【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ

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騎士の後悔。

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公園のベンチに並んで座った二人。
笑いが収まると、騎士の青年はエミリアに質問をしてきた。

「それで結局、君は何故一人でここに?その格好は、パレードを見に来たのか?まだ小さそうだけど。」

エミリアは、ピンクのレースたっぷりのワンピースを着せられていた。
頭にもピンクのリボンを左右に付けられ、中身が三十路手前のエミリアには、ハッキリ言って厳しい出で立ちである。
実際、着る時にかなり抵抗はしたのだが、メイド達に押しきられてしまった。
五歳のエミリアは可愛らしい顔立ちで、くるくるした茶色い髪をしている為、本人の意思とは裏腹に、可愛い格好が良く似合うのである。

「ごさいです。しゅくがぱれーどをかぞくとはいけんしました。いまはさんさくちゅうです。」

右手を開いて五歳だと訴えると、青年は目を丸くする。

「五歳!?いや、見た目はいかにも五歳だが、やけに大人びた話し方というか、子供らしくないというか・・・」

「よくいわれます。」

エミリアが動じずにしれっと答えると、クスクス笑われた。

「変わった女の子だな。で、なんで隣に座ったんだ?」

笑い顔からは、パレードの際の悲壮感は感じられない。
しかし、辛そうな表情とさきほど手にしていた物が気になり、エミリアは思いきって聞いてみることにした。

「おにいさん、きしだんちょうさんのむすこなのでしょう?」

少し驚いた顔を見せたが、青年は冷静に頷く。

「よく知ってるな。正確には、前騎士団長だけどな。俺は一人息子のダニエルだ。」

青年の名前はダニエルというらしい。
名前を教えてもらえたことで、もう少し突っ込んで訊いてみる。

「だにえるさま、ぱれーどのときにつらそうなかおをしてました。りゆうがきになって。」

ダニエルは今度はあからさまに動揺した様子を見せた後、眉を下げた。

「俺、そんな顔してたか?ダメだろ、パレード中に。しかも五歳に指摘されるようじゃ、騎士失格だな。」

情けないと自嘲するが、エミリアが更に促すと、ポツポツと話し出した。

「俺、三年前の戦いが、騎士としての初めての仕事だったんだ。やる気だけが空回っていた自覚はある。一人で敵陣の奥まで突っ込んで、囲まれた。」

当時のことを淡々と語るダニエルを、エミリアはただ黙って見つめていた。

「いよいよまずいと思った時、親父が単独で助けに入った。なんとか持ち堪え、駆け付けた援軍とその勢いのまま敵を鎮圧した。」

そこでダニエルは一度息を吐くと、覚悟を決めたような強い眼差しで続きを話し出した。

「俺は知らなかったんだ。親父が俺を助けた時にケガを負っていたことを。誰にも悟られないようにケガを隠し、無理をしたことが原因で、親父は去年死んだ。」

エミリアは息を飲んだ。
ダニエルは思っていた以上に、重いものを抱えていたらしい。

「俺があの時、無茶をしなければ・・・。ケガに気付いて、対処していれば・・・。親父はどこでケガをしたか最後まで言わなかったし、騎士団の皆も俺のせいだと知らない。俺の勝手な行動は、さすが団長の息子だ、勇気があるなどと評価され、誰も俺を責めない。本当は全て俺のせいなのに・・・。親父も俺を恨んでいたのかもしれない。」

体を折り、顔を歪ませて耐える姿は、エミリアにもその後悔の深さをうかがわせ、胸が痛かった。

「その、てにもっているものはなんですか?」

エミリアが指を差すと、ダニエルが手にしていた太い棒状のものを見せてくれる。

「短剣だ。親父の形見なんだ。死ぬ間際に渡された。これを見ると、もっと精進しろって言われてる気がするんだ。やっぱり親父は俺を恨んでいたんだろうな。」

ダニエルは、わざと乾いた笑いを見せながらエミリアの方を向くが、エミリアには気になることがあった。

息子を庇って、団長さんは後悔なんてしたのかな?
この世界のことはまだわからないけど、恨んでなんてないんじゃないの?

エミリアはダニエルの手元を見ながらお願いしてみた。

「そのかたな、ちょっとみせてもらえますか?」

「これを?いいけど、気を付けろよ。危ないからな。」

エミリアは短剣を丁寧に受け取ると、まじまじと見つめた。
鞘と持ち手に細かい細工が施され、美しい。
逆さまにしたり、注意深く観察していたら、あることに気付いた。

あれ?この部分に何か・・・

力を込めて、少しだけ刀を抜いてみると、すかさずダニエルの焦った声が聞こえた。

「おい、危ないぞ!抜くのはやめとけ。」

「ちがうんです。ここ、みてください。なにかかいてあるの。」

エミリアがダニエルに気になるところを伝えると、顔を寄せて調べ始めた。

「確かにこれは文字だな。なんて彫ってあるんだ?えーと、『私は大切‥な者‥を守った。お前‥も大切な者を‥守れ』?」

団長さん!!
やっぱり、息子を愛していたのね!

エミリアは顔を綻ばせた。






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