4 / 20
モブでも幸せ感じてます
しおりを挟む
ヒューゴ・コックスは『イケ夢』の攻略対象の1人だ。
公爵令息で、お父さんはこの国の宰相をしている。
つまり、ヒューゴは『宰相の息子』で、ゲームでは『インテリ枠』にあたる人物なのだ。
前世の私の推しは、もちろんヒューゴ様だった。
クールで沈着冷静、頭が良くて冷たい印象を与えがちだけれど、仲良くなるとわかりづらい優しさに気付けて、ハッピーエンドを迎える頃には溺愛してくるという、私にめっちゃ刺さるキャラだった。
ダークブルーの髪にグレーの瞳が、ハニーブロンドのヒロインと並ぶとお似合いで、飽きずにスチルを眺めたものだ。
なんで忘れていたんだ私!こんな大事なことを!!
自分がヒロインじゃなくたって、推しを愛でるのは自由だというのに!!
しかもルイーザはなんと、ヒューゴ様の幼馴染みなのだ。
ヒューゴ様は兄のテオドールと同い年で、ルイーザとは3歳差の19歳。
普段は「ヒュー」と呼んでいるほど、昔から家族ぐるみの付き合いなのである。
ヒロインのマリアベル目線で「ヒューゴ様」と呼んでいた記憶を持つ私には、そんな馴れ馴れしい呼び方はハードルが高過ぎるが。
「ルー?本当にどうした?もしかしてテオドール達を心配しているのか?」
うわぁぁぁぁ、愛称で呼ばれちまったい!
推しのいい声で呼ばれるのは正直心臓にくる。
しかも前世の自分の名前が『瑠奈』で、私をルーと呼んでいた友達がいたことまで思い出し、尚更悶えてしまう。
黙りこくっている私を不審に思ったのか、なんとヒューゴがベンチの隣に座ってきた。
手を伸ばせば触れられる距離に、私の心臓はバクバクと激しく鳴り響き、あまりの速さに「このまま死ぬのでは?」と思ってしまう。
しかしこのままずっと黙りこんで、トキメキで死ぬわけにもいかない。
私は意を決して返事をした。
「な、なんでもないわ、ヒュ、ヒュー……。少し休んでいただけだから。お兄ちゃん達のことは確かに少し心配しているけど」
なんとか言えたーー!
かなりどもってたけど!!
ヒューって呼ぶの、めっちゃ緊張したよぉぉぉ。
下手な笑顔を作ってヒューゴの方を向いたが、彼は眉間にシワを寄せてこちらを見ている。
ん?なんか怒ってらっしゃる??
「何が心配なんだ?出兵はいつものことだし、今までは不安な素振りなど見せたことなかっただろう?」
はい、仰る通りです。
だって今までのルイーザは負けることなんて考えたこともなかったし、無策だろうと勝つものだと思い込んでいたから。
でも私の『瑠奈』の部分が、いくら戦力では勝っていても、戦場ではいつ何時何が起きるかわからないし、300という敵の数自体も嘘かもしれないと勘ぐってしまう。
「そうなんだけど。ヒューも知ってる通り、お兄ちゃんってば作戦もなく勢いだけで突っ込んでいくスタイルでしょ?今更なんだけど、それでいいのかな?って」
私の言葉にヒューゴは衝撃を受けたようで、大きく目を見張った。
「驚いたな。ガルシアの娘のルーがそんなことを言い出すなんて」
待て待て!私をーーいや、うちの家をどんだけ脳筋だと思っとるんじゃい!!
まだ大したこと言ってないのに、そんなに驚かれるとは……。
まぁ、うちは引かれるレベルの脳筋一家だけども!!
「私だって色々考えるんですー!相手の戦力の情報は本当に正しいのかとか、300に見せかけて実はもっと多くの兵が隠れているんじゃないかとか。あ、こちらが知らない武器を持っているとか、こちらの陣営にスパイがいる可能性とか!!」
考えれば考えるほど、楽観的な父と兄が心配になってきた。
単純で思い込みも激しいが、私には優しくてかけがえのない家族なのだ。
死んで欲しくなどないし、元気に帰ってきてくれることを望んでいる。
「しばらく会わないうちに成長したな。まさかルーがそんなことを思案するとは。だが、安心するといい。情報は確かだし、今回の戦いに不安になる要素はない。ルーは笑って過ごしていろ」
なんでそんなことを言い切れるの?と疑問が浮かんだところで、ヒューゴが大きな手で私の頭をポンポンした。
え?ポンポン??
推しに頭ポンポンされてますこと??
疑問なんて綺麗に消え去り、頭に血が上って顔が赤くなるのがわかった。
夜で良かった。
もしかして鼻血出てるかもしれない……。
そんな沸騰した頭に、ふとあるスチルが浮かんだ。
『イケ恋』のヒューゴルートを進めていくと見られるスチル。
お城の夜会で疲れたヒロインが庭のベンチで休んでいると、ヒューゴが現れて隣に座り、マリアベルと会話を交わすのだ。
いつまでもダンスが上達しないと悩みを打ち明けるマリアベルに、ヒューゴが「君は頑張っているよ」と言って優しい瞳で頭を撫でるシーンが、マリアベル目線でスチルになっている。
そのスチルのヒューゴが目の前にいた。
まじか!!
まさかモブの私に、同じシチュエーションが起こるとは……。
待てよ?
私って、ヒューゴルートの途中並みの好感度はすでにゲットしてるってこと!?
ただのモブなのに。
ビバ!幼馴染み!!
推しが最初から優しいなんて、幸福の極み!!
