ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

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唯一の理解者【隼人side】

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「美羽ちゃんが出ていった?」

薄暗い店内に、優雅なジャズが流れるこの行きつけのBARに男……マスターの声が響いた。

「ああ」
「どうしてそんなことになったんだよ」

バーテンダーをしているこの男、加瀬翔太は俺が唯一信頼する友人だ。

社会人になってから、一人飲んでる時に知り合った男。
普段はそんな付き合いの浅い男に心を開かないのだが、この男は初対面で俺の本性を見破ってきた。

『お兄さん、爽やかでイケメンだけどめちゃくちゃどす黒い本性隠してるね~俺には見えるよ』

『そんな、またご冗談を』

酔った軽快な口調で言ってきて、何かのハッタリだろうと思ったが、翔太はぴたりとあててきた。

『しかも女関連と見た』

その後、ふたりで話すことになり翔太は俺にあることを告げてきた。

『俺ね、ゲイなんだ』

ひどく整った顔立ちの男。
女性が放っておかない甘いマスクの男が、まさかゲイだったとは。

これが本当の女泣かせってやつだ。

『ずっと恋焦がれるくらい好きな男がいてね』

翔太は切なげに自分の話をしだした。


相手は高校時代に仲の良かった親友。
親友の恋愛対象は当然女であったらしい。

まっすぐに思いを伝えたところで、気味悪がられるだけだ。
そこで翔太が思いついたのは、親友の好きになる女をことごとく寝取ること。

「あいつがいい感じになる女は、全員俺のものにしたね」

なんて野郎だ。
なんて言う資格は俺にはないんだろう。

「それで?どうなった?」

「バレて案の定嫌われたよ。真剣に愛してた女がいたらしい。もう二度と顔を見せないでくれって突き放されてさ」

普通ならここで、距離をとるんだろう。
しかし、彼は俺と同じ人種。

きっと、言われた通りにはしなかっただろう。

「だからなぐさめにいったんだ。キミは魅力的だよ、女が悪いんだ。って矛先を変えさせたんだ。最初は冷たくされたけど、それを何度も何度も繰り返すうちに、俺の言ってる言葉が正しいんじゃないかって思うようになってね」

「それで?」

「今は一緒に暮らしてる」

翔太は勝ち誇ったように笑った。

けっきょく、信頼を勝ち取ったのは翔太の方だったというわけか。

すごい男だ。
持っている武器は全て使い、図々しくても、嫌われても好きな相手の思っていることを変えさせる。

本当……歪んでる。

「人間みんな綺麗ごとばっかりでムカつくんだよ。どうしてみんなが正しいと思うものが正しいんだ?俺はね、恋っていうのは、自分の手を汚しても、自分が堕ちていっても尚、求め続ける異常な感情だと思うんだ」

こんなことを言うようなやつに初めて出会った。

みんなはこのどす黒い感情を綺麗なものだと信じて疑わないのに、俺と同じように思っている人もいるんだな。

「愛がキレイだとかよく言ったもんだ。こんなものドロドロで血なまぐさい、反吐のような感情だと思うね」

「……いいな、それ」

ものすごく府に落ちた。
愛がキレイな感情だなんて誰が言い出したんだろう。

本当にキレイなものなのか?

キレイな愛は本当に愛だと言うのか?
そんな薄い感情を俺は持ったことがない。

それから俺はすぐに翔太に心を開いた。

美羽が仕事で家にいない時は、ほとんどの時間をここのBARで過ごした。

腹を割って話をすることが出来るのは、昔も今もコイツだけだ。

そこから翔太のことは信頼してる。

美羽のことも知らないし、美羽に会ったことはないが、このBARで話をするのは決まって美羽のことだ。

「それで、なんで出て行ったんだ?」

「俺が今までしてたことがバレたんだ。まわりの人間が伝えたらしい」

「大丈夫なのかよ」
「大丈夫だよ」

俺は遠くを見つめながらそう答えた。

俺の本性を知った美羽は、震えていた。
顔も恐怖に染まっていてあんな表情みたことがなかった。
それほどまでに恐ろしかったんだろう。

可哀想だと思った。
傷つけたくなかった。

知らないままでいてほしかったけど、バレてしまった。

でも大丈夫だ。

「きっと。美羽は戻ってくるさ」

そのためにずっとタネをまいていたのだから。
タネをまいて、そのタネが花を咲かせる。

一度、地に落ちても確実に元に戻れる布石を時間をかけて打ってきた。

彼女は絶対に戻ってくる。
俺がいない寂しさを実感しながら。

ぽっかりと心に穴が開いたことを実感しながら。

「ヒーローだね、隼人くんは」
「茶化すなよ」

「本当に欲しいものは何してでも手に入れてこそのヒーロー……だっけ?」

「ああ、そうだよ」

じゃないと“本気”だなんて言えないだろう?

