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第5章 密室の看病
21.静寂の牢獄と、疼く傷跡
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目を覚ました瞬間、最初に思った。
……静かすぎる。
耳鳴りもない。
爆音の残響もない。
あるのは、ひんやりした空気と……どこか甘い匂い。
「……ここは……っ、痛てぇ……!」
意識がはっきりした途端、右脇腹に鋭い痛みが走った。
思わず息が詰まる。
崩落の時、瓦礫の破片が深く刺さったらしい。
痛みには慣れてる。慣れてるはずだった。
……が、このズキズキした熱。
嫌な予感しかしない。
「気が付きましたか?」
暗闇から聞こえた声は、少し焦っていて――
なぜか、やけに弾んでいた。
顔を向けると、そこにいたのはルミエール……光希。
スーツは所々破れているが、本人は妙に元気だ。
元気というか……
機嫌、良くないか?
俺が体を起こそうとした瞬間。
「っ……!」
脇腹に電撃みたいな痛みが走る。
「あ、ダメです」
即座に、肩を押さえられた。
「ルミエール……状況は……?」
「出口は完全に塞がっています。外部との通信も遮断。
救助が来るとしても……数時間はかかりますね」
そう言いながら、俺の脇腹の傷を覗き込み、
美しい眉をきゅっと寄せた。
「ひどい傷だ。僕がもっと早く、あなたを抱きしめていれば……」
いや、お前が抱きしめようとして、
俺の動きが鈍ったから当たったんだが……
そんなツッコミを入れる余裕も、今の俺にはなかった。
失血のせいか、視界がチカチカする。
「……少し、寝かせてくれ。体力を……温存……」
「ダメですよ、寝ちゃ!!さあ、瀬戸さん。治療しましょう。
僕、ヒーローの応急処置ライセンス、特級(ゴールド)を持ってるんです」
「…………」
今それ、ドヤ顔?
「安心してください。ちゃんと看病します」
にこっと笑う。……どう見ても、“逃がす気ゼロ”の笑顔だ。
「おい……俺を放って、外に救援を」
「却下です」
「……俺は命令してるんだが」
「今は患者さんなので、聞けません」
堂々たる職権乱用。
そして、手際よく応急キットを取り出し、
迷いなく俺の服に手をかけた。
「ちょ、待て……!」
「大丈夫です。見慣れてますから」
「どこでだ」
「夢の中とか……うふっ」
さらっと怖いことを言うな。
「ほら。傷口を露出させないと、消毒も縫合もできません。
……恥ずかしがらないでください。ここは二人きりなんですから」
暗闇の中で、光希の瞳がらんらんと輝く。
それは傷を案じる正義のヒーローの目というより……
獲物を前にした、捕食者のそれだった。
逃げ場のない密室。
負傷して動けない俺。
こいつには、ここは地獄の底なんかじゃない。
むしろ、理想の箱庭だ……
俺の背中を、冷たい汗が静かに伝った。
……静かすぎる。
耳鳴りもない。
爆音の残響もない。
あるのは、ひんやりした空気と……どこか甘い匂い。
「……ここは……っ、痛てぇ……!」
意識がはっきりした途端、右脇腹に鋭い痛みが走った。
思わず息が詰まる。
崩落の時、瓦礫の破片が深く刺さったらしい。
痛みには慣れてる。慣れてるはずだった。
……が、このズキズキした熱。
嫌な予感しかしない。
「気が付きましたか?」
暗闇から聞こえた声は、少し焦っていて――
なぜか、やけに弾んでいた。
顔を向けると、そこにいたのはルミエール……光希。
スーツは所々破れているが、本人は妙に元気だ。
元気というか……
機嫌、良くないか?
俺が体を起こそうとした瞬間。
「っ……!」
脇腹に電撃みたいな痛みが走る。
「あ、ダメです」
即座に、肩を押さえられた。
「ルミエール……状況は……?」
「出口は完全に塞がっています。外部との通信も遮断。
救助が来るとしても……数時間はかかりますね」
そう言いながら、俺の脇腹の傷を覗き込み、
美しい眉をきゅっと寄せた。
「ひどい傷だ。僕がもっと早く、あなたを抱きしめていれば……」
いや、お前が抱きしめようとして、
俺の動きが鈍ったから当たったんだが……
そんなツッコミを入れる余裕も、今の俺にはなかった。
失血のせいか、視界がチカチカする。
「……少し、寝かせてくれ。体力を……温存……」
「ダメですよ、寝ちゃ!!さあ、瀬戸さん。治療しましょう。
僕、ヒーローの応急処置ライセンス、特級(ゴールド)を持ってるんです」
「…………」
今それ、ドヤ顔?
「安心してください。ちゃんと看病します」
にこっと笑う。……どう見ても、“逃がす気ゼロ”の笑顔だ。
「おい……俺を放って、外に救援を」
「却下です」
「……俺は命令してるんだが」
「今は患者さんなので、聞けません」
堂々たる職権乱用。
そして、手際よく応急キットを取り出し、
迷いなく俺の服に手をかけた。
「ちょ、待て……!」
「大丈夫です。見慣れてますから」
「どこでだ」
「夢の中とか……うふっ」
さらっと怖いことを言うな。
「ほら。傷口を露出させないと、消毒も縫合もできません。
……恥ずかしがらないでください。ここは二人きりなんですから」
暗闇の中で、光希の瞳がらんらんと輝く。
それは傷を案じる正義のヒーローの目というより……
獲物を前にした、捕食者のそれだった。
逃げ場のない密室。
負傷して動けない俺。
こいつには、ここは地獄の底なんかじゃない。
むしろ、理想の箱庭だ……
俺の背中を、冷たい汗が静かに伝った。
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