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第二章 潜入捜査官の憂鬱な休日 ☆甘くて重いヒーロー付き☆
9.映画館の暗闇と、重なる手
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パンケーキ店を、命からがら……
主に精神的な意味で……
脱出した俺たちは、近くのシネコンへと逃げ込んだ。
ここなら人も多いし、暗いし、さすがに何も起きない。
そう信じたかった。
「……はぁ。まさかあんなところで部下に会うとは」
座席に深く沈み込みながら、俺は額の汗を拭った。
心労で一気に五歳くらい老けたんじゃない……。
「でも、おかげで二人の時間は守られましたよ」
隣を見ると、光希は巨大なポップコーンを抱えてご機嫌だ。
さっきまでの緊張感はどこへ行ったのか……
遠足前の小学生みたいな笑顔をしている。
選んだ映画は、よりにもよって王道ラブコメ。
場内が暗くなり、スクリーンに鮮やかな映像が映し出される。
甘いポップコーンの香りと、恋人たちの囁き声に包まれた。
落ち着け。ここは映画館だ。ただ映画を見るだけだ。
ヒーローも組織も関係ない……
そう自分に言い聞かせた、その瞬間。
肘掛けを越えて、熱い「何か」が右手に触れた。
……っ
光希の手だ。
大きな、しかし節くれ立った男らしい手が、
俺の指を絡めるように包み込む。
「……光希。何してる」
小声で抗議するが、光希はスクリーンから目を離さない。
「静かにしてください。映画、始まってますよ」
「そういう問題じゃないだろ」
「大丈夫です。暗いですし、誰も見てません」
論点そこなの!?
そのまま、きゅっと指が絡められる。
あったかい。無駄にあったかい。
「……映画に集中できないんだが」
「僕はできますよ、あなたの反応に……」
そう言って、光希がゆっくりこちらを見る。
スクリーンの光に照らされた瞳が、やけに澄んでいる。
やめてぇ……
「瀬戸さん、怖いシーンじゃないのに、どうして震えてるんですか?」
耳元に顔を寄せられ、吐息がかかる。
俺の心臓は、映画より派手な音を立てていた。
こいつ……全部わかってやってる……!
指を絡める力が、また少しだけ強くなる。
暗闇という逃げ場のない空間が、俺たちの立場を曖昧にしていく。
悪の幹部と正義のヒーロー。
追う者と追われる者。
そんな境界線は、重なった手の温度で、あっさり溶け始めていた。
結局、映画の内容は一切覚えていない。
覚えているのは、暗闇の中で俺だけを見ていた光希の視線と、
ポップコーンより甘くて、どう考えても逃げ場のない空気だけだった。
映画館、選択ミスだった……
主に精神的な意味で……
脱出した俺たちは、近くのシネコンへと逃げ込んだ。
ここなら人も多いし、暗いし、さすがに何も起きない。
そう信じたかった。
「……はぁ。まさかあんなところで部下に会うとは」
座席に深く沈み込みながら、俺は額の汗を拭った。
心労で一気に五歳くらい老けたんじゃない……。
「でも、おかげで二人の時間は守られましたよ」
隣を見ると、光希は巨大なポップコーンを抱えてご機嫌だ。
さっきまでの緊張感はどこへ行ったのか……
遠足前の小学生みたいな笑顔をしている。
選んだ映画は、よりにもよって王道ラブコメ。
場内が暗くなり、スクリーンに鮮やかな映像が映し出される。
甘いポップコーンの香りと、恋人たちの囁き声に包まれた。
落ち着け。ここは映画館だ。ただ映画を見るだけだ。
ヒーローも組織も関係ない……
そう自分に言い聞かせた、その瞬間。
肘掛けを越えて、熱い「何か」が右手に触れた。
……っ
光希の手だ。
大きな、しかし節くれ立った男らしい手が、
俺の指を絡めるように包み込む。
「……光希。何してる」
小声で抗議するが、光希はスクリーンから目を離さない。
「静かにしてください。映画、始まってますよ」
「そういう問題じゃないだろ」
「大丈夫です。暗いですし、誰も見てません」
論点そこなの!?
そのまま、きゅっと指が絡められる。
あったかい。無駄にあったかい。
「……映画に集中できないんだが」
「僕はできますよ、あなたの反応に……」
そう言って、光希がゆっくりこちらを見る。
スクリーンの光に照らされた瞳が、やけに澄んでいる。
やめてぇ……
「瀬戸さん、怖いシーンじゃないのに、どうして震えてるんですか?」
耳元に顔を寄せられ、吐息がかかる。
俺の心臓は、映画より派手な音を立てていた。
こいつ……全部わかってやってる……!
指を絡める力が、また少しだけ強くなる。
暗闇という逃げ場のない空間が、俺たちの立場を曖昧にしていく。
悪の幹部と正義のヒーロー。
追う者と追われる者。
そんな境界線は、重なった手の温度で、あっさり溶け始めていた。
結局、映画の内容は一切覚えていない。
覚えているのは、暗闇の中で俺だけを見ていた光希の視線と、
ポップコーンより甘くて、どう考えても逃げ場のない空気だけだった。
映画館、選択ミスだった……
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