【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ

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兄は安定の兄でした

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やって来ました、決闘当日。

父と兄には何度も中止を求めてみたけれど、全く聞く耳を持ってはくれませんでしたよ、はい。
二人ともやる気を出しちゃって、更にマッチョに磨きがかかってしまいました……
だから私は細マッチョが好きなんだって!!


今日の試合開始は正午の予定で、ヒューゴはまず兄テオドールと戦い、勝てば父に挑める。
無事に二人に勝てれば私とヒューゴは結婚に向けて一直線!負ければ破談。ジ・エンド……

って、おかしくね?
相手、今をときめく公爵家の嫡男だよ?
なんの不足があるというのだ。
何より、娘の意思は尊重するものでしょーが。
グレて家出しても知らないよ?

ただいま時刻は午前10時。
開始まであと2時間もあるというのに、決闘場の周辺は凄い人だかりである。
学祭のような出店が連なり、楽しいイベント会場と化していた。

何が「タコ焼最後尾」だ。
ちょっと気になるじゃないの。
執事長のクレープ屋「片眼鏡」?
なんでトーマスはこんな時にクレープ焼いてるんだ!しかもクレープ屋に「片眼鏡」って名前付けるか?

使用人や騎士団員の浮かれ具合にこちらはドン引きである。
私の人生がかかっているというのに、この浮かれポンチどもめ……

「ルー、ここにいたのか。凄い活気だな」

振り返るとヒューゴが軽く手を挙げている。
まだ外出着のままで、ダークグレーのジャケット姿だ。

「ヒュー、もう着いてたんだね。なんかお祭り騒ぎになってて……。ノリが軽くてごめんね」

「いや、かえって気持ちが楽になった。どうせなら一緒に出店を見て回るか?」

「いいの?準備とかは?」

「まだ大丈夫だ。ルーと過ごした方がリラックス出来るしな」

という訳で、二人で出店を冷やかしている。
これって、前世の憧れだった学祭デートみたいじゃない?
女子校だった私には縁がなかったけどさ。

「噂のご両人じゃないっすか!あっしらはお二人を応援してるっす!!」

「ヒューゴ様!お嬢をよろしくお願いいたします!!あ、このベビーカステラ良かったらどうぞ」

歩いていると、激励を受けてしまった。
なんだろう、このテンションは……
ベビーカステラはありがたくもらっておくけども。

「ルーはガルシアの人間に愛されているな。コックスに引き入れるのは心が痛むが、コックス公爵夫人はルーにしかなれないから諦めてもらうしかないな」

「私しかなれないの?」

ベビーカステラを口に放りながら尋ねる。
ほどよい甘さが美味しいけれど、飲み物が欲しくなるな。

「当たり前だ。ルーと結婚できなければ、俺は独身を貫くつもりだからな」

「ええっ、それは周囲が認めないと思うよ?跡取りもいなくなっちゃうし」

「養子でも取るさ。まあ、今日勝つつもりだから問題ないが。……跡取りはルーが生んでくれるんだろう?」

突然耳元で囁かれ、私は思いっきり固まった。

この色気駄々もれセクハラ男め!!
でも好きー!!

ベビーカステラをこれでもかとヒューゴの口に押し込んでやった。
しゃがんでたからちょうど良かった。
慌てて飲み物を一つだけ買ってきたヒューゴが、私にもひとくち飲ませて「間接キスだな」なんて懲りずに言うから、唇を尖らせてポカポカ殴っていたら、「痴話喧嘩っすか?」とか言われ、気付いたら周囲に見物客が出来ていて、生暖かい目で見られている内に決闘の時間が迫っていた。
後から思うと、私が緊張していると心配したヒューゴが、和らげる為に企てたことだったらしい。


決闘開始の時刻、観覧席は立ち見客まで出る盛況ぶりで、私は呆れてしまった。
ヒューゴパパも駆け付け、私の隣で成り行きを見守っている。

まるでコロッセオの中心部に、ヒューゴとテオドールが現れた。
ヒューゴは軍服みたいな、襟が高く、金ボタンが眩しい戦闘服で、テオドールは騎士団の制服を着用している。
観客のボルテージも上がり、声援がうるさいほどだ。

ヒューゴが私を見つけ、少し微笑んだ。
しかしそれを目敏く見つけた兄がすぐに邪魔に入った。

「ヒューゴ、ルーはお前にはやらん!ルーはお兄ちゃんが大好きなんだからな!!」

はぁぁ!?
黙れ、脳筋。
恋愛と家族愛を一緒にするな!!

「お兄ちゃんは妹離れしてよ!!私はヒューが好きなの!!」

思わず立ち上がって席から叫べば、観客が沸いた。
そして兄は「ガーーン……」とか言いながら、傷付いた顔をしている。

審判がやって来て、注意事項を述べた。
武器は自由らしい。

そのまま二人はロングソードを手にすると、開始の合図が鳴り響いた。
カキンカキンと剣が交わり、私は固唾を飲んで見守っていたのだが……

「お前が可愛いルーを唆しやがったんだ!」

テオドールがみっともなく騒いでいる。
こいつは本当に攻略対象だったのだろうか。

「きっとルーはお兄ちゃんとは結婚出来ないから、俺の代わりにそばにいたお前を適当に……」

いやいや、違うから。
勘違いも甚だし過ぎる……

「テオドールは悪いやつではないんだが……ガルシアの今後が不安になるな」

ほら、宰相が未来を憂いちゃったじゃん!
うちの跡継ぎ、本当にあの兄でいいのか?

とか思っていたら、ヒューゴが剣を落とした。

あっ!!と思ったら、首筋にダガーを当てられているのはテオドールのほうだった。

「勝者、ヒューゴ!!」

審判が高らかに告げたが、兄が駄々を捏ね始めた。

「ずっりーぞ!!反則だ反則!!」

兄よ……
武器は自由だって、最初に言ってたよね?








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