3 / 241
3話 七歳児の畑仕事
しおりを挟む
私が七歳児に戻ってから、早くも半年が経過した。
まだ七歳なので社交デビューはしていないし、学校にも通っていない。
この『恋の学園ファンタジー ~ドキドキ・ラブリー・ラブ~』……通称『ドララ』の世界において、貴族は十三歳から学校に通う。
十八歳で卒業だ。
私の記憶にある日本で言うところの、中学校と高等学校があるようなイメージね。
ちなみに小学校に相当する教育機関は、貴族にはない。
各自家庭教師をつけて勉強するのが一般的だ。
そんな感じで、今の私は自由時間が多い。
侯爵家令嬢として社交マナーやダンス、それに一般教養を学ぶ時間は設けられているが、それほど過密スケジュールというわけではないからだ。
空いた時間は、魔法の練習をしている。
おかげで、初級魔法の習熟度はかなり上がった。
そして、他にも手を出していることがある。
「ふぅ……こんなものかしらね」
私は今、屋敷から少し離れた林の中で土魔法を使って畑を作っている。
作物を栽培するためだ。
なぜ急にそんなことを始めたかというと、理由は二つある。
まず一つ目は、もしもの事態に備えてポーション類を自分で作れるようになっておきたかったから。
今回の時間軸では、まだエドワード殿下やアリシアさんとは会っていない。
私の死亡フラグは立っていないと言っていいだろう。
でも、ゲームのバッドエンドに限らず、不慮の事故というのはいつ起こるかわからないものだ。
備えあれば憂いなしと言うではないか。
二つ目の理由が、魔法のレベル上げのためだ。
ゲームにおけるイザベラは、闇魔法の使い手だった。
それを利用してアリシアにちょっかいを掛けていたのだ。
私が見た予知夢では本当に何もしていなかったので、ゲームでの設定とは齟齬が生じている。
ま、それは今は置いておこう。
とにかく、魔法を極めておけば、いざという時に役に立つかもしれない。
だが、人が一日に発動できる魔法の規模や回数というものは限られている。
体内の魔力を消費するからだ。
基本的には時間経過による回復を待つしかないのだが、特定の作物を調合した特殊なポーションを服用すれば、魔力の回復を早めることができる。
というわけで、私は現在、毎日せっせと畑仕事に精を出しているわけだ。
「これでよしっと。あとは……」
私は、魔法で作成した鍬を手に取ると、畑に向かって振り下ろした。
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
「おおー、順調順調! よぉ~し、どんどん作るわよっ!」
魔力を身体に通すことで、身体能力が増す。
七歳児の私でも、この通り農作業を楽々行うことができる。
調子に乗って、私は次々に作物を植えていく。
「ふう……。このくらいでいいかな?」
一通り植え終えた私は額の汗を拭うと、大きく息を吐いた。
「さすがにちょっと疲れたかも……」
だが、こんなときのポーションだ。
ポーションには、原料とするもの次第で様々な効能が生じる。
怪我を回復するもの、魔力を回復するもの、疲労を取り除くもの、魔法抵抗力を増すものなど……。
グイッ!
私は疲労を取り除くタイプのポーションを一気に飲み干す。
すると、たちまち全身に力が湧き上がってきた。
「キタキター! ファイト、いっぱーーつ!!!」
体力を回復した私は、休む間もなく次の作業に取り掛かる。
「次は……水やりね!」
私は両手を前に突き出すと、そこから大量の水を放出させた。
バシャアアァン!!
轟音と共に、大量の水が地面に降り注ぐ。
その光景を見て、私は満足げに微笑んだ。
「うんうん、なかなかのものじゃない。これなら薬草を育てるのに十分そうね」
魔法で作った水なので、普通の井戸から汲んできた水よりも格段に品質が良いはずだ。
私は畑の水撒きを終えると、今度は肥料の作成にかかる。
「えぇと……確か、こういうものは植物から抽出したものと、鉱物を混ぜ合わせるんだったわよね?」
私は、以前読んだことのある『ドララ』の知識を思い出す。
普通なら家畜の糞や生ゴミを使うところだが、この世界は乙女ゲームだ。
開発者はそのあたりにも配慮していたらしい。
ゲームとしてプレイしている時はどうでもいい拘りだと思ったけど、実際に取り組むとなると有り難いと思う。
うら若き侯爵家令嬢がゴミまみれになっていたら、風聞が悪いからね。
まあ、農作業をしていること自体あまり広めるべきことではないけれど。
「ふんぬぅ!!」
私は渾身の力を込めると、土魔法を発動させる。
ボコッ!
ボコボコボコッ……。
地面の下から鉱石の塊が現れた。
「よしっ! 成功よっ!」
ゲーム知識様さまである。
「後は、これを粉末にして……」
それからしばらく、私は黙々と魔法を利用して農地の開発に勤しんだ。
魔法の鍛錬にもなるし、ポーション作成のための作物は育てられるし、いいこと尽くめだ。
今回の人生はバッドエンドなんかにはしないぞっ!
