4 / 25
騎士の後悔。
しおりを挟む公園のベンチに並んで座った二人。
笑いが収まると、騎士の青年はエミリアに質問をしてきた。
「それで結局、君は何故一人でここに?その格好は、パレードを見に来たのか?まだ小さそうだけど。」
エミリアは、ピンクのレースたっぷりのワンピースを着せられていた。
頭にもピンクのリボンを左右に付けられ、中身が三十路手前のエミリアには、ハッキリ言って厳しい出で立ちである。
実際、着る時にかなり抵抗はしたのだが、メイド達に押しきられてしまった。
五歳のエミリアは可愛らしい顔立ちで、くるくるした茶色い髪をしている為、本人の意思とは裏腹に、可愛い格好が良く似合うのである。
「ごさいです。しゅくがぱれーどをかぞくとはいけんしました。いまはさんさくちゅうです。」
右手を開いて五歳だと訴えると、青年は目を丸くする。
「五歳!?いや、見た目はいかにも五歳だが、やけに大人びた話し方というか、子供らしくないというか・・・」
「よくいわれます。」
エミリアが動じずにしれっと答えると、クスクス笑われた。
「変わった女の子だな。で、なんで隣に座ったんだ?」
笑い顔からは、パレードの際の悲壮感は感じられない。
しかし、辛そうな表情とさきほど手にしていた物が気になり、エミリアは思いきって聞いてみることにした。
「おにいさん、きしだんちょうさんのむすこなのでしょう?」
少し驚いた顔を見せたが、青年は冷静に頷く。
「よく知ってるな。正確には、前騎士団長だけどな。俺は一人息子のダニエルだ。」
青年の名前はダニエルというらしい。
名前を教えてもらえたことで、もう少し突っ込んで訊いてみる。
「だにえるさま、ぱれーどのときにつらそうなかおをしてました。りゆうがきになって。」
ダニエルは今度はあからさまに動揺した様子を見せた後、眉を下げた。
「俺、そんな顔してたか?ダメだろ、パレード中に。しかも五歳に指摘されるようじゃ、騎士失格だな。」
情けないと自嘲するが、エミリアが更に促すと、ポツポツと話し出した。
「俺、三年前の戦いが、騎士としての初めての仕事だったんだ。やる気だけが空回っていた自覚はある。一人で敵陣の奥まで突っ込んで、囲まれた。」
当時のことを淡々と語るダニエルを、エミリアはただ黙って見つめていた。
「いよいよまずいと思った時、親父が単独で助けに入った。なんとか持ち堪え、駆け付けた援軍とその勢いのまま敵を鎮圧した。」
そこでダニエルは一度息を吐くと、覚悟を決めたような強い眼差しで続きを話し出した。
「俺は知らなかったんだ。親父が俺を助けた時にケガを負っていたことを。誰にも悟られないようにケガを隠し、無理をしたことが原因で、親父は去年死んだ。」
エミリアは息を飲んだ。
ダニエルは思っていた以上に、重いものを抱えていたらしい。
「俺があの時、無茶をしなければ・・・。ケガに気付いて、対処していれば・・・。親父はどこでケガをしたか最後まで言わなかったし、騎士団の皆も俺のせいだと知らない。俺の勝手な行動は、さすが団長の息子だ、勇気があるなどと評価され、誰も俺を責めない。本当は全て俺のせいなのに・・・。親父も俺を恨んでいたのかもしれない。」
体を折り、顔を歪ませて耐える姿は、エミリアにもその後悔の深さをうかがわせ、胸が痛かった。
「その、てにもっているものはなんですか?」
エミリアが指を差すと、ダニエルが手にしていた太い棒状のものを見せてくれる。
「短剣だ。親父の形見なんだ。死ぬ間際に渡された。これを見ると、もっと精進しろって言われてる気がするんだ。やっぱり親父は俺を恨んでいたんだろうな。」
ダニエルは、わざと乾いた笑いを見せながらエミリアの方を向くが、エミリアには気になることがあった。
息子を庇って、団長さんは後悔なんてしたのかな?
この世界のことはまだわからないけど、恨んでなんてないんじゃないの?
エミリアはダニエルの手元を見ながらお願いしてみた。
「そのかたな、ちょっとみせてもらえますか?」
「これを?いいけど、気を付けろよ。危ないからな。」
エミリアは短剣を丁寧に受け取ると、まじまじと見つめた。
鞘と持ち手に細かい細工が施され、美しい。
逆さまにしたり、注意深く観察していたら、あることに気付いた。
あれ?この部分に何か・・・
力を込めて、少しだけ刀を抜いてみると、すかさずダニエルの焦った声が聞こえた。
「おい、危ないぞ!抜くのはやめとけ。」
「ちがうんです。ここ、みてください。なにかかいてあるの。」
エミリアがダニエルに気になるところを伝えると、顔を寄せて調べ始めた。
「確かにこれは文字だな。なんて彫ってあるんだ?えーと、『私は大切‥な者‥を守った。お前‥も大切な者を‥守れ』?」
団長さん!!
やっぱり、息子を愛していたのね!
エミリアは顔を綻ばせた。
489
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。
王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。
教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。
惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。
簡単に裏切る人になんてもう未練はない。
むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。
そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。
それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。
必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが…
正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる