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足踏み
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これは、京子が体験した話である。
ある日の夜の事。
「ねぇ、ママ!」
「んー? なに?」
「今日ね、友達と鬼ごっこしたんだ」
「まなちゃんと遊んだの?」
「ううん! 新しい友達」
「あら、よかったわね。名前はなんて言うの?」
「……知らない」
「……ああ、そうなの。次遊んだ時は、名前を聞いておきなさい」
「うん! 分かった!」
京子には、今年で四歳になった「ゆい」という一人の娘が居た。
女一つで育てている為、日中は働いており、夕方になると、保育園に娘のゆいを迎えに行く日々を送っていた。
ゆいを迎えに行った時は、いつも一人になっている為、内心は「申し訳ない」と思っていた。
その日の夜、京子は突然目を覚ました。
「まだ夜中の二時か……」
「トコトコ……トコトコ……」
「……なに? 足音?」
何やら、窓の外から足音が聞こえる。
その音は、近づいてくる訳でもなければ、遠くに行っている訳でもない。
まるで、その場で足踏みをしているみたいであった。
只、窓の外の近くに居るのだけは分かる。
京子は、少し気になったが恐怖心の方が勝り、カーテンを開けるのを辞め、そのまま眠る事にした。
そして、次の日の夜の事である。
「ねぇ、ママ!」
「んー? なに?」
「今日も、あの子と遊んだの」
「あの子……ああ、昨日話した子ね」
「うん!」
「名前は聞いたの?」
「……名前分からいんだって」
「名前が分からない? その子が言っていたの?」
「うん!」
京子は心の中で不審に思った。
「おかしわね。保育園に居る子なのに……そんな事ありえるのかしら?」
気づいたら京子はゆいにこう言っていた。
「その子……保育園に居る子?」
「ううん、皆が帰った後に、一緒に遊んでくれるの?」
「え? 先生はその事知っているの?」
「うん! 知っているよ」
「先生も、その子の名前知らないの?」
「んー、分からない」
その日の夜、また京子は午前二時に目覚ました。
「最近、寝つきが悪いわね」
「トコトコ……トコトコ……」
「……あれ? まただ……」
昨日と同様、また誰かが窓の外で足踏みをしている音が聞こえた。
「これって……もしかして、不審者?」
そう思った京子は警察に電話した。
足音は、一向になり止む気配はない。
三十分が経過した頃、警察から電話がかかってきた。
「近くに、不審者らしき人物はおりません」
「トコトコ…トコトコ…」
「そんな……今も足音聞こえてますけど……」
「そう言われましても……。今、あなたが電話で言った住所の家のすぐ側に居ますが、私達以外、誰も居ませんよ? もしかして、私達の足音じゃないですか?」
「……あの、すみません。その場に止まって頂けますか?」
「え? あぁ……はい」
「トコトコ……トコトコ……」
足音は鳴り止まない。
京子は「フゥー」と大きく息を吐いて、カーテンをサッと開けた。
すると、目の前には警察官が二人立っていた。
そして、あの足音は消えていた。
「嘘……もしかして私、頭がおかしくなったの? あまり続くようなら病院に行かないと」
そして、次の日の今朝の事である。
ゆいが熱を出してしまった。
その日、京子は仕事を休みゆいを病院へ連れて行った。
検査結果はただの風邪であった。
先生が言うには「今日、安静にしていれば明日には治りますよ」との事であった。
それを聞いた京子は安心し、家に帰宅した。
すると当然、猛烈な睡魔が京子を襲った。
気付いたら、京子は死んだように深く眠ってしまった。
「ねぇ、ママ!」
「はっ!」
ゆいの声で目覚めた。
起きたら、既に夜になっていた。
「いけない! 寝てた。……ゆい、ごめんね」
「ううん!」
ゆいはすっかり元気になっていた。
「ねぇねぇ、ママ」
「どうしたの?」
「あの子が遊びに来てくれたの?」
「あの子って……え? お家に来たの?」
「うん」
「勝手に入れたら駄目じゃない」
「……ごめんなさい」
「……ねぇ、ゆい、その子はゆいと同じ年の子?」
「んー……少し大きいよ」
「男の子? それとも女の子?」
「女の子だよ」
「どんな顔してるの?」
「……先生に似てるって言われた」
「そう……今日は何して遊んだの?」
「かくれんぼだよ。……今、してるよ」
「今? まだお家の中に居るの?」
「うん! 何処かに居るよ」
ゆいがそう言ったと同時に、「トコトコ……トコトコ……」と足音が聞こえてきた。
その音は、明らかに部屋の中から聞こえている。
すると、ゆいが指を差してこう言った。
「あー! あそこだ!」
そこはタンスであった。
よく耳を澄ませるとタンスの中から「トコトコ……トコトコ……」と足音が聞こえる。
京子は、恐る恐るタンスの前に行った。
