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タクシー
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これは、私がまだ小学生の頃、生前、祖母から聞いた怪談話である。
ある日、タクシーの男性運転手がいつものように、車を走らせている時であった。
運転手が、崖のある海沿いの道を走っていると、一人の若い女性が手を挙げて立っていた。
当然、運転手は車を止め、その若い女性をタクシー中へと乗せた。
若い女性は一見、普通の人であり運転手にこう言った。
「すみません、私の家までお願いします」 「分かりました。では、家の方向を教えて下さい」
運転手はそう言い、車を走らせた。
先程も書いた通り、若い女性は一見、普通の女性であり、運転手に道を丁寧に教えていた。
そして、約十五分後に、ある一軒の家に辿り着いた。若い女性の家である。
家に着くと、若い女性は申し訳なさそうにこう言った。
「すみません、お金を家に、置いてきたままだったみたいで……。取りに行くので、少しの間待っててもらえませんか?」
それを聞いた運転手は「大丈夫ですよ。待ってますね」と言い、若い女性は車から降りて家の中に入って行った。
ところが十分、二十分と待っても、若い女性は戻って来なかった。
待ちくたびれた運転手は、若い女性の家を尋ねる事にした。玄関のドアを叩くと、家の中から初老の女性が出て来た。
運転手は「あの女性の母親だろう」と思い、初老の女性にこう言った。
「すみません。恐らく、お宅の娘さんだと思われるのですが、タクシーでここまで送って来ました。ですが、娘さんはお金を取りに行くと言ったきり戻って来なかったもので……」
しかし、それを聞いた初老の女性は、なんと突然、泣き崩れてしまった。
その光景を見て、驚いた運転手は、咄嗟に「どうされたのですか?」と聞くと、初老の女性は涙を流しながらこう言った。
「今日は、私の娘の命日なんです。一年前、崖の上から海に転落して、亡くなってしまったんです。きっと、帰って来たんでしょうね。……お金は、私が払います」
初老の女性は、泣きながら震える手で、運転手にお金を払った。
突然の事に、運転手は初老の女性が何を言っているのか、全く理解出来なかった。
只、呆然とタクシーへ戻ると、若い女性が座っていた後部座席が、びっしょりと濡れていたそうだ。
そう、運転手が女性を拾った場所は、女性が亡くなった場所であった。
そして、崖から海に落ちて亡くなっている為、座っていた場所がびっしょりと濡れていたのである。
私の祖母が言うには、その運転手はその後、頭がおかしくなり病院に入院したそうだが、間もなく亡くなったらしい。
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当然、運転手は車を止め、その若い女性をタクシー中へと乗せた。
若い女性は一見、普通の人であり運転手にこう言った。
「すみません、私の家までお願いします」 「分かりました。では、家の方向を教えて下さい」
運転手はそう言い、車を走らせた。
先程も書いた通り、若い女性は一見、普通の女性であり、運転手に道を丁寧に教えていた。
そして、約十五分後に、ある一軒の家に辿り着いた。若い女性の家である。
家に着くと、若い女性は申し訳なさそうにこう言った。
「すみません、お金を家に、置いてきたままだったみたいで……。取りに行くので、少しの間待っててもらえませんか?」
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ところが十分、二十分と待っても、若い女性は戻って来なかった。
待ちくたびれた運転手は、若い女性の家を尋ねる事にした。玄関のドアを叩くと、家の中から初老の女性が出て来た。
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しかし、それを聞いた初老の女性は、なんと突然、泣き崩れてしまった。
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只、呆然とタクシーへ戻ると、若い女性が座っていた後部座席が、びっしょりと濡れていたそうだ。
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