俺は翔太がいれてくれた、バーボンを飲み干すとお金をその場に置き「また来るよ」と言って、その場を後にした。

美羽がいない家は本当につまらなくて、退屈だ。


それから。
美羽が家を空けてから1週間が経った。

美羽がいなくなってからの日課は、美羽が今何をしているのか見ることだ。

彼女がどこにいるか、今何をしているのかはしっかりと把握している。

どうやってって?

そんなの簡単だ。
俺は美羽が出て行くと伝えた日、美羽のお気に入りのぬいぐるみに盗聴器を忍ばせた。

ソファーに置いてあるそのぬいぐるみで全てが分かるようになっている。

現在地はスマホのGPS機能。
美羽は気づいていないみたいだけど、完璧だ。

だって俺がいない間に美羽が危険な目に遭ったらどうする?
ヒーローっていうのは、危険を察知してすぐに駆け付けるだろう?

それが出来るように、美羽の身に危険が起きないように、彼女の様子を監視しておくんだ。

もちろん、男なんか家に入れたらそいつ、殺すけどね?

彼女はこの家から電車で15分のところにあるウィークリーマンションを借りて暮らしているらしい。

『はぁ……やっぱり一人ってつまらないな』

お風呂上りの美羽がテレビをみながらそんなことをつぶやく。

当然だ。
いつもは俺と一緒にいたんだから。
ほら、また髪だって濡れたままじゃないか。

俺がいたら乾かしてあげるのに。
美羽がめんどうだと思うことは全てしてあげる。

美味しい料理も作ってあげるし、掃除だって俺がやる。
高級ディナーに行きたいならいくらでも連れて行ってあげるから、はやくここに戻っておいで。

俺が美羽のことをドロドロに甘やかしてあげるから。

しばらくそんな生活を続けながら美羽からの連絡を待っていたけれど、美羽は一向に連絡してこなかった。

寂しくなって少しくらい連絡してくるものだと思っていたけど……。
まだ美羽の気持ちを動かすには足りないか。

美羽はひとりになり、俺のことを真剣に考えてくれているようだった。

『隼人、何してるんだろう』

俺が歪んでとった行動の数々や、好意を向けられていたこと。
純粋なまっすぐな心で頭を悩ませながら考えていた。

ああ、なんて優しいんだろう。
気持ち悪いと見捨てれば簡単なのに。

美羽は絶対そんなことをしない。
いや……出来ないんだろう。

かわいい、かわいい美羽。

大丈夫。
悩んで悩んで結論が出ないのなら、俺がその結論まで導いてあげる。


離れてから1カ月ほど経った頃。
俺はある作戦を決行することにした。

俺は職場でいいよってくるしつこいCAの女に連絡をした。

「はぁい?隼人。連絡してくれるなんて嬉しい」
「ちょっと会いたいんだけどいいかな?」

「もちろんよ!今日、ちょうど休みで退屈してたの」

彼女は連絡を受けると、20分もたたずに待ち合わせのレストランにやってきた。

家から少し離れた駅前のレストラン。
ここは美羽の勤務地の最寄り駅だ。

ブランドのロゴが入ったバックに、海外セレブが着そうな派手な服。
そして強い香水の香り。

本当、見ているだけでイライラするよ。

「嬉しいわ、呼んでくれるなんて」

彼女の名前は本田沙織。
CAをしていて、仕事仲間だ。

会社で連絡先を教えろって断ってもしつこいから、何かにつかえるかと思って教えた。

「隼人、私に全然興味ないのかと思ったから、驚いたわ。でもやっぱり隼人も男なのね」

嬉しそうに微笑む女。

うるせぇな。
ペラペラ、ペラペラと。

でも計画のためだから仕方ない。
彼女をレストランの中に入れると、座るなり小さな声で言った。

「ねぇ、なんでこんなところなの?隼人の家連れて行ってよ♡」
「家はダメだよ」

美羽と住んでいた家だ。
そんな場所に、こんなやつを入れるわけがない。

「どうしてよ。そのために呼んでくれたんじゃないの?隼人だって寂しいんでしょ?」

俺の首筋を指先でつーっとなぞる。

吐き気がした。
あと30分くらいで美羽は仕事を終えるだろう。

そこまで引っ張って彼女を使う。
俺にとって美羽以外の女は全員道具だ。

「私、隼人だったら何されてもいいよ?」

気持ち悪い女の言葉は受け流す。

「一旦ご飯食べよう。好きなの食べていいよ」
「もう、焦らすのうまいんだから」

こうして女は自分の食べたいものを食べた。
美羽が仕事を終えるまで後8分。

やっぱり美羽以外のやつと一緒にいるのは苦痛で仕方ない。

でも我慢だ。
美羽に気づいていないフリをしないといけない。

沙織は俺の手に巻き付いて、俺に耳に顔を寄せながら言う。