そして、再び「フゥー」と大きく息を吐いてタンスの扉を開いた。
次の瞬間、京子は膝から崩れ落ち、大粒の涙を流すのであった。
ある日の夜の事。
「ねぇ、ママ!」
「んー? なに?」
「今日ね、友達と鬼ごっこしたんだ」
「まなちゃんと遊んだの?」
「ううん! 新しい友達」
「あら、よかったわね。名前はなんて言うの?」
「……知らない」
「……ああ、そうなの。次遊んだ時は、名前を聞いておきなさい」
「うん! 分かった!」
京子には、今年で四歳になった「ゆい」という一人の娘が居た。
女一つで育てている為、日中は働いており、夕方になると、保育園に娘のゆいを迎えに行く日々を送っていた。
ゆいを迎えに行った時は、いつも一人になっている為、内心は「申し訳ない」と思っていた。
その日の夜、京子は突然目を覚ました。
「まだ夜中の二時か……」
「トコトコ……トコトコ……」
「……なに? 足音?」
何やら、窓の外から足音が聞こえる。
その音は、近づいてくる訳でもなければ、遠くに行っている訳でもない。
まるで、その場で足踏みをしているみたいであった。
只、窓の外の近くに居るのだけは分かる。
京子は、少し気になったが恐怖心の方が勝り、カーテンを開けるのを辞め、そのまま眠る事にした。
そして、次の日の夜の事である。
「ねぇ、ママ!」
「んー? なに?」
「今日も、あの子と遊んだの」
「あの子……ああ、昨日話した子ね」
「うん!」
「名前は聞いたの?」
「……名前分からいんだって」
「名前が分からない? その子が言っていたの?」
「うん!」
京子は心の中で不審に思った。
「おかしわね。保育園に居る子なのに……そんな事ありえるのかしら?」
気づいたら京子はゆいにこう言っていた。
「その子……保育園に居る子?」
「ううん、皆が帰った後に、一緒に遊んでくれるの?」
「え? 先生はその事知っているの?」
「うん! 知っているよ」
「先生も、その子の名前知らないの?」
「んー、分からない」
その日の夜、また京子は午前二時に目覚ました。
「最近、寝つきが悪いわね」
「トコトコ……トコトコ……」
「……あれ? まただ……」
昨日と同様、また誰かが窓の外で足踏みをしている音が聞こえた。
「これって……もしかして、不審者?」
そう思った京子は警察に電話した。
足音は、一向になり止む気配はない。
三十分が経過した頃、警察から電話がかかってきた。
「近くに、不審者らしき人物はおりません」
「トコトコ…トコトコ…」
「そんな……今も足音聞こえてますけど……」
「そう言われましても……。今、あなたが電話で言った住所の家のすぐ側に居ますが、私達以外、誰も居ませんよ? もしかして、私達の足音じゃないですか?」
「……あの、すみません。その場に止まって頂けますか?」
「え? あぁ……はい」
「トコトコ……トコトコ……」
足音は鳴り止まない。
京子は「フゥー」と大きく息を吐いて、カーテンをサッと開けた。
すると、目の前には警察官が二人立っていた。
そして、あの足音は消えていた。
「嘘……もしかして私、頭がおかしくなったの? あまり続くようなら病院に行かないと」
そして、次の日の今朝の事である。
ゆいが熱を出してしまった。
その日、京子は仕事を休みゆいを病院へ連れて行った。
検査結果はただの風邪であった。
先生が言うには「今日、安静にしていれば明日には治りますよ」との事であった。
それを聞いた京子は安心し、家に帰宅した。
すると当然、猛烈な睡魔が京子を襲った。
気付いたら、京子は死んだように深く眠ってしまった。
「ねぇ、ママ!」
「はっ!」
ゆいの声で目覚めた。
起きたら、既に夜になっていた。
「いけない! 寝てた。……ゆい、ごめんね」
「ううん!」
ゆいはすっかり元気になっていた。
「ねぇねぇ、ママ」
「どうしたの?」
「あの子が遊びに来てくれたの?」
「あの子って……え? お家に来たの?」
「うん」
「勝手に入れたら駄目じゃない」
「……ごめんなさい」
「……ねぇ、ゆい、その子はゆいと同じ年の子?」
「んー……少し大きいよ」
「男の子? それとも女の子?」
「女の子だよ」
「どんな顔してるの?」
「……先生に似てるって言われた」
「そう……今日は何して遊んだの?」
「かくれんぼだよ。……今、してるよ」
「今? まだお家の中に居るの?」
「うん! 何処かに居るよ」
ゆいがそう言ったと同時に、「トコトコ……トコトコ……」と足音が聞こえてきた。
その音は、明らかに部屋の中から聞こえている。
すると、ゆいが指を差してこう言った。
「あー! あそこだ!」
そこはタンスであった。
よく耳を澄ませるとタンスの中から「トコトコ……トコトコ……」と足音が聞こえる。
京子は、恐る恐るタンスの前に行った。
そして、再び「フゥー」と大きく息を吐いてタンスの扉を開いた。
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