笑いの授業

ひろみ透夏

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【高城の章】

6 ヒントってなんの?(2)

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 第一校舎二階の教室を出たふたりは、道すがら何度も教室の窓から神楽坂かぐらざか先生の姿を確認しながら、音楽準備室に戻った。

佐倉さくら、俺だよ。開けて」

 高城たかぎが音楽準備室のドアの前でそっと呼びかける。しかし返事はなかった。
 試しにドアノブに手をかけてみると、ドアはするりと開いた。

「いないな。川に洗濯にでも出かけたか?」

(こんなときに、くだらないボケを言うなんて)

 塚田つかだの声を背中で聞きながら、高城たかぎはツッコミもせずに音楽準備室を見回した。

(まさか先生に見つかったなんてことは……)

 すると、月明かりが差し込む小窓の下で、金管楽器のマウスピースがきらりと光った。
 見るとその下に五線譜ノートの切れ端が置かれ、書き置きがされていた。
 高城たかぎがしゃがみ込んで、書き置きを読み上げる。

「先生が教室から離れたので、携帯電話を取りに行ってきます……って、佐倉さくらのばか! あんなことさせたぐらい怖がっていたくせに、ひとりで行くなんて!」

「あんなこと?」
 塚田つかだもしゃがみ込んで、聞き返す。

「ああ、いや……。それよりとおる、ケータイ持ってない?」

「ケータイ……。そうか、その手があったか」

 塚田つかだが制服のポケットをまさぐり、ちっと舌打ちをする。

「やっぱり、教室か?」 高城たかぎが聞いた。

「ああ、あのときだ」

 神楽坂かぐらざか先生は九時まで帰宅時間を延長したとき、みんなの携帯電話を集めて教卓の上にまとめて置いていた。保護者から連絡が入ったときにすぐ出られるようにとか、よくわからない理由をつけていたが、文化祭の準備に夢中になっている生徒は、誰ひとり疑問を持たずに提出したのだ。

「はじめから計画のうちだったんだな。ケータイで外と連絡をとられないように」

 そう言って、塚田つかだは腕を組んだ。

「うちのクラスだけ文化祭の準備を長引かせたのもそうだろ? ブレーカーを落としたり、防火シャッターで閉じ込めたり、とにかく用意周到だよ」

 高城たかぎも肩をすくめて、ため息をつく。

「だが、やはり携帯電話だな。この状況を打破できる鍵は……」

 塚田つかだの言葉に、高城たかぎがはっとしてこたえた。

「それでか! 土屋さつちや葛西かさいも、先生の隙をついて教室にあるケータイを取りに行ったんだ。土屋さつちやは、返り討ちにされちゃったけど……」

「じゃあ、佐倉さくらも危ないな」


 その言葉を聞いたとたん、高城たかぎは血相を変えて立ち上がった。

「行ってくる!」


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