「…………? あれは……姉上……?」
その時の私は、少し離れたところからこちらを覗く者の気配に全く気づかなかったのだった。
まだ七歳なので社交デビューはしていないし、学校にも通っていない。
この『恋の学園ファンタジー ~ドキドキ・ラブリー・ラブ~』……通称『ドララ』の世界において、貴族は十三歳から学校に通う。
十八歳で卒業だ。
私の記憶にある日本で言うところの、中学校と高等学校があるようなイメージね。
ちなみに小学校に相当する教育機関は、貴族にはない。
各自家庭教師をつけて勉強するのが一般的だ。
そんな感じで、今の私は自由時間が多い。
侯爵家令嬢として社交マナーやダンス、それに一般教養を学ぶ時間は設けられているが、それほど過密スケジュールというわけではないからだ。
空いた時間は、魔法の練習をしている。
おかげで、初級魔法の習熟度はかなり上がった。
そして、他にも手を出していることがある。
「ふぅ……こんなものかしらね」
私は今、屋敷から少し離れた林の中で土魔法を使って畑を作っている。
作物を栽培するためだ。
なぜ急にそんなことを始めたかというと、理由は二つある。
まず一つ目は、もしもの事態に備えてポーション類を自分で作れるようになっておきたかったから。
今回の時間軸では、まだエドワード殿下やアリシアさんとは会っていない。
私の死亡フラグは立っていないと言っていいだろう。
でも、ゲームのバッドエンドに限らず、不慮の事故というのはいつ起こるかわからないものだ。
備えあれば憂いなしと言うではないか。
二つ目の理由が、魔法のレベル上げのためだ。
ゲームにおけるイザベラは、闇魔法の使い手だった。
それを利用してアリシアにちょっかいを掛けていたのだ。
私が見た予知夢では本当に何もしていなかったので、ゲームでの設定とは齟齬が生じている。
ま、それは今は置いておこう。
とにかく、魔法を極めておけば、いざという時に役に立つかもしれない。
だが、人が一日に発動できる魔法の規模や回数というものは限られている。
体内の魔力を消費するからだ。
基本的には時間経過による回復を待つしかないのだが、特定の作物を調合した特殊なポーションを服用すれば、魔力の回復を早めることができる。
というわけで、私は現在、毎日せっせと畑仕事に精を出しているわけだ。
「これでよしっと。あとは……」
私は、魔法で作成した鍬を手に取ると、畑に向かって振り下ろした。
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
「おおー、順調順調! よぉ~し、どんどん作るわよっ!」
魔力を身体に通すことで、身体能力が増す。
七歳児の私でも、この通り農作業を楽々行うことができる。
調子に乗って、私は次々に作物を植えていく。
「ふう……。このくらいでいいかな?」
一通り植え終えた私は額の汗を拭うと、大きく息を吐いた。
「さすがにちょっと疲れたかも……」
だが、こんなときのポーションだ。
ポーションには、原料とするもの次第で様々な効能が生じる。
怪我を回復するもの、魔力を回復するもの、疲労を取り除くもの、魔法抵抗力を増すものなど……。
グイッ!
私は疲労を取り除くタイプのポーションを一気に飲み干す。
すると、たちまち全身に力が湧き上がってきた。
「キタキター! ファイト、いっぱーーつ!!!」
体力を回復した私は、休む間もなく次の作業に取り掛かる。
「次は……水やりね!」
私は両手を前に突き出すと、そこから大量の水を放出させた。
バシャアアァン!!
轟音と共に、大量の水が地面に降り注ぐ。
その光景を見て、私は満足げに微笑んだ。
「うんうん、なかなかのものじゃない。これなら薬草を育てるのに十分そうね」
魔法で作った水なので、普通の井戸から汲んできた水よりも格段に品質が良いはずだ。
私は畑の水撒きを終えると、今度は肥料の作成にかかる。
「えぇと……確か、こういうものは植物から抽出したものと、鉱物を混ぜ合わせるんだったわよね?」
私は、以前読んだことのある『ドララ』の知識を思い出す。
普通なら家畜の糞や生ゴミを使うところだが、この世界は乙女ゲームだ。
開発者はそのあたりにも配慮していたらしい。
ゲームとしてプレイしている時はどうでもいい拘りだと思ったけど、実際に取り組むとなると有り難いと思う。
うら若き侯爵家令嬢がゴミまみれになっていたら、風聞が悪いからね。
まあ、農作業をしていること自体あまり広めるべきことではないけれど。
「ふんぬぅ!!」
私は渾身の力を込めると、土魔法を発動させる。
ボコッ!
ボコボコボコッ……。
地面の下から鉱石の塊が現れた。
「よしっ! 成功よっ!」
ゲーム知識様さまである。
「後は、これを粉末にして……」
それからしばらく、私は黙々と魔法を利用して農地の開発に勤しんだ。
魔法の鍛錬にもなるし、ポーション作成のための作物は育てられるし、いいこと尽くめだ。
今回の人生はバッドエンドなんかにはしないぞっ!
「…………? あれは……姉上……?」
その時の私は、少し離れたところからこちらを覗く者の気配に全く気づかなかったのだった。
77
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる