48 / 241

48話 ダンス

しおりを挟む
「お待たせー」

 私はお花摘みを終えて、大通りへと戻る。

「遅かったじゃないか。心配したぞ」

「その通りですね。カイン殿もいつの間にかいなくなっておりますし、何かあったのかと不安になりました」

 エドワード殿下とオスカーがそう言って私達を出迎える。

「ふふっ。実は途中で変なお兄さん達に捕まってしまって、大変だったのです」

「本当か!? だ、大丈夫なのか!?」

 エドワード殿下が血相を変えて詰め寄ってくる。

「はい、平気ですわ。カインに助けてもらいましたので」

 私がそう言うと、エドワード殿下は悔しげに歯噛みをする。

「俺だって、俺だって鍛えているのに……。なぜ俺は、その場にいなかったのだ!」

「仕方ありませんよ、エドワード殿。付いていきたいのは山々でしたが、レディのお花摘みにゾロゾロと付き添うわけにはいきませんからね」

 オスカーが爽やかな笑みを浮かべて言った。

「それもそうだが……。収まりがつかない! せめて、その不埒者を斬り捨てたかった!!」

「エドワード殿下ったら、大袈裟ですよ」

 私は苦笑いする。

「それで、その後はどうなったのだ?」

「カインが倒してくれましたわ。今は向こうで説教しているはずです」

「なるほどな。俺のイザベラを狙った罰だ。俺からも一言注意しておかねばならん!」

 エドワード殿下はそう言って、私が来た方向に走っていった。
 残されたのは、私とオスカー。
 思わず二人で顔を見合わせる。

「エドワード殿下は相変わらずですねぇ。落ち着きがないというか」

「いえいえ、普段のエドワード殿はとても落ち着いていらっしゃいますよ」

「そうでしょうか? 私にはとてもそのようには見えませんが……」

 私は首を傾げる。

「ふふっ。では、そういうことにしておきましょうか」

 オスカーは微笑むと、私に手を差し伸べてきた。

「さぁ、二人がいない間は私がエスコートしましょう。せっかくの秋祭りですからね。楽しまないと損ですよ」

「ええ。そうですね」

 私は差し出された手を握り返すと、一緒に歩き出した。
 屋台をいくつか見て回る。
 そして……。

「あれ? この広場で何か催し物があるのでしょうか?」

 私は、大きなステージの前に人が集まっていることに気づいた。

「ああ、ここはダンス会場になっているんですよ。毎年恒例で、今年もあるようです」

「へぇ、そうなんですね」

 ステージ上にはドレス姿の女性達が並んでおり、男性陣が次々と名乗りを上げていた。

「皆さん、とても綺麗ですわね」

「そうでしょう? 特に真ん中にいる方は、王都でも有名な女優さんですからね」

「まあ、そうなんですね。私、あまり詳しくなくて……」

「いえいえ、お気になさらず。それよりも……」

 オスカーは突然私の手を取り、引き寄せた。

「きゃあっ!?」

「私と踊っていただけませんか? イザベラ殿」

 オスカーは顔を近づけてくる。
 私は頬を染めた。

「ちょ、ちょっと待ってください! 私、こういう場で踊るのは初めてで……! ステップとかよくわからないですし……」

 貴族主催の夜会ならまだしも、こういう祭りの類では踊ったことがない。

「大丈夫ですよ。リードしますので、それに身を任せてください。まずは一曲、お願いいたします」

「そ、そんなこと急に言われましても……」

「それとも、誰か意中の相手でもいるのですか? エドワード殿、もしくはカイン殿でしょうか?」

「いや、別にそういうわけではないのですけど……」

「ならば問題ないではありませんか。私も、あなたとのダンスを楽しみたいのです。どうか、お願いできませんか?」

 オスカーは懇願するように見つめてきた。
 ……ずるいわ。
 そんな風に言われたら断れないじゃない。

「わかりました。よろしくお願いします」

「ありがとうございます。それじゃあ、早速行きますよ」

 オスカーは私を引き寄せると、踊り始めた。
 最初はぎこちなかったが、徐々に慣れてきて、楽しくなってきた。

(それにしても、オスカーは本当に顔が整っているなあ)

 眼鏡を掛けているせいもあってか、知的な雰囲気を感じさせる。
 だが決して冷たい印象はなく、むしろ優しい雰囲気だ。

「どうしましたか?」

「いえ、何でもありませんわ」

 私は慌てて首を振る。
 いけない、ぼーっとしていた。

「ふふっ。もしかして、緊張していますか? 豪胆なイザベラ殿にしては珍しい」

「もうっ、からかわないでください!」

 私は頬を膨らませる。
 すると、オスカーはクスッと笑みを漏らした。

「すみません、つい。イザベラ殿が可愛らしいものですから」

「か、可愛いだなんて……」

 私は恥ずかしくなって俯く。
 そんな会話をしつつも、私達はダンスを楽しんでいく。
 ふと、周囲がざわついているのが聞こえた。

「(見て……。あの二人、すごく息ぴったり)」

「(美男美女のカップルね……。素敵……)」

 どうやら、注目を集めているようだ。

「なんだか注目されていますね」

「ええ、そのようですね。目立ってしまったのかもしれません」

「うぅ、それは困りましたわね……」

 私は苦笑いを浮かべる。

「よろしいではありませんか。私は、イザベラ殿とこうして踊れて嬉しいです」

「オスカー様……」

「だから、もう少しこのままでいさせてください」

「……はい、喜んで」

 それから私とオスカーは、しばらくの間ダンスを楽しんだのだった。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

処理中です...