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聖女の暴力編
第57話 聖女のトラブルバスター4 解決っ!!
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ユメカナワナエルはお母さんのビンタで20mくらい吹っ飛んだ。
大丈夫かな?
私含めたお母さん以外の全員が慌てて様子を見に行くと、ユメカナワナエルの顔が大きく腫れあがっていた。
「大丈夫ですか? これ以上泣くと、もっとビンタされるので泣き止んだ方が良いですよ?」
「え? え? 俺は一体何をして……。」
「何言ってるんですか。お説教されてたでしょう?」
私の発言に戸惑いを隠せない様子。そして、さっきまでの事を覚えていないかのようなこの態度。
これはまさか……記憶喪失?
「お母さんのビンタが強すぎて、たった今の出来事を忘れてしまったのでしょうか。」
全員が困惑している中、お母さんが近づいてきた。
「大丈夫? でも、ちゃんと働かないで夢みたいな事ばかり言ってるから悪いのよ?」
「え?」
「まだ分からないのね。」
お母さんは呆れたように言い放ち、再びビンタの体勢に移行すると……
「ひぃぃ!! 働く! 働きます!!」
「うんうん。分かってくれたようね。働いたら、ちゃんと家賃を払うのよ?」
「はい! 分かりました!」
あれ? 忘れてたんじゃないの?
「ユメカナワナエルはさっきまでの事を覚えてるの?」
アドンが不思議そうな顔で質問する。
「あ、いやぁ……この人がビンタしそうになった瞬間、俺の本能が叫んだっス。言う事を聞けってね。正直、自分がどうしてここにいるかも分かってないっスけど……。」
この人はきっと、体で覚えるタイプなのね。だったらお母さんの部下に向いてるかも。
「お母さんの部下にしてあげたら?」
私が思った事を口にすると、ユメカナワナエルは大慌てで首をブンブンと横に振る。
「大家さんの部下になるっス! 俺は大家さんの所で昔から働きたかったっス! 夢なんス! お願いしますよぉぉ……あの人の部下になったら俺死んじゃうっスぅ。」
彼は必死でアドンの足にしがみつき、アドン魔神軍入りを希望している。
そんな大げさな……。お母さんだって自分の部下には辛くあたらないよ。
変な事ばかり言ってると叩くかもしれないけど。というか、本当は覚えてる?
「まぁ、1級悪魔の配下は欲しかったからありがたいんだけど……。君、ちゃんと言う事聞けるの? なんか真面目に働いてくれなさそうに見えるんだよねぇ。」
アドンの言う事は尤もね。私にもそう見えるもの。
「ちゃんと働くっス! もう大家さんが黒だと言えば、白でも全力で黒だと思い込むっス!」
それは極端に過ぎると思う。
「そこまで言うなら……。君の滞納した家賃は給料から天引きするからね?」
「ありがとうっス! 大家さんはマジで神っ!」
「うん、魔神だからあながち間違いではないけどね?」
ユメカナワナエルの就職が決まった。これからはアドン魔神軍入りするので、私の部下として扱う事にしよう。
「じゃあ早速僕の上司に挨拶して。こちらは僕……魔神アドンの主人アリエンナちゃん。」
「よろしくお願いします。」
「よろしくっス。」
互いに頭を下げて挨拶をする。
「で、そっちに居るのがアリエンナちゃんのお母さん、アリエーンちゃんだよ。」
「え?」
どうしたの?
「嘘っスよね?」
「本当だよ。」
「つまり、俺はそこの人の娘の所に就職したって事っスか……?」
「そうなるね。」
恐る恐る質問するユメカナワナエルと、あっさりと答えるアドン。どうしたの?
「やっぱり、俺には向かないかもしれ……」
「何ですって……?」
お母さんが再びビンタしようとしている。
「ちゃんと働くっス!!」
どっちなのよ?
それにしてもお母さんの身体強化魔法、またちょっと強くなってない?
「とりあえず、これで一件落着かな。ユメカナワナエルは荷物をまとめておいて。魔神軍は基本的に城に住むからさ。」
「わかったっス。」
「後で迎えに来るからね? ちなみに逃げたりすると、この二人がどこまでも追っていくから逃げないように。特にアリエンナちゃんは僕より強いから怒らせないで。」
「わ、わかったっス。」
何で焦ってるの? もしかして逃げようとしてた?
「逃げないように一回ブッ叩いておきましょうか?」
私の魔法『みんな友達』で心を通わせれば逃げなくなるかもしれな……
「ひぃぃぃ!!」
うるさいわね。
「逃げないなら何もしませんよ?」
「絶対に逃げたりしません!」
土下座までしてるし、言う事聞くなら別に叩かなくても良いか。
「じゃ、次に行くよ?」
「はい。」
「ちょっと待って。私は飽きたから一旦戻るわ。」
それじゃあ、と言い残してお母さんは帰って行った。
「アリエーンちゃんにはつまらなかったかな?」
「きっと帰ってベーゼブと修行するんだと思います。今回は戦いにもなりませんでしたし。」
「そ、そうかい。」
結局、トラブルは全部アドンが経営する集合住宅ばかりで、二件回って三体の1級悪魔に家賃を支払わせた。
「アドンは住人に甘いんじゃないですか?」
「そうは言っても、戦争中だしフリーの1級悪魔とまで戦っていられなくてね。」
事情が事情だし、あまり責められないか。
「今度からは私に言って下さいね。きちんとお話をしておきますので。」
「助かるよ。アリエンナちゃんのお話は良く効くからね。……あれがお話かどうかは議論の余地があるけど。」
私ってもしかしたら交渉が得意なのかもしれないわ。
取り立て屋さんを始めたら皆きっちり払ってくれそうな気がする。
大丈夫かな?
