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【おまけ】
12年後のふたり
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二〇二五年 十一月 十二日ーー
東京ミルネ・ザ・きちもと
M-1準々決勝(ボケツッコミ変更)
高城・塚田:はいど~も~、カグラ坂で~す。
塚田:一見強面のわたしが塚田徹で……
高城:爽やか好青年のぼくが高城亮介で~す。
匂いだけでも覚えて帰ってください。
塚田:できればコンビ名の方を覚えてくださいね~。
匂いなんてお願いしなくても、嫌でも印象に残りますから。
高城:最近どうですかあなた?(ぶんぶん腕を振り回して)
他人を傷つけてますか?
塚田:いきなり何ですか、ひとを見た目で判断して。
わたし怖そうに見えますけど反社じゃないですから、やたらに他人を傷つけたりしませんよ。
高城:でもね、直接暴力をふるわなくても、他人を傷つけることってあるんですよ。
デブとかブスとかキモいとか、無駄にデカイ、顔が怖い、ネタ飛ばす……。
塚田:ああ、言葉の暴力ね。……後半、わたしのこと言ってます?
高城:いまは思ったことをうっかり口にしただけでアウトですから。
塚田:うっかりも何も、思いっきりストレートな悪口でしたけどね。
ひとを見て目で判断する、あなたが一番気をつけてくださいよ。
いまはコンプライアンスが厳しいですから、すぐに視聴者からクレームが飛んできますよ。
高城:大丈夫。ぼくは口が裂けてもそんなことは言いません。
『お笑い虎の穴』で特別な訓練を受けて育ちましたから。
塚田:さっきフツーに言ってましたけどね、デブとかブスとかキモいとか。
……ちなみに『お笑い虎の穴』の訓練ってどんな?
高城:うっかり他人を傷つけようものなら、カナヅチ持って追いかけ回されるんです。
塚田:こわっ! えげつない暴力! ひとのすることじゃない、鬼! 悪魔!!
そんな極悪非道なことをする人間が、この世にいるんですか?
高城:確実にいます。ただね、ネガティブな思いも心に留めておけば罰は受けないんです。
塚田:確かに。思っちゃうことは仕方ないですから。
高城:そのネガティブな思いを誰かと共有して他人を笑うと、ノコギリで首を斬られるんです。
塚田:グロいな! いちいちグロいんだよ『お笑い虎の穴』の罰!
そっちの方がコンプラに引っかかるじゃねえか!
だけど堅苦しい世の中だなぁ。お笑いやめようかな……。
高城:安心して塚田さん。要はひとを蔑む笑いをしなけりゃいいんですよ。
蔑みのないイジりなら、他人を傷つける可能性はグンと減ります。
塚田:ああ確かに、でもそんなすぐにできますか?
さっきもあなた、デブ、ブス、キモいとか言ってましたけど。
高城:や、やめろ~~~っ!!(辺りを見回す)
どこでアイツが見てるか、わからなんだぞ~~っ!!
塚田:こわっ! トラウマになってるじゃねえか!
いまも何処かで見張ってるかのよ『お笑い虎の穴』のやつ。
心が休まらねえな!
高城:さっきからきみ、お笑いに対してマイナスなことばっかり言ってますけど……。
塚田:おまえだよ、ずっとおまえが言ってるの!
高城:いいこともたくさんあるんですよ、笑いの基本は「緊張と緩和」ですから。
塚田:ああ確かに。一触即発のピリついた状態でオナラして、思わずみんなで笑っちゃったり。
高城:クラスに馴染めなかった子が、起死回生の一発ギャグで人気者になったり。
塚田:他にも、大人しいと思ってた子がじつは天然キャラで、みんなからマスコットのように……。
高城:や、やめろ~~~っ!!(頭を抱える)
塚田:今度は何だよ!
高城:天然に手を出すな! 気軽に天然をイジると夜の校舎に監禁されるぞ!
塚田:なんて過酷な訓練受けてきたんだよ、それフツーに犯罪だぞ。
高城:それだけ難しいんですよ、お笑いは。
誰かを笑うのではなく、誰もが笑えるように心がけるのがプロなんです。
塚田:ワザと滑稽なことをして笑って欲しい人もいると思いますけどね。
高城:そこの見極めが肝心なんです。
それが出来ないひとは、三階建ての校舎の屋上から突き落とされます。
塚田:死んじゃうよ! スパルタ過ぎてフツーに死んじゃう!
お前よく生きて卒業できたな!
どこの誰だよ、その『お笑い虎の穴』を作ったサイコ野郎は!
高城:いまは、ぼくのお嫁さんです。
塚田:実話じゃねえか、もういいよ。
【完】
東京ミルネ・ザ・きちもと
M-1準々決勝(ボケツッコミ変更)
高城・塚田:はいど~も~、カグラ坂で~す。
塚田:一見強面のわたしが塚田徹で……
高城:爽やか好青年のぼくが高城亮介で~す。
匂いだけでも覚えて帰ってください。
塚田:できればコンビ名の方を覚えてくださいね~。
匂いなんてお願いしなくても、嫌でも印象に残りますから。
高城:最近どうですかあなた?(ぶんぶん腕を振り回して)
他人を傷つけてますか?
塚田:いきなり何ですか、ひとを見た目で判断して。
わたし怖そうに見えますけど反社じゃないですから、やたらに他人を傷つけたりしませんよ。
高城:でもね、直接暴力をふるわなくても、他人を傷つけることってあるんですよ。
デブとかブスとかキモいとか、無駄にデカイ、顔が怖い、ネタ飛ばす……。
塚田:ああ、言葉の暴力ね。……後半、わたしのこと言ってます?
