【完結】マッチョ大好きマチョ村(松村)さん、異世界転生したらそこは筋肉パラダイスでした!

櫻野くるみ

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ここはパラダイス?

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『マチョ! 起きなって! 先生に指されてるよ!』
『マチョ村、爆睡じゃん。ウケるんだけど』
『松村さーん。次読んでー。聞いてるー?』

懐かしい声がする。
確かこれは……って、え、今って授業中?
まずい、早く起きなきゃ!

「はいいっ、松村起きてます!」

覚醒した私はガバッと身を起こした。
一生懸命起きてますアピールをしようとして――ようやくおかしなことに気付いた。
なぜかベッドにいるし、ここはどう見ても教室ではないだろう。

「あれ? ここは?」
「カレン! 大丈夫? どこか痛くない?」
「良かった、気が付いたか。ごめんな、カレンちゃん。俺、竿の傷みに全然気が付かなくて」

母とホセが心配そうにベッドの左右から覗き込んでいる。

あれ? お母さんとホセさんだ。
……そうか、私、洗濯物を干している最中に竿が落ちてきたんだっけ。
あ、たんこぶが出来てる。

しかし、それより気になるのはさきほどの記憶だ。
松村香蓮だった頃の記憶がまざまざと蘇ってくる。

これって前世の記憶ってやつなのかしら?
異世界転生って前世では流行っていたけれど、まさか自分の身に起きるとはね。

私がぼんやりしているからか、心配したホセが水を差し出してくれた。

「カレンちゃん、飲めるかい? 医者は心配ないって言っていたけど……」

我に返り、「ううん、大丈夫」と言おうとしていた私は、ふとホセの腕が気になった。
いや、腕だけではない。
視線を上げると、肩、胸の厚みが目に入った。
しっかりと鍛え上げられているいつもの見慣れたホセの体なのに、なぜか目が離せなくなってしまう。

「ホセさん……その筋肉……」
「筋肉? 俺の筋肉がどうかした? あ、また暑苦しいとか言うんだろ? 今は我慢して――」
「いやーん、最高すぎる! なにこれ? さすが騎士の実用性に特化した筋肉! こんな間近で見られるなんて!」
「へ?」
「あ、ホセさん動かないで! こんなマッチョ見たことないんだけど。うわ、詰まってる! このしなやかで弾力のある触り心地……夢でも見ているのかしら」

夢を見ている気分なのはホセのほうだった。
あれほど筋肉を嫌っていたカレンが、とろけそうな笑顔でペタペタ自分の体を触っているのだ。
カレンの母も呆気にとられたのか、目をパチクリさせている。

異様な空気の中、カレンの部屋のドアがけたたましく開いた。
騎士団長のレオナードを先頭にして、流れ込んでくる騎士の面々……。
仕事は終わったのだろうか。

「カレン!! 目が覚めたのか? 倒れたって聞いて生きた心地がしなかったぞ」
「カレンちゃん、無事で良かったよー」
「洗濯物、溜め込んでごめんな」

レオナードが青褪めた顔で近付くと、他の騎士も私のベッドを囲むように群がった。
圧が凄いし、一気に部屋人口の密度が上がったのは気のせいではないと思う。
マッチョばかりなのだから当然であるーーが。

「キャーー!! パラダイス? ここは筋肉パラダイスなの!? 私、死んで天国に来ちゃったのね!」

マッチョまみれの状況に興奮した私は、もう一度気を失ったのだった。
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