ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery

文字の大きさ
4 / 18

邪魔なものは美羽の人生から排除する【隼人side】

しおりを挟む



“隼人みたいな人が彼氏だったらいいのに”

美羽はそう言った。

みたいな人か。
そんな人間存在するわけない。

俺のように、美羽のことが大好きで、俺のように美羽に執着していて、俺ほど美羽を大事に思っている。

そんな人間“みたい”な人がいるわけないんだ。
これほど美羽を愛していて、手に入れたいと思っている人間は、

みたいなんかじゃなく、紛れもなく俺だ──。


この日。
家に帰ると、いるはずのない美羽が自宅にいた。

俺は驚いた顔をして「どうして美羽が家にいるの?」なんて白々しく聞いたけど理由は知ってる。

『健司さんと今日、食事に行く約束してたのに……来なかった』

知ってるさ。
だって来させないようにさせたのは俺だ。

健司さんと言われる人の電話番号を調べ上げて、俺が今朝電話してやった。

『もしもし、どちら様ですか?』
『葉山美羽の彼氏の森山隼人と申します』
『えっ、えっ!』

相手はかなり動揺していた。

『今日美羽と食事に行く予定ですよね?』
『なんで、それを……』

『単刀直入にお伝えします。彼女は俺のなんで来ないでください』
『ちょっ、ちょっと待ってよ。美羽ちゃんは付き合ってる相手いないって』

『あ、すみません。美羽ちゃんって呼ぶのもやめてください。それから連絡先、消してください。じゃないとどうなるか分かりますよね?』

『お前何言ってんだよ。美羽ちゃんはこの間も楽しそうに……』

『分かっていただけないなら、あなたの隠していること会社にお伝えしましょうか?ほら……あの件。バレたらかなりマズいですよね?全部知ってるんですよ』

俺がそこまで言うと、男は黙った。

『あなたの今のキャリア潰したくないでしょう?営業でいい成績出してるみたいですし……』

ごくりと息をのむ音が聞こえて完全に沈黙になる。
これはハッタリなんかじゃない。

人間バレて欲しくない秘密のひとつやふたつはあるもの。
俺はその情報を人のツテを使って調べることが出来るのだ。

『あっ、それから……もう二度と美羽の前に現れないでくださいね』 

低い声でそう脅すと、電話を一方的に切った。

ここまですれば、ほとんどの人間は待ち合わせ場所にやって来ない。
でも例外もいるから、俺は仕事を終えると足早に約束の場所に見張りにいっていた。

待ち合わせのレストランの前に美羽は立って待っていた。

大人っぽいコートを羽織って、首には赤いマフラーで寒そうに身体を小さく揺らしている。

ああ、かわいいな。
どうしてこんなにも可愛いんだろう。


今日はあの男のために、いつもより大人っぽい恰好をしてきたんだ。
普段しないネックレスまで付けている。

このまま帰らせるなんてもったいないな。

いっそのことこのまま連れ去って、どこかへ連れていってしまいたいくらいだ。

寒いのか、鼻の頭が赤くなってしまっていた。

かわいそうに。
その男は来ないのに。

来ると信じて必死に待ってる。
かわいそうでかわいい美羽。

すぐに俺が駆け付けて抱きしめてあげたい。

それから1時間半、様子を伺っていたが、男が来ることはなかった。

当然だ。
守りたいものは誰にだってある。

あの男は探偵の調査によると、過去に強姦まがいのことをして、金でもみ消しているらしい。
俺はこうやって、美羽に近づく男たちをことごとく近寄らせないようにしてきた。

全ては彼女を俺のものにするために。

美羽、こんな汚い男のために待つ必要はないよ。
俺がもっといいレストランを予約し、もっといい暮らしや思いをさせてあげるから。


それから数分して、美羽はしぶしぶレストランを後にした。

何度も受付の人とかけあっていて可哀想だった。
本当は今すぐに迎えにいってあげたいくらいだ。

その気持ちをぐっと抑えて、俺は美羽が立ち去ったのを確認するとすぐに美羽の大好きなレストランに立ち寄った。

美羽が大好きなロコンドという名前のお店。
いつも大きな口を開けて、幸せそうに食べる美羽が見られる。

かわいそうなことしちゃったから、今日はめいいっぱい美羽を甘やかしてあげたい。

美羽の好きなえびがたっぷりのったキッシュとブロッコリーの卵サラダ。
それから彼女が喜びそうなものをいくつか選んでテイクアウトをした。

家に帰ると、案の定彼女は落ち込んでいた。

でも俺は知らないフリをしないといけない。

『そうだったんだ。外寒かっただろう?』
『うん……』

寒そうな顔をして待っていたのを知ってるよ。

今日はお風呂を入れてあげよう。
美羽の身体が冷え切らないように。

そして美羽の前にロコンドのお惣菜を並べた。

ちゃんと二人がお腹いっぱい食べられるように計算して買ってあるものだ。

『ふらっと寄ったら新しい商品がたくさん出ててつい買っちゃったんだ。これ一人じゃ食べきれないから、一緒に食べよう』

でもそれは秘密。
目の前に並ぶお惣菜に美羽はぱあっと顔を明るくさせた。

『私、ロコンドのご飯大好きなの』