高城:いまは思ったことをうっかり口にしただけでアウトですから。
塚田:うっかりも何も、思いっきりストレートな悪口でしたけどね。
ひとを見て目で判断する、あなたが一番気をつけてくださいよ。
いまはコンプライアンスが厳しいですから、すぐに視聴者からクレームが飛んできますよ。
高城:大丈夫。ぼくは口が裂けてもそんなことは言いません。
『お笑い虎の穴』で特別な訓練を受けて育ちましたから。
塚田:さっきフツーに言ってましたけどね、デブとかブスとかキモいとか。
……ちなみに『お笑い虎の穴』の訓練ってどんな?
高城:うっかり他人を傷つけようものなら、カナヅチ持って追いかけ回されるんです。
塚田:こわっ! えげつない暴力! ひとのすることじゃない、鬼! 悪魔!!
そんな極悪非道なことをする人間が、この世にいるんですか?
高城:確実にいます。ただね、ネガティブな思いも心に留めておけば罰は受けないんです。
塚田:確かに。思っちゃうことは仕方ないですから。
高城:そのネガティブな思いを誰かと共有して他人を笑うと、ノコギリで首を斬られるんです。
塚田:グロいな! いちいちグロいんだよ『お笑い虎の穴』の罰!
そっちの方がコンプラに引っかかるじゃねえか!
だけど堅苦しい世の中だなぁ。お笑いやめようかな……。
高城:安心して塚田さん。要はひとを蔑む笑いをしなけりゃいいんですよ。
蔑みのないイジりなら、他人を傷つける可能性はグンと減ります。
塚田:ああ確かに、でもそんなすぐにできますか?
さっきもあなた、デブ、ブス、キモいとか言ってましたけど。
高城:や、やめろ~~~っ!!(辺りを見回す)
どこでアイツが見てるか、わからなんだぞ~~っ!!
塚田:こわっ! トラウマになってるじゃねえか!
いまも何処かで見張ってるかのよ『お笑い虎の穴』のやつ。
心が休まらねえな!
高城:さっきからきみ、お笑いに対してマイナスなことばっかり言ってますけど……。
塚田:おまえだよ、ずっとおまえが言ってるの!
高城:いいこともたくさんあるんですよ、笑いの基本は「緊張と緩和」ですから。
塚田:ああ確かに。一触即発のピリついた状態でオナラして、思わずみんなで笑っちゃったり。
高城:クラスに馴染めなかった子が、起死回生の一発ギャグで人気者になったり。
塚田:他にも、大人しいと思ってた子がじつは天然キャラで、みんなからマスコットのように……。
高城:や、やめろ~~~っ!!(頭を抱える)
塚田:今度は何だよ!
高城:天然に手を出すな! 気軽に天然をイジると夜の校舎に監禁されるぞ!
塚田:なんて過酷な訓練受けてきたんだよ、それフツーに犯罪だぞ。
高城:それだけ難しいんですよ、お笑いは。
誰かを笑うのではなく、誰もが笑えるように心がけるのがプロなんです。
塚田:ワザと滑稽なことをして笑って欲しい人もいると思いますけどね。
高城:そこの見極めが肝心なんです。
それが出来ないひとは、三階建ての校舎の屋上から突き落とされます。
塚田:死んじゃうよ! スパルタ過ぎてフツーに死んじゃう!
お前よく生きて卒業できたな!
どこの誰だよ、その『お笑い虎の穴』を作ったサイコ野郎は!
高城:いまは、ぼくのお嫁さんです。
塚田:実話じゃねえか、もういいよ。
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「いじり」「いじめ」という問題に正面から向き合った作品でした。
物語の展開が巧みで、悪意のない「いじり」が「いじめ」になっていく様子がスムーズで、物語がすすむにつれ心がゾワゾワしました。
陰湿な悪意からくる「いじめ」じゃなくても、その場の笑いほしさに人を傷つけてしまっているということは、日常的に多々あることですよね。罪悪感もなく。
そして自分が傷つく立場になって、初めてそのことに気付けるのですね。
高城君も神楽坂先生も、どちらも好きだったので、最後の結末にほっとしたし、神楽坂先生の覚悟にとても感動しました。
kinokonomoriさま、感想ありがとうございます!
とても励みになります!!!
笑いって実は残酷だな……と感じたことを機に以前書いた作品です。
現在でもその違和感は変わらず、昨今ようやくコンプラ等の価値観の変化により顕在化してきたと思います。
今後は他人を笑うという行為自体がハラスメントになるかもしれません。。。
しかし、はたして皆がそれを望んでいるのかというと私も含めて疑問です。
なのでこの作品も主張の押し付けではなく、疑問として問題を投げかけています。
面白かったです。
いじりといじめの境界線は外部からの判断が難しく、作中で述べられてあるとおり当事者がどのように受け取っているかの部分の問題でもあるので、発覚と解決が難しいし、大の大人でも平気でやってしまうという点もあると思います。
本作はそういった視点を取り入れながら物語られていたため、大変興味深く読ませていただきましたし、自身を顧みて考えさせられる部分も多々ありました。
後半シーンはまさにホラー小説ジャンルの面目躍如でありながら、先生に感情移入して読んでいたため「やめて! そんな先生見たくない!」っていう高城君とシンクロしたような気持になっていましたが……。
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ありがとうございました。