
「「……ッ」」
その声を聞き、涼音以外の女子二人は体を凍りつかせた。
「……ッ」
そんな二人を横目に涼音だけは一歩前に踏み出して、胸元から一枚の紙を取り出す。
『『『殴殺だ』』』
その涼音の元へと、狐は床を滑るかのような動きで向かって行く。足は一切動かしていない。本当に滑るように動いていた。
ただ、その仕草は、妙に遅かった。
ゆっくりと、狐は涼音の元へと向かって行き───いや、違う。狐だけじゃなくて、涼音を始めとするこの場にいる全員の動きが遅かった。だけど、ここでそれについて考えるような暇もない。
「危ないッ!」
僕は狐がすぐ目の前にまで迫っていた涼音の元へと駆け寄り、彼女の体を突き飛ばす。
「……えっ?」
あのまま、涼音を狐の前に立たせてはいけないと思ったから。
「わぶっ!?」
驚愕の視線を涼音が僕の方へと送ってくる中で、自分の感覚は何か黒いものに包まれていった。
視界を失い、聴覚を失い、触覚を失った。
自分のありとあらゆる感覚が喪失していくと共に、自分の意識が闇へと落ちていく。
そんな、そんな僕は。
────ジャラララララララッ。
最後に。
僕の耳もとへと鎖の音が響いてきたような気がした。
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