「ねぇ、もう焦らさないで。我慢出来ない♡」

美羽が俺たちに気づいた。

見てる。
俺はバレないように沙織の方へ視線を向けた。

確実に見ている。
そう思って、俺は沙織の耳元に口を持っていってささやいた。

「もう黙ってろよ」

お前の声なんて聞きたくないんだ。
俺は、俺は……美羽だけで埋め尽くしたい。

すると、沙織は顔を赤らめた。

「やだ、隼人ったらSなの?わたしSの男好き」

そこまですると、美羽は俺たちを見て、逃げるように別の道へ去っていった。

いつもはこの信号を渡って駅まで向かうはずだったけど、美羽が戻ってくることはなかった。

別の道から帰ったのか。

ああ、まだかな。
そんな風に思っている時、GPSから通知が来た。

どうやら美羽が会社から出たらしい。
よし、今家を出れば……。

レストランを出ればちょうど美羽の視界にうつる場所に行けるだろう。

「それじゃあもうそろそろ行こうか」

俺が言うと、女は下品な笑みを浮かべた。

どうやら家に連れていってくれるんだと思っているらしい。

本当に美羽以外の女は汚い。
美羽だけがキレイだ。

会計を済ませると、案の定沙織が俺の腕にまきついた。

香水が鼻につき、不快な気持ちになったが、我慢する。

すべては計画のため。

「こっちだよ」

俺が案内するままに、ご機嫌についてくる。

コンビニの手前、信号のところで俺は止まった。

「明日は仕事は休みなの?」
「休みじゃないけど……休んじゃうかも」

わざと会話をして立ち止まっていると、美羽がやってきた。

ドンピシャだ。

ああ、かわいいな。
久しぶりに生で見る美羽だ。

仕事でボロボロになっても、化粧が崩れていても、めちゃくちゃに可愛い。

本当はいますぐ美羽のことを抱きしめて連れて帰りたい。

でも我慢だ。
美羽に気づいていないフリをしないといけない。

沙織は俺の手に巻き付いて、俺に耳に顔を寄せながら言う。

「ねぇ、もう焦らさないで。我慢出来ない♡」

美羽が俺たちに気づいた。

見てる。
俺はバレないように沙織の方へ視線を向けた。

確実に見ている。
そう思って、俺は沙織の耳元に口を持っていってささやいた。

「もう黙ってろよ」

お前の声なんて聞きたくないんだ。
俺は、俺は……美羽だけで埋め尽くしたい。

すると、沙織は顔を赤らめた。

「やだ、隼人ったらSなの?わたしSの男好き」

そこまですると、美羽は俺たちを見て、逃げるように別の道へ去っていった。

いつもはこの信号を渡って駅まで向かうはずだったけど、美羽が戻ってくることはなかった。

別の道から帰ったのか。

俺を避けて。
ふふっ、これでいい。

作戦は終了だ。

「じゃあ隼人行きましょう」

沙織がそう言った時、我に返った。
ああ、そういえば、この女がいたんだった。

「邪魔、触んなよ」

俺が吐き捨てるように言うと、沙織は驚いたように目を丸める。

「隼人……?」
「どっか行ってくんない?」

「急にどうしたの?やだな、そういうプレイ?」
「強い香水振りまいて、汚ねぇんだよ」

「ちょっ、本当に怒ってる?はや、と……わたし何かした?遊んでくれるんじゃないの?」

「誰かお前みたいな下品な女と遊ぶんだよ。うぬぼれるのもいい加減にしろ」

俺に触れていいのは、美羽だけだ。

「ごめんって、何かしたなら私謝るから……」

戸惑う女を捨てて、俺はその場を立ち去った。
この女には悪いけど、道具に優しくする意味はない。

美羽が俺に気づいたのであれば、もうお前は用済みだ。

それから沙織から大量に着信やらメールが入っていたが、すべてを無視してブロックすることにした。

もともといつか使えると思って、連絡先を教えただけだ。

使い終わったら、お前には用はない。

それよりも……美羽が俺が女と歩いていたこと、どう思っただろう。

家に帰って美羽の反応を確認するのが楽しみだ。

ずっと頭の中で考えればいい。

俺と女が歩いている姿が頭から離れなくて、俺の大事さに気づけばいいんだ。

大事さに気づいたらいつだって包み込んであげる。

美羽を受け入れる準備は出来てる。

俺は自宅に帰ると、引き出しにしまっておいた婚姻届けを眺めた。

あの時は拒否されてしまったけど、今度こそ絶対にサインをしてもらうんだ。

いや、今度は美羽の方から書きたいって言ってもらえるといいな。

早く戻ってこないかな。

例え美羽が離れていっても、俺の計画は狂ったりしない。






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