私含めたお母さん以外の全員が慌てて様子を見に行くと、ユメカナワナエルの顔が大きく腫れあがっていた。
「大丈夫ですか? これ以上泣くと、もっとビンタされるので泣き止んだ方が良いですよ?」
「え? え? 俺は一体何をして……。」
「何言ってるんですか。お説教されてたでしょう?」
私の発言に戸惑いを隠せない様子。そして、さっきまでの事を覚えていないかのようなこの態度。
これはまさか……記憶喪失?
「お母さんのビンタが強すぎて、たった今の出来事を忘れてしまったのでしょうか。」
全員が困惑している中、お母さんが近づいてきた。
「大丈夫? でも、ちゃんと働かないで夢みたいな事ばかり言ってるから悪いのよ?」
「え?」
「まだ分からないのね。」
お母さんは呆れたように言い放ち、再びビンタの体勢に移行すると……
「ひぃぃ!! 働く! 働きます!!」
「うんうん。分かってくれたようね。働いたら、ちゃんと家賃を払うのよ?」
「はい! 分かりました!」
あれ? 忘れてたんじゃないの?
「ユメカナワナエルはさっきまでの事を覚えてるの?」
アドンが不思議そうな顔で質問する。
「あ、いやぁ……この人がビンタしそうになった瞬間、俺の本能が叫んだっス。言う事を聞けってね。正直、自分がどうしてここにいるかも分かってないっスけど……。」
この人はきっと、体で覚えるタイプなのね。だったらお母さんの部下に向いてるかも。
「お母さんの部下にしてあげたら?」
私が思った事を口にすると、ユメカナワナエルは大慌てで首をブンブンと横に振る。
「大家さんの部下になるっス! 俺は大家さんの所で昔から働きたかったっス! 夢なんス! お願いしますよぉぉ……あの人の部下になったら俺死んじゃうっスぅ。」
彼は必死でアドンの足にしがみつき、アドン魔神軍入りを希望している。
そんな大げさな……。お母さんだって自分の部下には辛くあたらないよ。
変な事ばかり言ってると叩くかもしれないけど。というか、本当は覚えてる?
「まぁ、1級悪魔の配下は欲しかったからありがたいんだけど……。君、ちゃんと言う事聞けるの? なんか真面目に働いてくれなさそうに見えるんだよねぇ。」
アドンの言う事は尤もね。私にもそう見えるもの。
「ちゃんと働くっス! もう大家さんが黒だと言えば、白でも全力で黒だと思い込むっス!」
それは極端に過ぎると思う。
「そこまで言うなら……。君の滞納した家賃は給料から天引きするからね?」
「ありがとうっス! 大家さんはマジで神っ!」
「うん、魔神だからあながち間違いではないけどね?」
ユメカナワナエルの就職が決まった。これからはアドン魔神軍入りするので、私の部下として扱う事にしよう。
「じゃあ早速僕の上司に挨拶して。こちらは僕……魔神アドンの主人アリエンナちゃん。」
「よろしくお願いします。」
「よろしくっス。」
互いに頭を下げて挨拶をする。
「で、そっちに居るのがアリエンナちゃんのお母さん、アリエーンちゃんだよ。」
「え?」
どうしたの?
「嘘っスよね?」
「本当だよ。」
「つまり、俺はそこの人の娘の所に就職したって事っスか……?」
「そうなるね。」
恐る恐る質問するユメカナワナエルと、あっさりと答えるアドン。どうしたの?
「やっぱり、俺には向かないかもしれ……」
「何ですって……?」
お母さんが再びビンタしようとしている。
「ちゃんと働くっス!!」
どっちなのよ?
それにしてもお母さんの身体強化魔法、またちょっと強くなってない?
「とりあえず、これで一件落着かな。ユメカナワナエルは荷物をまとめておいて。魔神軍は基本的に城に住むからさ。」
「わかったっス。」
「後で迎えに来るからね? ちなみに逃げたりすると、この二人がどこまでも追っていくから逃げないように。特にアリエンナちゃんは僕より強いから怒らせないで。」
「わ、わかったっス。」
何で焦ってるの? もしかして逃げようとしてた?
「逃げないように一回ブッ叩いておきましょうか?」
私の魔法『みんな友達』で心を通わせれば逃げなくなるかもしれな……
「ひぃぃぃ!!」
うるさいわね。
「逃げないなら何もしませんよ?」
「絶対に逃げたりしません!」
土下座までしてるし、言う事聞くなら別に叩かなくても良いか。
「じゃ、次に行くよ?」
「はい。」
「ちょっと待って。私は飽きたから一旦戻るわ。」
それじゃあ、と言い残してお母さんは帰って行った。
「アリエーンちゃんにはつまらなかったかな?」
「きっと帰ってベーゼブと修行するんだと思います。今回は戦いにもなりませんでしたし。」
「そ、そうかい。」
結局、トラブルは全部アドンが経営する集合住宅ばかりで、二件回って三体の1級悪魔に家賃を支払わせた。
「アドンは住人に甘いんじゃないですか?」
「そうは言っても、戦争中だしフリーの1級悪魔とまで戦っていられなくてね。」
事情が事情だし、あまり責められないか。
「今度からは私に言って下さいね。きちんとお話をしておきますので。」
「助かるよ。アリエンナちゃんのお話は良く効くからね。……あれがお話かどうかは議論の余地があるけど。」
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