『美羽には、これ。えびのキッシュだろ?』

『ありがとう……っ、本当隼人は分かってくれるよね。本当は今日落ち込んでたんだけど、一気に元気になっちゃった!』

分かってる、なんて当然だ。
美羽のことならなんでも把握してる。

ひとつたりとも見逃すことはない。
そろそろ美羽だって、気づけばいい。

俺と一緒にいることが一番幸せなんだと──。

キッシュを食べながら、美羽は今日あったことを俺に話した。

『健司さん、今日の朝までは楽しみにしてるって言ってたのに。けっきょく連絡もつながらなかった……私、何か気に障ることしちゃったのかなぁ』

『そんないい加減な人のことを考えても仕方ないよ。美羽にはもっといい人がいると思うよ』

『そうかなぁ……でも私、モテないし……』
『そんなことないよ』

実際に美羽はモテる。
くっきりとした二重に、小さな顔。清潔感もあり、素直でよく笑う。

モテないわけがない。

俺が幼い頃から何度も美羽に近づく男を追い払ってからというものの、気づけば男が自分から離れていくので、モテないと勘違いしているらしい。

そんな鈍感なところも美羽らしいよ。
美羽はまだ俺の愛の深さに気づいていない。

気づいたら、どう思われるだろう。

引かれるだろうか?
逃げていくだろうか?

……でも、関係ない。
だって逃がしはしないから。

今までずっと彼女が俺の手中に落ちるようにレールを引いてきたんだ。

どこを歩いたってたどり着くのは俺の前。
後はもう待つだけだ。


30歳の美羽の誕生日。
俺らはきっと結ばれているだろう。

幸せで笑顔の絶えない家庭を作る覚悟は出来ている。
それに指輪の準備も。

俺は自分の部屋に戻ると引き出しをあけた。

美羽に似合うと思って買った3カラットのダイヤモンドの指輪。

キラキラ光っていて、でも繊細で……美羽にピッタリの指輪を見つけてから、俺はすぐに購入した。

はやく、この指輪を渡したい。
美羽に付けてもらいたい。

夕飯を食べ終え満足した俺たちは、一緒にテレビを見てからお風呂に入ることにした。

美羽を先にお風呂に入れて、後から俺が入る。
そして、俺がドライヤーを持ってソファーに行くといつものルーティーンが始まった。

『ああ~気持ちい……』

俺は美羽の髪をさらりと撫でながら髪を乾かしてあげていた。

一度、美羽が保育園のイベントが立て続けにあって疲れ切っていた時に、俺がドライヤーで乾かしてあげていたら、すごく気持ちよさそうにしていたから、時間が合う日は毎日俺が美羽の髪を乾かしてあげている。

「なんか……もう戻れなそう」


美羽はドライヤーの風にあたりながらそんなことを言う。

いいよ、それで。
戻れなくなればいい。

戻れなくなって、俺がいないと人生生きていけないんだって思えばいいのに。

「本当、上手くいかなかったら隼人のせいだからね」

這い上がれなくなるように、心地のいい空間を作って……すべてを先回りして美羽に手を貸す。

自分では何もできなくなるくらいになって、ずっと俺の側にいればいいんだ。
俺なら全部してあげられる。

「その時は責任取るよ」
「あっ、言ったな~!」

言ったよ。
もう何回だって言ってる。

美羽のことよく知るには前から美羽を知ってる人がいいって。
美羽のこと分かってあげられるのは俺だけだって。

俺しかいないってことに早く気づいてほしい。

「はやく俺の元に堕ちないかな」

ボソっとつぶやくと、美羽は言う。

「なんか言った?」
「ううん、何も」

俺はそう言ってカチっとドライヤーの電源を切った。
そっと美羽の長い髪に口づけをする。

ああ、はやく俺のものになって──。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない

降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。 しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。 粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。 危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。 すれ違う2人の想いは?

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

イケメン恋人が超絶シスコンだった件

ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!

女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた(連載編)

宮野 楓
恋愛
「女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた」短編の長編化バージョンです。 騎士になる侯爵令嬢リサ、と次期侯爵として文官になるエリックの想いが通じ合うまでの物語。 お互い言葉が足りず、すれ違い、好きって言えないまま、時だけが流れてしまう。

処理中です...