ああ、尊い……。
私はセーブデータに残せない推しの姿を、目をかっぴらいて瞳に焼き付けたのだった。
公爵令息で、お父さんはこの国の宰相をしている。
つまり、ヒューゴは『宰相の息子』で、ゲームでは『インテリ枠』にあたる人物なのだ。
前世の私の推しは、もちろんヒューゴ様だった。
クールで沈着冷静、頭が良くて冷たい印象を与えがちだけれど、仲良くなるとわかりづらい優しさに気付けて、ハッピーエンドを迎える頃には溺愛してくるという、私にめっちゃ刺さるキャラだった。
ダークブルーの髪にグレーの瞳が、ハニーブロンドのヒロインと並ぶとお似合いで、飽きずにスチルを眺めたものだ。
なんで忘れていたんだ私!こんな大事なことを!!
自分がヒロインじゃなくたって、推しを愛でるのは自由だというのに!!
しかもルイーザはなんと、ヒューゴ様の幼馴染みなのだ。
ヒューゴ様は兄のテオドールと同い年で、ルイーザとは3歳差の19歳。
普段は「ヒュー」と呼んでいるほど、昔から家族ぐるみの付き合いなのである。
ヒロインのマリアベル目線で「ヒューゴ様」と呼んでいた記憶を持つ私には、そんな馴れ馴れしい呼び方はハードルが高過ぎるが。
「ルー?本当にどうした?もしかしてテオドール達を心配しているのか?」
うわぁぁぁぁ、愛称で呼ばれちまったい!
推しのいい声で呼ばれるのは正直心臓にくる。
しかも前世の自分の名前が『瑠奈』で、私をルーと呼んでいた友達がいたことまで思い出し、尚更悶えてしまう。
黙りこくっている私を不審に思ったのか、なんとヒューゴがベンチの隣に座ってきた。
手を伸ばせば触れられる距離に、私の心臓はバクバクと激しく鳴り響き、あまりの速さに「このまま死ぬのでは?」と思ってしまう。
しかしこのままずっと黙りこんで、トキメキで死ぬわけにもいかない。
私は意を決して返事をした。
「な、なんでもないわ、ヒュ、ヒュー……。少し休んでいただけだから。お兄ちゃん達のことは確かに少し心配しているけど」
なんとか言えたーー!
かなりどもってたけど!!
ヒューって呼ぶの、めっちゃ緊張したよぉぉぉ。
下手な笑顔を作ってヒューゴの方を向いたが、彼は眉間にシワを寄せてこちらを見ている。
ん?なんか怒ってらっしゃる??
「何が心配なんだ?出兵はいつものことだし、今までは不安な素振りなど見せたことなかっただろう?」
はい、仰る通りです。
だって今までのルイーザは負けることなんて考えたこともなかったし、無策だろうと勝つものだと思い込んでいたから。
でも私の『瑠奈』の部分が、いくら戦力では勝っていても、戦場ではいつ何時何が起きるかわからないし、300という敵の数自体も嘘かもしれないと勘ぐってしまう。
「そうなんだけど。ヒューも知ってる通り、お兄ちゃんってば作戦もなく勢いだけで突っ込んでいくスタイルでしょ?今更なんだけど、それでいいのかな?って」
私の言葉にヒューゴは衝撃を受けたようで、大きく目を見張った。
「驚いたな。ガルシアの娘のルーがそんなことを言い出すなんて」
待て待て!私をーーいや、うちの家をどんだけ脳筋だと思っとるんじゃい!!
まだ大したこと言ってないのに、そんなに驚かれるとは……。
まぁ、うちは引かれるレベルの脳筋一家だけども!!
「私だって色々考えるんですー!相手の戦力の情報は本当に正しいのかとか、300に見せかけて実はもっと多くの兵が隠れているんじゃないかとか。あ、こちらが知らない武器を持っているとか、こちらの陣営にスパイがいる可能性とか!!」
考えれば考えるほど、楽観的な父と兄が心配になってきた。
単純で思い込みも激しいが、私には優しくてかけがえのない家族なのだ。
死んで欲しくなどないし、元気に帰ってきてくれることを望んでいる。
「しばらく会わないうちに成長したな。まさかルーがそんなことを思案するとは。だが、安心するといい。情報は確かだし、今回の戦いに不安になる要素はない。ルーは笑って過ごしていろ」
なんでそんなことを言い切れるの?と疑問が浮かんだところで、ヒューゴが大きな手で私の頭をポンポンした。
え?ポンポン??
推しに頭ポンポンされてますこと??
疑問なんて綺麗に消え去り、頭に血が上って顔が赤くなるのがわかった。
夜で良かった。
もしかして鼻血出てるかもしれない……。
そんな沸騰した頭に、ふとあるスチルが浮かんだ。
『イケ恋』のヒューゴルートを進めていくと見られるスチル。
お城の夜会で疲れたヒロインが庭のベンチで休んでいると、ヒューゴが現れて隣に座り、マリアベルと会話を交わすのだ。
いつまでもダンスが上達しないと悩みを打ち明けるマリアベルに、ヒューゴが「君は頑張っているよ」と言って優しい瞳で頭を撫でるシーンが、マリアベル目線でスチルになっている。
そのスチルのヒューゴが目の前にいた。
まじか!!
まさかモブの私に、同じシチュエーションが起こるとは……。
待てよ?
私って、ヒューゴルートの途中並みの好感度はすでにゲットしてるってこと!?
ただのモブなのに。
ビバ!幼馴染み!!
推しが最初から優しいなんて、幸福の極み!!
ああ、尊い……。
私はセーブデータに残せない推しの姿を、目をかっぴらいて瞳に焼き付けたのだった。
210
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~
くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」
幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。
ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。
それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。
上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。
「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」
彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく……
『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。
皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」
そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。
前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。
父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。
使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。
え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……?
その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……?
あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ!
能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる