『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。

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第4章 第三の勢力、襲来

20.銀の要塞、崩壊。そして……

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 崩壊は、想像していたよりずっと早かった。

「今だ、ルミエール」

 俺の叫びに呼応するように、背後の空気が震えた。
 ためらいなく最大出力に切り替えたのが分かる。

 俺は囮だ。
『シルバー・レギオン』の中枢を引きつけ、
 その隙にヒーローがすべてを終わらせる。

「了解です。……シャドウさん、絶対に離れないで」
 妙に落ち着いた声だった。
 まるで、この結末を最初から知っていたみたいに。

 次の瞬間、世界が白に染まる。

 轟音。
 衝撃。
 要塞全体が「もう無理です!」とでも言うみたいに悲鳴を上げ、
 床も壁もまとめて崩れ落ちる。

 成功だ。
 そう思った、次の瞬間。

「うわっ……!」
 爆風に煽られ、身体が宙を舞う。
 顔面に鈍い衝撃が走り、視界がぐるりと回転した。

 ……ん?
 やけに、視界がクリアだ。

「あ」
 仮面が、割れていた。
 砕け散った破片が、きらきらと宙を舞う。
 俺の素顔を守っていたはずの“シャドウ”が、音もなく崩れていく。

「……瀬戸さん」

 間近で、声がした。
 首を動かすと、そこに光希が膝をついていた。
 俺の顔を覗き込み、その手には――割れた仮面の破片。

 壊れ物を扱うみたいに。
 いや、それ以上に、愛おしそうに。

「……全部、見えちゃいましたね」

 責めるでも、驚くでもない。
 ただ、嬉しそうに言うのが、ひどく怖かった。

「……見るな」
 やっと出た声は、情けないほど弱かった。

「シャドウさん。いや、瀬戸さん……」
 次の瞬間、俺は思いきり抱き寄せられた。
 強く、逃げ道がないほどに。
「ちょっ……!」
「やっと……本当のあなたを、独占できる」

 ――ぞくり。

 それは勝利の言葉じゃない。
 ヒーローが口にしていい台詞でもない。

「おい……離せ……」

 絞り出すと、光希は少しだけ困ったように笑った。
 その腕の力は、さらに強まる。

 瓦礫の向こうで、銀の要塞が完全に崩れ落ちていく。
 第三勢力は消え、世界はひとまず救われた。

 ……なのに。
 瓦礫と爆煙の中で、俺は悟った。
 俺を囲う、もっと頑丈な檻が、
 今この瞬間、静かに完成したことを……

 そして……
 俺の意識は闇へと沈んでいった。
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